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 かつて輸入車は、コアなクルマ好きが手にするものという定説があり、国産車に慣れた人にとっては敷居の高い存在だった。そして、故障などのトラブルが起きやすい、車両価格が高額なうえに燃費は期待できないというのが輸入車の購入を躊躇していた人の言い分だった。

 しかし時代は変わり、いまやそのようなネガティブイメージを輸入車に抱くことはほとんどなくなった。そこで本稿では、今後、国産車から輸入車へ乗り換えようという立場の人への心構えとして、国産車と輸入車の違い、購入、維持における注意点、長く付き合うにあたって気になるポイントについて解説していく。

文/フォッケウルフ
写真/ フォルクスワーゲン グループ ジャパン、BMWジャパン、Stellantis ジャパン、フォッケウルフ

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■近年の輸入車は品質が向上している?

 輸入車に魅力を感じていながらも、いろいろな心配があって購入に踏み切れず、「輸入車 壊れる」などとググっている人は少なくないはず。

 言わずもがなクルマは決して安くない買い物なので、慎重になってさまざまな情報を調べるのは大正解だが、検索してみた結果、不幸な事例を目にすると輸入車の品質に対する不安がますます募ってしまう。

 そもそもクルマは膨大な数の部品を使い、さまざまな機能を備えているので故障やリコールは不可避的に発生するものだが、それは輸入車に限ったことではない。

 たしかに20年以上前なら「輸入車は壊れやすい」というのは、あながちはずれていなかった。特に「日本が高温多湿だから」とか、「交通環境が違うから」といったことが故障を誘発する要因として挙げられていたが、現在は商品企画や開発の段階において、本国だけでなく輸出先を見据えた、いわゆるグローバル化が進んだことによって、使用環境の違いを起因とする機械的な不具合の発生はかなり減っている。

 また昨今の新車は、港に陸揚げされたあとに輸入車メーカーが設けている「PDI(プレ・デリバリー・インスペクションの略)センター」という施設で出荷前点検が実施されている。

 壊れにくい日本車に慣れた、品質に厳しい日本のユーザーを想定した独自の品質検査や日本の保安基準への適合確認が行われたあと、それぞれの販売店に出荷されていくので品質に関しては安心していい。

VGJ(フォルクスワーゲン グループ ジャパン)の豊橋インポートセンター。陸揚げから新車整備までさまざまな業務が行われている

 品質以外にも輸入車の購入をとまどう理由として、「価格が高い」ということも挙げられるだろう。これも間違いではない。輸入車の価格は、国産車に比べると戦略性が強い。

 海外から運んでくる手間も要するから実用装備を過不足なく装着した買い得なグレードを設け、ユーザーのニーズをそこに集中させようとする傾向が強いのだ。そのため同サイズの国産車に比べれば価格設定は高くなるが、その分デザインが凝っていたり、内外装の質感が高かったり、さらに国産車ならオプションになるような機能や装備を標準で備えていることが多く、ユーザーは価格に見合った高い満足感が得られる。つまり、損得を車両価格だけで判断せず、装備の内容まで含めて検討することが寛容なのだ。

 また、ローンでクルマを買いたいユーザーにとっても輸入車は有利だ。残価設定ローンが中心になるものの、年率1.9~2.9%という低金利キャンペーンを頻繁に実施している。今どきは国産車も低金利ローンに力を入れたり、サブスクリプションをはじめとしたサービスを強化しているので、一概に輸入車のお得感を強調できないが、低金利ローンが使えるなら月々の返済額、支払い総額においても国産車との差額を縮めることは十分に可能になるはずだ。

■実際に所有した輸入車は何が壊れたか?

 購入後の不安についてだが、これも国産車とさほど変わりない。よく言われているとおり、メンテナンスをしっかりしておけば年数を経た、素性がわかりにくい中古車でも不安は軽減できる。とはいえ、輸入車だからといってナーバスになる必要はない。

 僭越ながら(20年ほどではあるが)輸入車を所有してきた筆者の経験に基づくと、普通に使っているぶんには派手に壊れることはなかった。

 ちなみに筆者が最初に所有したのはドイツ製のコンパクトカーで、新車で購入し13年ほど所有していた。初めての輸入車だったこともあって購入当初は気づかっていたものの、元来ズボラな性格のためメンテナンスは2年に一度の車検のみで、油脂系消耗品の交換はそのときだけ。にもかかわらず、13年の間に発生した故障は、リコールが起因するトランスミッションのトラブルのみの1回。

 むしろ、そのあとに乗り換えた別のドイツ製コンパクトカーのほうが、トラブルに見舞われることが回数は多かった。こちらの場合はいずれも走行に支障をきたすものではなかったが、同クラスの国産車に比べるとプレミアムで高額なのに「こんなことある?」という事象だったが、すべて新車保証の範疇だったため幸いにも自己負担はなく、ディーラーの手厚い対応のおかげで不満も不安もなく乗り続けることができた。

