「派兵」か「侵攻」か、はたまた「進駐」か--。ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部の2州の独立を承認し、それらの地域に軍を出動する命令が出たことを巡り、23日付の朝刊各紙の言葉遣いが異なることがネット上で話題になった。
朝刊各紙(東京本社発行版)の見出しは次の通り。
- 読売「露、ウクライナ派兵へ」
- 朝日「親ロ派地域に進駐へ」
- 日経「ウクライナ東部に派兵」
- 毎日「露、ウクライナ派兵へ」
- 産経「露軍、ウクライナ侵攻へ」
- 東京「ウクライナ東部へ 派兵命令」
ツイッターではこの日午後、日本大学危機管理学部の福田充教授が各紙の一面を並べて撮影した画像を投稿。「【一面記事】ウクライナ危機、ロシアの侵攻を報じる日本の新聞各紙、一面記事。日経と読売は「派兵」を使い、朝日新聞は「進駐」、産経新聞は「侵攻」と表現しています。この一言だけでも新聞各社の立場やイデオロギーが表出されています」と指摘したところ、深夜までに1500を超えるリツイートの反響があった。
【一面記事】ウクライナ危機、ロシアの侵攻を報じる日本の新聞各紙、一面記事。日経と読売は「派兵」を使い、朝日新聞は「進駐」、産経新聞は「侵攻」と表現しています。この一言だけでも新聞各社の立場やイデオロギーが表出されています。ゼミ生の皆さん新聞を手に取ってみて下さい。 pic.twitter.com/26pGyNRtEP
— 福田充 Mitsuru Fukuda (@fukuda326) February 23, 2022
福田氏の投稿をきっかけにツイッターでは議論が活発化。
私自身も派兵を使ってしまいそうだ。軍事的にぶつかっていないと侵攻とは言いにくいし、かと言って進駐のような合法性がある表現は使いたくない。派兵が一番無難な感じがする。
「進駐」だと我が国の戦後みたいに「占領軍が駐屯する」の印象があるな。「派兵」だとかつてのシベリア出兵を彷彿とさせるし、「侵攻」と言う「熱」はまだ感じない。現段階だと『侵入』くらいの程度の様な気がする。
ウクライナ東部「侵攻」か「進駐」か「派兵」か「出兵」か…やっぱ思うけどニホンゴって難しいネ
一方、元ソフトバンクモバイル副社長で、『AIが神になる日』などの文筆活動もしている松本徹三氏は「産経の「侵攻」は言い過ぎですね。「派兵」が普通で、朝日が何故敢えて「進駐」という強い(ロシアに対して友好的とは言えぬ)言葉を使ったのかは私には謎ですが、それなりの理由があるのでしょう」とコメント。
産経の「侵攻」は言い過ぎですね。「派兵」が普通で、朝日が何故敢えて「進駐」という強い(ロシアに対して友好的とは言えぬ)言葉を使ったのかは私には謎ですが、それなりの理由があるのでしょう。 https://t.co/w7bCTIoGcw
— 松本徹三 (@matsumotot68) February 23, 2022
また、元読売新聞大阪本社社長の中村仁氏は自らのブログで「軍事情勢についての表現は、これまで見られなかったほどまちまちで、読者や視聴者が混乱しています」と指摘。「ジャーナリズムは使う時事用語のニュアンスを考え、その判断基準を明示する習慣をつけるてもらいたい」と現役記者たちに注文していた。
ロシア問題の専門家はどう見ているか。ツイッターのアカウント名をこの日、ロシア風の「ユーリィ・イズムィコ」から「丸の内OL(27)」に変えたことが話題になり、トレンドワードにも入った小泉悠氏(東大先端研専任講師)。最近は「コスメ女子」などのお茶目な投稿でネット民に親しまれているが、本業の話だけにここは真面目に投稿。
進駐か侵攻か問題、僕は前者を使っていて、なぜかというとロシア軍が既にずっとそこに居てド・ル人共(編集部注・ドネツク、ルガンスク両人民共和国)がロシアの支配下にあった以上、追加で平和維持部隊なるものがやってきたことを以て侵攻と呼ぶのはなんか違和感があるからです
との持論を述べていた。