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政府による初めての電力需給ひっ迫警報で、懸念された22日の大規模停電はなんとか回避された。この日昼過ぎ、東京電力が午後8時台に大規模停電が発生する恐れがあると発表。北海道を除く東日本全域で、最大で200万~300万軒もの停電が起きる可能性もあった末の綱渡りだった。

東京電力の発表時点で、ツイッターでは「停電の可能性」や「夕方以降」「エアコン」「計画停電」といった、電力需給ひっ迫に関するキーワードとともに「テレビ局」も一時トレンド入りした。ツイッターユーザーの多くが、節電するために、テレビ局は放送を取りやめろとツイートしていたのだ。

MikeSleigh /iStock

「放送を休止したらどうだろうか」

猫組長の愛称で知られる投資家で作家の菅原潮氏は、午後3時から午後8時までの「もう一段の節電」を要請した萩生田経済産業相の会見を伝えるNHKニュースのツイートを引用する形で「テレビ局の放送中断させれば節電になるんじゃねえの」とツイートした。

コラムニストの小田嶋隆氏も同様の意見のようで「電力不足が懸念されていることでもあるので、NHKをはじめとするテレビ局は、この際、放送を休止したらどうだろうか。というよりも、彼らが多少とも社会に貢献する手段があるとしたら休むことくらいしかないと思う」とツイートした。

落語立川流真打で著述家の立川談慶氏も、「今日はテレビのスイッチをオフにしましょうというテレビ局があったら贔屓にしたいなあ」とツイートしていた。

テレビを消すことを呼びかけた専門家

「ひるおび」を放映したTBS(mizoula /iStock)

そんな中、話題を呼んでいるテレビ番組がある。月曜日から金曜日の10時25分からTBS系列で放送されている『ひるおび』だ。同番組でもこの日は、首都圏の電力需給ひっ迫の話題を扱ったが、司会の恵俊彰氏と国際環境経済研究所理事で主席研究員の竹内純子氏とのやり取りがネット上で拡散されている。

恵氏から、家庭でできる節電対策を聞かれた竹内氏は、「テレビで言いづらいんですけど、テレビを消していただいて…。テレビは結構、(電気量を)食うんです。もしご覧になるとしたらワンセグとかで」と回答。

さらに、竹内氏は視聴者だけではなくテレビ局に対しても、「テレビ局も照明を落としていただくとか、(電気量の)節約をしていただけるとありがたいです」と要望を出していた。

こうした竹内氏の発言にツイッターなどのSNSでは次のような賞賛の声が多数寄せられている。

テレビ局も節電しろ。先生よく言った!!!

専門家が「テレビ消していただいて」っておっしゃった!

テレビ局は電力使いすぎなんだよ。もっと照明を落とせよ。こっちは暖房消してるんだ

「発電が足りないときにはテレビを消して下さい」よく言った。

テレビ局が放送を取りやめることの節電効果は、今回や東日本大震災時など、電力需給がひっ迫するたびに取りざたされてきたことだ。『ひるおび』の竹内氏のコメントによって、テレビ局が放送に使う電力を削減できるという意味で有効だということが分かった。

視聴者への節電効果は限定的でも…

しかし、視聴者側にもたらす節電効果はどうだろうか。ツイッターでは、「テレビが放送を止めれば必然的に、視聴者はテレビを消すから視聴者側の節電も促せる」といったような意見が散見された。しかし、この意見には疑問符を付けざるを得ない。

今はテレビの地上波放送以外にも、ユーチューブネットフリックスをはじめとした配信コンテンツが気軽にテレビで見られる。60代、70代でも多くの人がユーチューブを見ている今、テレビ局が放送を取りやめたとしても、結局、視聴者はそれらに流れていくだけで、電気使用量はあまり変わらないのではないだろうか。

実は、1989年(昭和64年)1月7日に、昭和天皇が崩御した際も似たような問題があった。当時、テレビ局はCMすら自粛し1日中、特別番組を放送した。これに飽きてしまった視聴者が一斉にレンタルビデオ店に駆け込んだのは有名な話だ。あるレンタルビデオ店では、すべてのビデオが貸し出されたという記録が残っている。当時と違い、家にいながらにして、あらゆるコンテンツを楽しむことができる今では、テレビ局が放送を止めることによる視聴者側にもたらす節電効果は限定的なものになるだろう。

ただし、テレビ放送をするための電力や、テレビ制作のための電力を節電できるという意味では、テレビ局が放送を休止するのが有効だということは、改めて付け加えておきたい。