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70年代、80年代のカラフルなクルマは、こんな素敵な色をまとって生産ラインから転がり出てきたのだ! 昔はもっと色があった! クラシックカーが集まると、すぐにわかるのだが、かつての新車の多くは、当たり前のように明るい色をしていた。その経緯と、70年代、80年代に流行した色についての物語。ただし今回は、欧州車のみで、ド派手なアメ車は採り上げていませんので、悪しからず。(笑)

70年代、80年代のクルマを見ると、当時の新車がいかにカラフルであったかがすぐにわかる。もちろん、70年代は変化の時代であり、フラワーパワーは当時の生活形態をがらりと変え、男女は硬直した役割から解き放たれて雌雄になったのだった。また、アクリル塗料の普及も、車のカラーテーブルを扇形にする効果があった。車の色は、メキシカンブルー、インディアンレッド、シグナルオレンジ、クリフグリーンなど、陽気な名前がついていた。

同じようにカラフルで、さらにシュッとした、80年代のボディカラー

80年代も同様にカラフルな色使いで、この時代のクルマは大胆なシグナルカラーが多かった。ヒッピーの時代を経て、メーカーは互いにしのぎを削って、キーキーと叫ぶような色彩を表現するようになった。90年代の「ポロ ハレクライン」のような、かなりクレイジーなフリンジモデルも言うに及ばず。メルセデスの「Sクラス」でさえ、派手な、しかし何よりもカラフルな色彩を注文することができた。BMWも色とりどりのモデルを送り出した。一方、アウディはパワーステーションワゴンの「RS2」など、特にスポーティなクルマは常に明るい色で塗装された。特に、明るい色の車を美しいと感じるクルマ好きが多く、奇抜な色調はオフカラーとしてカルト的な人気を博した。例)アガベグリーン、デイトインテリア。今日観ても素晴らしい。

黄色ってこんなに鮮やかなんだ: オペルGTの場合。

今日でも人気なカラフルなクラシック

今、寒色系のクルマが氾濫する中、形だけでなく色でも目を引くカラフルなクラシックカーが活躍しているのは明らかだ。いつの時代も、メーカーは大胆な塗装色も提供している。しかし、特にプレミアムメーカーのクルマは、価値が下がりすぎるのを恐れて、昔も今も落ち着いた色でオーダーされている。数年後にオーナーがディーラーに下取りとして提示する車であれば、考えられるすべてのバリエーションが許されるわけでもないことが多い。つまり、それによって個性が失われてしまうのだ。かつて私たちが高く評価していた個性が、ここでは賞賛される。

自動車購入者の色選びはより大胆になっている

長い間、シルバー、アンスラサイト、グレー、ブラック、ホワイトが街並みを支配してきたが、最近では徐々に色彩が戻りつつある。色選びにも勇気がいるようになり、鮮やかな色彩が道路交通に混じるようになってきた。小型車の塗装において、色が重要な役割を果たすことが多くなっている。また、特にエンジンパワーが高い「メルセデスAクラス」やスポーティなBMW、軽快なアウディなどのモデルは、常に鮮やかな色でオーダーされている。

