バス運転手の求人サイト「バスドライバーnavi」の運営会社リッツMCの企画で東京バス協会が主催した、バス運転手専門の就職イベント「合同就職説明会・運転体験会」が平和橋自動車教習所で開催されたので取材した。2022年2月5日に開催予定だったのだが、新型コロナの影響で3月12日に延期されたものだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
新小岩駅から教習所の送迎車で到着!
平和橋自動車教習所はJR総武緩行線・快速線の新小岩駅が最寄りだが、送迎車がおよそ10分毎に走っており当イベント参加者も乗車可能だったので、これを利用して自動車教習所に到着した。
複数の教習コースがあるが会場となるコースの受付前にはすでに長蛇の列ができており、延期されたとはいえ人気の高さがうかがえる。
当イベントは建物の2階にある教室で出展事業者が説明会を行い、建物の下にはバスを持ち込んだ出展事業者が車内を公開してバスの座席を使い説明会を行った。
また目玉の一つとしてバス運転体験が行われ概ね好評だった。これは教習所のコースを使い、教習車で複数回の周回を自分で運転して行う。体験の条件は普通免許(MT)以上を保有していることだった。
参加者は103名
同社の統計によれば、参加者は103名で内訳は男性が99名、女性が4名だった。また現有運転免許は大型二種免許保有が65名で63.1%だった。参加者の平均年齢は44.2歳。現在の現役バス運転士の平均年齢が50代前半なので、参加者の平均年齢はそれよりも少し若いと言えるだろうか。
受付の横には二種免許や中型免許以上で必要になる深視力検査機が設置され、誰でも自由に検査をしてもらうことができた。記者の免許区分は優良なので前回の免許更新からすでに3年以上経過しており、久々の深視力検査にビビったが、2回目の検査で合格となった。
試験場での免許更新もいつもこんな感じで要領がつかめず、警察官からアドバイスを受けながらの検査なので過渡に心配する必要はない。
現役バス運転士の話
バスを持ち込んだ事業者は人事担当者とは別に当然ながら運転士も来ているわけなのだが、貸切バス事業者はバスガイドも来ていた。運転士は生の声を聞くことができる他、ガイドは会社のパンフレットを配ったり多くなった参加者の列を整理をしたりと時間帯によっては忙しそうだった。
空いた時間を見計らって現役運転士に話を聞いてみた。
「貸切は昔の方が大変でしたね。ルート上で通れるかどうかは今はネットで道路状況を見ることができますが昔は管轄の警察署にその都度電話して大型バスが通れるかどうか確認をしていました」
「仕事自体は確かに楽ではありませんよ。高速路線の現役から貸切に移ってきてやめていく人もいますし、貨物からきて長く運転している人もいます。好きなことは大事ですが、好きなだけではとは思いますね。本当はその苦労の後に達成感とやりがいがあるんですけど、これはどんな職業でも同じではないですかね?記者さんのお仕事もそうではないですか?」
いかにもその通りである。好きなだけではできないし、知っているだけではできない。記者に一番必要なのは実は文章を書くことではなく、誰とでも一瞬で良好なコミュニケーションが取れることだ。
現役バスガイドの話
今度はバスガイドに聞いてみた。「いつも走って案内している道路で新しい建物が突然できたら何でしょうかね~?と運転士と話すことはよくあります。そういう面では常に勉強の毎日ですね。ガイドの仕事で案内以外に重要なのは誘導です」
「私は普通免許しか持っていませんが、大型バスが後退する時にどのように動くのかは実は会社で何度も何度も訓練しているのです。実車や三角コーンを置いて運転士がハンドルを切り始めたらバスの前方はどこに行ってしまうのかということを頭に叩き込んで乗務します」
「その意味では私からすると運転士は大変ですけど、あんなに大きなバスを操るのですからすごいなぁと思います」と、車庫入れや切り返しでバックすることが多い貸切バスならではの話をしてくれた。
実際の運転体験
参加者の運転体験時間の合間に平和橋自動車教習所の好意で教官にも時間を割いていただいて記者も運転体験をさせてもらった。記者が当たったのはエルガミオだったが、当然ながら教習車なのでマニュアルトランスミッション車で、フィンガーミッション仕様車だった。
フィンガーミッションは西鉄バスの西工・三菱車で運転したことがあるが、本当に久しぶりで緊張した。バスはそう簡単にはエンストはしないので、動かすことは実は難しくない。ブレーキの掛け方のほうが難しいと言ってもよい。
1周目はギクシャクしたものの、2週目からは2-4速までを使い教官と世間話をする余裕もできてスムーズに運転できたような気がする。
参加者の気持ちは?
さて、参加者にも話を聞いてみた。比較的遠くからきている若い方もおり、やはりバスは好きなのだそうだ。高速車や貸切車よりも路線車の方が好みだろうで、三菱ふそうエアロスター、いすゞエルガを挙げてくれた。最近気になるのは西工・日産デのスペースランナーだそうだ。
参加した理由はバス運転士になりたいのはもちろんだが、普通免許しかないのでいつもバスの運転は見ているものの実際に自分に運転できるかどうかが不安で事業者の話を聞くのと運転体験で自信をつけようと思ったとのこと。
もう一人は年配の方で、現在は大型免許で貨物輸送を行っている現役のドライバー。荷役作業が年齢的に辛くなってくるころで、バスへの移行を考えているので、そのきっかけになればという参加理由だった。大型車の運転には問題はないので、ブースでじっくり話を聞いてみたいとのことだった。
大変だから頑張ってほしい!
スーパーハイデッカーから路線車まで事業者がそろえたバスを眺めながら、多くの人がそれぞれの理由でバス業界への転職や就職を考えていることがよくわかったイベント取材だった。さまざまな面で大変な世の中だからこそ、いろいろと意見はあろうが、一歩踏み出そうとしているバス運転士を考えている方には頑張ってほしいと心から願った。
同社ではバス業界の就職イベントとして、5月21日(土)に大阪・梅田で、6月4日(土)に東京・新宿で『どらなびEXPO2022春』の開催を予定している。
投稿 どらなび バス運転士「合同就職説明会・運転体験会」取材レポート は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。