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 3列目シートを持つSUVは以前からあるジャンルだったが、SUV人気の高まりと、核家族化が進んだことにより「普段は使わないけど、たまに乗せるために3列目が欲しい」というニーズが増え、その注目が高まっている。

 そういった背景もあり、ミドルクラス以上の日本車で3列目シートを持つSUVが増え始めている。今回は3列目シートを持つ最新日本車SUVの実用性をチェックしてみた。

文/渡辺陽一郎
写真/マツダ・ホンダ・トヨタ・三菱

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■時代の変化とともに求められるようになった3列シートSUV

 今はSUVの人気が高い。約10年前は小型/普通乗用車の10%少々だったが、今は30%に達する。

 SUVが人気を得た理由は、カッコよさと優れた実用性を両立したからだ。もともとSUVは、ランドクルーザーのような悪路を走るためのクルマとして誕生したから、大径タイヤを装着するなど外観に野性味が感じられる。

SUVは作業車の機能も求められたから、ボディの上側はワゴン風で車内も広く、居住性や積載性も優れている

 またSUVは作業車の機能も求められたから、ボディの上側はワゴン風で車内も広く、居住性や積載性も優れている。このカッコよさと実用性という2つの魅力が共感を呼び、SUVは人気のカテゴリーになった。

 そのためにSUVには、3列シートを備えた車種が多い。3列シート車の乗車定員は6~7名が一般的だ。

 ただしSUVの3列目シートは、ミニバンとは造りが大きく異なる。大半のミニバンは、前席側の床を持ち上げて平らに仕上げ、3列目の床と座面の間隔も1/2列目に近付けている。そのために3列目に座っても、腰が大きく落ち込んで膝の持ち上がる着座姿勢になりにくい。

 ところがSUVは、ミニバンのような床を平らにした構造ではない。3列目の床面は、燃料タンクのために大きく持ち上がる。そのために大人がSUVの3列目に座ると、腰が落ち込んで膝の持ち上がる窮屈な姿勢になりやすい。2代目エスクードの7人乗りは、燃料タンクの配置が絶妙で3列目の床と座面の間隔を十分に確保していたが、これは例外だ。

 ミニバンは多人数乗車や荷物の積載を目的としたカテゴリーだから、3列目の快適性も考慮され、着座姿勢が自然で頭上空間も広い。3列目の室内高にも余裕があるから、これを格納すると自転車のような大きな荷物も積みやすい。

 しかしSUVは、前述のとおり悪路走破力が一番の特徴だ。ボディの上側は、ミニバンよりもステーションワゴンや5ドアハッチバックに近い形状になる。そのために1/2列目は快適でも、3列目は「荷室に装着された補助席」になりやすい。ミニバンのような快適な3列目シートをSUVに期待するのは難しいわけだ。

 それでも3列シートのSUVに魅力を感じるユーザーは多い。特に1年に数回、多人数で短い距離を移動する場合、3列シートのSUVは利用価値が高い。3列目の使用頻度が極端に少ないのに、車内の広いミニバンを選ぶのは、ムダが伴うからだ。ミニバンが好きなら別だが、そうでない場合は、3列シートSUVから欲しい車種を見つける方が合理的だろう。

 そこでSUVの3列目シートについて、居住性を評価してみた。そのランキング結果は以下のとおりだ。

■長距離ドライブでも大丈夫!? 国産SUVの3列目シートランキング

●評価の注釈
◎:とても快適(多人数乗車の時間は片道1時間以上も可能)
○:快適(多人数乗車の時間は片道1時間まで可能)
△:少々窮屈(多人数乗車の時間は片道30分まで可能)
×:窮屈(多人数乗車の時間は15分程度まで)

●評価の結果
[1位]マツダ CX-8:◎
[2位]ホンダ CR-V:○
[3位]トヨタ ランドクルーザープラド:○
[4位]トヨタ ランドクルーザー:△
[5位]三菱 アウトランダー:△
[6位]日産 エクストレイル:×
[7位]レクサスRX450hL:×