鮮やかな色彩のヴィンテージ&ヤングタイマー

1970年代には、鮮やかな色のクルマが登場した。例えば、この「VWシロッコ1」やグリーンメタリックの「ゴルフ」は、最後のボーデンゼ- クラシック ヴィンテージカー ラリーに参加したときのものだ。
大林晃平: そうそう、昔の「VWゴルフ」や「シロッコ」というのは、こういう風に明るいカラーが多かった。グリーンや水色、オレンジに黄色・・・、と多彩であった。なのに、今や「ゴルフ」は白と黒と銀、たまに赤をみかけるくらい・・・。いったいいつからか、と調べてみたが、おそらく「ゴルフⅡ」あたりから、ということは明るいカラーは初代のみということらしい。そういえば友人の「ゴルフⅡ」もしぶい紺色だったことを思い出す。そして今や無彩色ばっかりのラインナップなのである。寂しい。
70年代以降、各メーカーは色鮮やかな色調で勝負に出た。メタリックカラーの台頭とともに、ビザンティウムゴールドの「メルセデス280CE(1972)」のように、大胆な色彩も大きな話題となった。
大林晃平: この頃のメルセデス・ベンツで有名なのは、「視認性が良い=事故を起こしにくい色」という、カラーチャートがあったこと。確か一位は、肌色みたいな色であったことを思い出す。そういえば昔はドイツのタクシー(基本的にディーゼルのコンパクトメルセデスが主流だった)は法律で色が決まっており、それは淡いクリーム色だった。
シグナルオレンジは、その昔、「ポルシェ911」でも人気があった。現在では、タルガとの組み合わせで特に人気の高いカラーだ。
大林晃平: ポルシェには今もビビットな色が多数存在する。水色、グリーン、黄色・・・。しかしそれらはどれもこれもオプションで目の球が飛び出るような価格である。調べてみると、シャークブルー(かなり派手な水色)が594,000円、カーマインレッド(濃い赤)が452,000円、パイソングリーン(派手な緑)がやはり452,000円(いずれも911)。いずれもブレーキキャリパーなどを塗るのはもちろん別途お金がかかる。
「911カレラ2.7」には鮮やかなオレンジ色のスリムなGモデルも用意されていた。
大林晃平: 似たようなオレンジ色を今ポルシェに塗るといくらかな、と調べてみた。するとちょっとイメージに近い、「ラバオレンジ」というのを発見。これを「カイエン ターボ」に塗ると、360,186円でした。しばし無言でペンを置きたい。
「BMW 3.0 CSi」は、まったく同じシグナルオレンジでパイロンを走り抜ける。
大林晃平: BMWもこの時代にはこんなに華やかな色があったのである。今のBMWは地味だのう、と思ってはいたが、先日見かけた「M4カブリオレ コンペティション」の広報車は、ド派手なブルーに白いインテリア。もちろんどちらもオプションでポルティオブルーが10万円(意外と安い)、ホワイトのBMWインディヴィジュアルフルレザーメリノ内装が35万円。合計で45万円だった。
この色は蛍光オレンジとオリンピックブルーと呼ばれるもので、どちらも70年代前半のVWカラーである。
大林晃平: あったあった、こういうミニカー昔はいっぱいあったもんですよね。今もたまにファミリーレストランのレジの横に、こういう「ビートル」とか、「ミニ」のミニカーを見かけるけれど、どれも意外と地味な色か赤、グリーン、くらいになってしまっているような気が・・・。つまんない。
太陽のようなメルセデスの色、ヘリオスイエロー。「W123」の生産期間中(1976~1985)だけでも、メルセデスは6色のイエローを用意した。他には、メープルイエロー、サハライエロー、ウィートイエロー、イエロー、ミモザイエローがあった。
大林晃平: 前述のようにメルセデス・ベンツには視認性の良いカラーチャートがあり、これはおそらくその上位にくるはずのヘリオスイエロー。思い出してみると、この「W123」までは、こういう明るいカラーが多く、「W124」からは急にブルーブラック(カラーコード番号199)とか、ボーナイトなど暗い色が主流になったように思える。この時代、「Sクラス(W116)」もグリーンや黄色などもあり、松任谷正隆さんも水色の「280SE」に乗っていた。
この美しい個体は、ミモザイエローで、同じくベンツ「W123」に彩色されている。
