アルファードにハリアーとほぼすべてのトヨタ車に標準装備化しているディスプレイーディオ。そして国内外問わずさまざまなメーカーでも同様の取り組みが進められているが、これは本当に使い勝手がいいのだろうか!? じつはCDやDVDといった物理ディスクに対応しないなどといったネガポイントも。そこで今回はディスプレイオーディオの良し悪しを考えてみたい。
筆者:会田 肇/写真:ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】標準装備化が進むディスプレイオーディオの〇と×! 本当にこれは便利なのか!?(6枚)画像ギャラリーキモはスマホ! 普段と同じインターフェイスが自慢
最近、新型車にも相次いで採用され始めているのが「ディスプレイオーディオ」だ。これはその名の通り、ディスプレイを備えたカーオーディオのことで、本体にはTVチューナーもなければ、カーナビ機能もなく、CD/DVDプレーヤーも搭載されていない。備わっているのはFM/AMチューナーとそれを再生するためのアンプぐらいだ。
そんなディスプレイオーディオをどうやって楽しめばいいのか。ポイントとなるのがスマートフォン(以下スマホ)との接続だ。iPhoneならApple CarPlayで、Android端末ならAndroid Autoによって、スマホ内のコンテンツがディスプレイオーディオで楽しめるようになる。それは音楽だけでなく、カーナビ機能も利用できるようになり、これによってディスプレイオーディオは従来のカーAV一体型ナビと同等の機能が楽しめるようになるわけだ。
このスマホとの組み合わせではその便利さをより実感できる。すべてではないが、対応アプリをディスプレイオーディオの大きな画面に表示でき、その上で操作もここで行えるからだ。そのため、スマホのミュージックアプリを快適に使いこなせるようになる。ディスプレイオーディオではBluetooth接続でも再生は可能だが、アプリの主要操作がほぼすべて展開できる意味でもApple CarPlayやAndroid Autoでの組み合わせがより使いやすい。
低予算でナビを使えるのが醍醐味! ナビアプリを大画面で使えるのだ
また、スマホのナビアプリも便利に使える。昨今は「ナビはスマホアプリで充分」と考えるドライバーが増えているが、スマホでこれを使えば画面が小さいことで地図が見にくかったり、操作もしにくいといった弱点もある。しかし、ディスプレイオーディオでこれを使えば大きな画面で使い勝手もずっと高まり、この弱点が緩和されることにもなる。
しかも、ディスプレイオーディオは従来の車載ナビに比べればはるかに低予算で装備できるわけで、その意味でもユーザーにとってメリットは大きいと言えるだろう。
【弱点1】ビル街やトンネル内では車載ナビに軍配! 車速パルス対応を切望
とはいえ、ユーザーの中には車載ナビの方が使いやすいというドライバーもいる。スマホで使うナビアプリは測位をGPSで行うことを基本としており、その意味で車載ナビに比べると自車位置精度で大きく劣るからだ。特に都会のビル街を走行したり、地下駐車場から出たりすると自車位置が不安定となってしまうことが多々ある。せめて車速パルスが反映されればいいのだが、まだその域には達していないのが現状だ。
【弱点2】ほとんどのモデルでCD再生が不可能! 別途オプション選択が必要な場合も
また、音楽再生にCDを愛用している人にとってもディスプレイオーディオは不便だ。もちろん、スマホを持っている人にとってはCDをいちいち車内に持ち込む必要がない便利さがあるわけだが、逆にスマホを持たない人も一定数はいる。そこで、市販製品では大半があきらめるしかないが、一部の純正ディスプレイオーディオではCDプレーヤーをオプションで追加できるようにもして対策している。ただ、その追加をすればすべて価格アップにはつながるのは言うまでもない。
普及のワケはコスト!? ストリーミング再生流行とカメラ機能義務化も後押し
そこまでするなら、従来のAV一体型ナビのままにしておけば良かったのではないか?そう考える人がいても不思議ではない。しかし、そこには自動車メーカーなりの戦略がある。
ご存知のように自動車は全世界を対象とするグローバルな製品だ。カーAVシステムにしても国ごとの事情に合わせて別々に用意すれば、それはコストアップとなって価格に反映されることになる。しかも、CD/DVDドライブを装備すれば、メカニカルなトラブルは避けられず、それもまたサービス面でのコストがかさむことにつながる。それ故、グローバルでメカレスの共通仕様としたい考えるのは各社とも事情は同じと言える。
そうした中、世の中ではストリーミングサービスが人気となり、音楽や音楽などが定額で楽しむのが当たり前になりつつある。日本ではCDレンタルが根強い人気を保っていることもあるが、海外では著作権問題も絡んで一般的ではない。そうした状況を踏まえれば、スマホとの組み合わせを優先するのがユーザーにもメーカーにも都合が良かったわけだ。
加えて、世界で進むバックカメラ標準化の動きも見逃せない。アメリカではすでに2018年5月以降に販売される車両すべてにこの装着を義務付け、日本も2022年5月から新型車を対象に義務化が決定している。バックカメラを装備するということは、その映像を表示するためのディスプレイの搭載も欠かせず、これがディスプレイオーディオへの転換をいっそう進めることにつながったとも言えるだろう。
ディスプレイオーディオは今後ますます普及が加速! スマホが必要不可欠なアイテムに
では、車載AVシステムはディスプレイオーディオ一辺倒になっていくのだろうか。CDを愛用する人には気の毒だが、大きな流れとしてそれは避けられない。それはAV一体型ナビがインフォテイメントシステムとして、スマホと連携させるサービスを充実させていることも背景としてある。コネクテッドが進む中でこの動きは避けられず、ましてや通信端末としてスマホを使う場合はなおさらこの組み合わせは欠かせない。
もちろん、ストリーミングでは音源として音質に不満を感じる人もいるだろう。しかし、最近は圧縮音源に対する補正機能も進化し、ストリーミングで一般的なビットレート128kbpsでも十分な音質が再現できるようにもなってきた。過去にカセットやMDといったメディアがあったように、時代の流れとしてその転換は受け入れざるを得ないのだ。
音楽愛好家に朗報! トヨタ・スズキ・マツダはCD再生機能をラインアップ
そうした中でCD/DVDドライブにこだわるユーザーの声に耳を傾けるメーカーもある。スズキはパイオニアと共同開発したCD/DVD付きAV一体型ナビをメーカーオプションとして用意している。スズキは過去に他社に先駆けてCD/DVDドライブレスでAV一体型ナビを発売したことがあったが、それがまったく売れなかった苦い経験を持つ。その理由は地方を中心に、レンタルCDを楽しんでいるユーザーから反発を喰らったからだ。その反省が現在のCD/DVD付きAV一体型ナビに活かされているのだ。
実はディスプレイオーディオに熱心なトヨタも、アクアやヤリスなど一部車種でCD/DVDドライブを加えられる。従来のようにCDのリッピングができないのが残念だが、それでもユーザーからの声を反映して日本仕様だけ対応したという。また、トヨタでは従来の車載ナビをアプリとして加えることもできるのも大きなポイントだ。これはマツダのマツダコネクトも同様の対応をしている。
カーAVからクルマを選ぶことはほとんどないと思うが、少しでもディスクドライブやカーナビ機能にこだわるならクルマを選ぶ際に気にしてみてはいかがだろうか。
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