LINEの暗号資産事業を手がけるLVC(東京都品川区、林仁奎社長)は23日、記者会見を開き、NFT(非代替性トークン)総合マーケットプレイス「LINE NFT」の提供を4月13日から開始すると発表した。国内で月間9000万人が利用するコミュニケーションアプリ「LINE」を通して、簡単な操作・決済方法でNFTの購入や、ユーザー間での取り引きができる。
吉本興業など17コンテンツを用意
LINEが運営するキャンペーンプラットフォーム「LINEで応募」といったLINEの他サービスとの連携を進め、購入特典やキャンペーン景品にNFTを付与する機会を増やしていくという。さらに、現在国内で約600万セットが販売されている「LINEスタンプ」でもNFTを活用していく予定。
4月13日のサービス開始に合わせて、吉本興業所属の人気芸人のネタをNFT用に撮り下ろしたNFT動画や、歌手で俳優の西島隆弘さんのNFT、人気のLINE公式スタンプ「ヨッシースタンプ」のNFTが販売される。ローンチ時には他に、テレビ朝日、ジェイアール東日本企画、スクウェア・エニックスなどの17コンテンツがラインナップされる。
LVCの林社長は会見で、「LINE NFTはコンテンツホルダーやクリエイター、ユーザーが中心となる世界です。誰もが簡単にその世界に参加し、楽しむことができます」と述べた。
楽天やSBIもNFTに参入
アメリカに比べると、大手企業の参入の少なさが指摘されてきた日本だが、今年に入ってからネット企業を中心に、NFT事業を本格的に展開する大手企業が増えてきた。
楽天グループ(東京都世田谷区、三木谷浩史会長兼社長)は2月25日に、NFTマーケットプレイスおよび販売プラットフォーム「Rakuten NFT」の提供を開始した。アニメ『ULTRAMAN』(ウルトラマン)のNFTや、漫画家・黒鉄ヒロシ氏が手掛ける競馬がテーマのNFTアート「黒鉄ヒロシGI激闘史『2010年シリーズ』」などが販売されている。
SBIホールディングス(東京都港区、北尾吉孝社長)は、日本初のNFTマーケットプレイス「nanakusa」を運営する株式会社スマートアプリを昨年9月に子会社化。同社はこれに伴い社名をSBINFT株式会社に変更しし、つい先日の3月17日には、「nanakusa」もリブランディング。新たなNFTマーケットプレイス「SBINFT Market」をローンチした。
SBINFTの中田宜明CMO(最高マーケティング責任者)は、サキシルの取材にリブランディングの理由を次のように述べている。
「今回SBIグループに入ることによってマーケットプレイス事業のリブランディングを行いました。『nanakusa』は公認アーティストの集団としての位置づけを行うチームとして残り、全体のマーケットをSBINFT Marketとして多くのアーティストやパートナーと一緒にNFTの販売場所を提供することを目的にしております。それに伴い、SBIグループのシナジーを出していくことも考えておりますので、SBINFT Marketという名称に変更しております」
市場発展へ適切な規制を
大手企業の参入で、にわかに活況を呈してきた日本のNFT業界だが、まだクリアしなければならないハードルがある。それは、適切な法規制だ。NFTに詳しい弁護士は、現行の法律では「第三者に対して権利侵害が主張できない」「出品されたプラットフォームでしか転売できない場合もある」など、消費者の権利が守られているとは言い難いと指摘する。また、マネーロンダリングへの対策や、サービスが停止した場合の対応なども不十分だという。
NFTの適切な規制に関しては、自民党NFT特別担当の平将明衆院議員が、ツイッターで「スタートアップや人材が海外に流出する今の環境を改める。投資を呼び込む。税制改正の提言も視野。自民党デジタル社会推進本部にPTを作りスピード感をもって検討を進めます」と述べている。
参入企業の成長を阻害せず、なおかつ消費者も安心して利用できる規制をできるだけ早く設け、日本の数少ない成長産業になり得るNFTを政府が一丸となってバックアップしてもらいたい。