 国産SUVのなかで、3列目シートが最も快適な車種はCX-8だ。身長170cmの大人が多人数乗車した場合、スライド機能を使って2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰めると、3列目の膝先には握りコブシ2つ分の余裕ができる。しかも3列目に座った乗員の足が2列目の下側に収まり、窮屈感を和らげた。

CX-8の室内。3列目に座った乗員の足が2列目の下側に収まるので、窮屈感が少ない

 それでも3列目に座る乗員の膝は大きく持ち上がり、CX-8の居住性をミニバンに当てはめるとフリードやシエンタと同程度だが、SUVの3列目としては最も快適だ。CX-8は全長が4900mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2930mmと長く、室内長をタップリと確保できた。そのために3列目の足元空間も広い。

 国産SUV3列目シートランキングの2位はCR-Vだ。2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰めると、3列目の膝先には握りコブシ半分程度の余裕がある。CX-8のような広々感はないが、3列目に座った乗員の足が2列目の下側に収まりやすく、居住性を向上させる細かな工夫を施した。3列目にこれだけの快適性があれば、CR-Vのセールスポイントになり得る。

 3位はランドクルーザープラドだ。ランドクルーザーと違って、7人乗りの2列目シートには、前後のスライド機能が装着される。2列目の膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰めると、3列目には握りコブシ2つ分の余裕があり、キングサイズのランドクルーザーよりも快適だ。それでも床と座面の間隔が乏しく、腰が大きく落ち込んで膝は持ち上がる。

 4位はランドクルーザーだ。2列目シートにスライド機能が装着されず、多人数乗車時に2列目を前側に寄せて、3列目の足元空間を拡大する調節が行えない。身長170cmの乗員が乗車すると、2列目の膝先空間は握りコブシ2つ分、3列目は握りコブシ1つ少々だ。3列目は着座姿勢も窮屈になる。全長は約5mに達するが、空間効率は高くない。

ランドクルーザーの室内。床と座面の間隔が乏しく、腰が大きく落ち込んで膝は持ち上がる格好になる

 5位は新型アウトランダー(新型はPHEVの名称がつかない)だ。前述の測り方で2列目シートの膝先空間を握りコブシ1つ分に調節すると、3列目シートに大人の同乗者が座るのは難しい。

 身長170cmの大人が多人数乗車するには、2列目の乗員の膝先が1列目の背面に触れるまで(つまり膝先空間がゼロになるまで)、前側へスライドさせる必要がある。この状態でも、3列目に座る乗員の膝は、2列目の背面に触れてしまう。ただしアウトランダーは全長が4710mmに収まる。CR-Vほどではないが、全長が短い割に、3列目の足元空間に余裕を持たせた。

 6位はエクストレイルだ。2列目シートの膝先空間を握りコブシ1つ分に調節すると、3列目の膝先が2列目の背面に触れる。補助席だが、片道15分程度の距離なら、大人の多人数乗車も可能だ。

 7位はレクサスRX450hL。2列目シートを前寄りにスライドさせても、3列目に大人が座るのは難しい。頭上の空間も乏しく、ボディの後部を2列シート仕様に比べて110mm拡大したものの、無理に3列目シートを装着した印象がある。全長が5000mmに達する割に、3列目はかなり窮屈で空間効率は低い。

 以上のように、SUVに装着された3列目シートの居住性は、ボディサイズや車種の印象とは大幅に異なる。全長が5mのレクサスRX450hLが、3列目シートランキングでは最下位になった。3列目の活用を考えてSUVを購入する時は、居住性を確認したい。

 その時には、前述の居住性チェックと同様、まずは運転席に座って運転姿勢を調節する。次は2列目に移動して運転席の後ろ側に座り、スライド機能を使って膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰める。その後でさらに3列目の右側に座り、足元や頭上の空間、着座姿勢、座り心地などを確かめる。少々面倒だが、慎重に確認していただきたい。

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