大林晃平: 魅力的な明るいカラーの「W123」。メタリックではないところが清い。ちなみにライトからすると、これは下級の「200E」か「230E」、あるいは「240D」か「300D」(上級モデルの280Eは角ライトになる)だ。スライディングルーフがちゃんとついているのに注意。このボディカラー同色のホイールキャップも「W123」までで、「W124」では廃止された。
同じモデルには、モスグリーンと呼ばれる近隣の色合いの内装色も用意された。
大林晃平: 「W123」の標準の内装テクスチャーがこのビニールと布のコンビネーション。この車は前後ともパワーウインドウではないし、前席後部のマガジンラック(この当時は伸び縮みする網状のマガジンラック)も付いていないが、これがもとの姿。シートももちろん完全手動で、写真の黒いダイヤルをくるくる回すタイプのものである。
もうひとつのカラフルな「W123」、これはインカロットメタリックで、今の時代から見ればそれほど流行に左右されない色だ。
大林晃平: 「W123」のこれは角ライトのため「280TE」か「300TDT(スライディングルーフ付き)」。インカロットメタリック同色のホイールキャップが標準で、鍛造のアルミホイールは、当時でも40万円近くする高価なオプションだった。
端的に言えば、このブラウンは単にブラウンと呼ばれるものです。1982年から1984年まで、メルセデスの標準色として追加料金なしで使用できた素朴な色合い。
大林晃平: 明るい内装(おそらく標準のテクスチャーではなく、高価なオプションのベロア生地のついたモデル)とブラウンとの組み合わせがやさしい感じの「メルセデス・ベンツW123」。今でもこういう色もメルセデス・ベンツで選べたらいいのになぁ、とは思うものの、今のメルセデス・ベンツに塗ると、ものすごく違和感が生まれるような気もしてしまう・・・。
ブラウンにはカラフルな色もあり、これは「911」のオリジナルモデルが70年代のポルシェカラーであるセピアブラウンに染まった様子だ。
大林晃平: 素敵な外装色だけではなく、内装の実に洒落たチェックのシート生地にも注意。本来、「911」とはこういうお洒落な車だったのである。
同じ色、同じ会社、でもモデルラインは違う。「VWパサート エステート32b」のコロラドベージュは、今日も目を楽しませてくれる。
大林晃平: 現在のパサートに塗っても決して似合いそうもないコロラドベージュ。落ち着いた色で実用車としては実に好ましいと思う。素通しの、根暗なウインドウでないこともやさしいイメージの一因といえよう。
メルセデス・ベンツから再びコロラドベージュが登場。マッドブラウン、ダーティベージュ、クレイの間のカラーフィールドのペイント。
大林晃平: これは丸4灯ライトなので、ベーシックなほうの「W123」だが、オプションのヘッドライトワイパーがついていることに注意。このヘッドライトワイパーも当時高価なオプションで、「W123」では希少だった。うしろのドイツ的な住宅と実に似合ったカラーといえよう。
「911」に話を戻せば、この「964」が示すように、カラフルな塗装は歴代の「911」に実によく似合っている。
大林晃平: このころの「964」にはこのブルーの他に、グリーンやイエローなどを見かけたものであったが、バブル全盛期だったためか、六本木近辺では、ピンク色の「964」などもティプトロニックにカブリオレの組み合わせで見かけたことを思い出す。さすがにピンクは似合わないと思ったが・・・。
また、ポルシェのネオンカラーであるダフネグリーンも「911」を彩っている。
大林晃平: この色はイイなぁ、と思う一台。「911」のやさしいラインに実に似合っている。もちろん今のモデルでも近い色を選ぶことができるが、ざっと50万円は用意しておきましょう。
ちょうど、80年代にタイムスリップしたかのような美しさ、ゴールド。挑発的なスタイルの「ポルシェ928」は、ショーアップされたカラーでその魅力を最大限に発揮する。
大林晃平: 当時の日本にもいたいた、このボディカラーの「ポルシェ928」。というか、「928」のイメージカラーとは、本来こういうカラーか、水色のメタリックのようなものだったと記憶している。そして未来的な「928」には、こういうゴールドもものすごく似合う、宇宙船のようだ(内装もブラウンなのに注意)。またやけにすっきり見えるのは、助手席のドアミラーがないことも一因。当時、助手席ミラーはオプションで必須でなかった。

後編に続く! お楽しみに!

Text: Matthias Brügge
Photo: autobild.de