筆者が13年乗った初めての輸入車。同クラスの国産車よりもやや高額だったが、品質には大いに満足できた

 所有していた輸入車は、もともと日本市場で売れ筋の車種だったため、ユーザーからのフィードバックも多かったはず。日本という風土との親和性が高く、それが壊れにくさにつながっていたと言えるかもしれない。

 だから、輸入車に対して少なからず懐疑的に思う人からすれば、「それってあなたの感想ですよね?」と、某論破王のようなツッコミが入りそうだが、いずれの愛車に対しても共通して言えるのは、普通に使っているだけなら品質や耐久性に関しては、それまで所有していた国産車と比べてまるで遜色がなかったということ。

■走りのよさに隠された速度域の違い

 この筆者の感想は、ここ数年のうちに日本へ導入されたすべての輸入車に当てはまる(はず)。もちろん、庶民が購入できる車種に限ったことではあるが、品質や耐久性に不安があるから輸入車の購入を控える……ということには、「ふーん、そうなんだ。なんかもったいない」と思ってしまう。

 もったいないと思う理由としては、走行パフォーマンスの高さがある。概して輸入車は走行安定性に優れ、確かな操舵フィールが実感できるうえに乗り心地もいい。走りにおけるバランスのよさは同クラスの国産車よりも秀でているのは間違いない。

 たとえば日本の法定速度の上限は時速100km/hとなっているが、欧州ではこれを大幅に超える速度域で走ることが多い。こうした状況でもつねに安定性を維持するには、ボディ剛性、サスペンション、ブレーキなど、走りを支えるさまざまな機能が高い水準で調和していなければならない。

 走りがいい=スポーティということではなく、実用的な機能として長年にわたって走行性能の向上に取り組んできたから、近年著しくレベルアップしている国産車と比べても走りの能力は高いと言わざるを得ない。

数年前、筆者の知り合いがスイスで借りたゴルフワゴンは、なんとMT。日本なら考えられないが、欧州ではレンタカーでも走りの楽しさを味わえる

 車内の作りにも同様のことが言える。運転席まわりは適切な姿勢でドライブできるよう設計されていることから、長時間ドライブでも疲労が少ない。なおかつメーターやスイッチの視認性や操作性もよくないと高速走行時の優れた安全性が確保できない。これも切実な要求なので、国産車に比べるとシートなどの部品の作りや、室内設計が違ってくるというわけだ。なにより細部にいたるまで質感が高い。同クラスの国産車よりも少々高くなることもな得できる要素と言えるだろう。

■修理費が高くつくのは本当の話

 燃費の向上も輸入車が積極的に選ばれるようになった理由に挙げられる。以前なら、高速走行時の燃費が抑えられても、日本特有の渋滞をノロノロと走るという場面を苦手としていた。実燃費については輸入車に慣れた人なら「こんなもんだ」と納得するものの、初めて輸入車の購入を検討している人にとっては、それだけで「やめておこう」となってしまうほどの能力だった。

 それが今どきはモーターを加え、動力性能を効率よく引き出しながら燃料消費量を抑制できるパワーユニットを搭載する車種が増えた。むしろ、電動化という点では日本よりも進んでおり、一部の欧州車では内燃機関のみを搭載する車種はもはや導入していない。燃費ばかりを追い求めるのではなく、動力性能とのバランスも考慮されているので、低燃費車にありがちな非力な印象はほとんど感じない。むしろ、爽快な運転感覚が味わえる。

 ただし、修理が必要になる場合は高く付く。パーツも輸入品なので輸送コストが上乗せされる。

 また、カー用品店でドライブレコーダーをはじめとした電子部品をつける時も、輸入車だとプラス料金が加算されるケースがある。これはクルマの構造が国産車よりも少し特殊な場合があり、その際に専用の工具が必要になったり、手間がかかったりするから。長く付き合っていくうえで考慮すべきデメリットはあるが、だからといって輸入車を選択肢から外すということには繋がりにくい。

輸入車の修理が高くつく一番の理由はパーツが高価なため。高級車ほどその傾向は強まりがちだ

 いまや多くの国産自動車メーカーが、海外市場に軸足を置いたクルマ作りを行っている。日本市場向けに開発される国産車は、軽自動車と一部のコンパクトカー、ミニバンだけ。そうした事情を踏まえると、日本車の価値とはなにか? という疑問が生じるし、日本車らしさとはもはや軽自動車など一部のクルマにしか息づいていないようにも思える。

 そんな海外志向を強めた国産車もいいが、日本車が目標としてきた輸入車に「本物」としての価値を見出してみてはいかがだろう。壊れやすいはもはや都市伝説であるから、安心して輸入車オーナーへの道を一歩踏み出してみようじゃないか。

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投稿 国産車から輸入車へお乗り換え! けど、その前に知っておきたい4つのポイント自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。