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 3月20日に三重県の鈴鹿サーキットで開催されたENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第1戦『SUZUKA 5時間耐久レース』。決勝レースは81号車DAISHIN GT3 GT-R(大八木信行/青木孝行/藤波清斗/坂口夏月)が総合優勝を飾ったが、レース終盤に優勝争いとなるバトルを繰り広げ、気迫ある走りでサーキットを沸かせたのが16号車ポルシェセンター岡崎 911 GT3Rを駆る上村優太だ。

 26歳の上村は、2014年に鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS/現ホンダレーシングスクール鈴鹿)を主席で卒業しスカラシップを獲得すると、翌年からFIA-F4に参戦、そして2017年にはポルシェカレラカップ・ジャパンのスカラシップを獲得し数々の優勝を挙げるなど、速さをみせるドライバーだ。

 スーパー耐久には、2020年第2戦にポルシェセンター岡崎からスポット参戦を果たすとチームオーナーでもある永井宏明とともにいきなり優勝する活躍をみせ、レギュラー参戦となった2021年は2勝を挙げ、2022年も引き続き同チームから参戦する。

 そんなポルシェセンター岡崎に今シーズンから加入することになったのが、上村が「憧れの存在」と称する2007年のスーパーGT GT500チャンピオンである伊藤大輔だ。伊藤も上村を「心強い存在」だと語るように、チームの結束力は強い。

 そして2022年のスーパー耐久開幕戦となった今回のレースで、ポルシェセンター岡崎GT3Rは走り出しから好調さをみせていた。予選日午前のフリー走行をトップタイムで終えると、午後の予選では永井と上村のアタックによりポールポジションを獲得する。

ポールポジションを獲得した永井宏明/上村優太/伊藤大輔(ポルシェセンター岡崎 911 GT3R)
ポールポジションを獲得した永井宏明/上村優太/伊藤大輔(ポルシェセンター岡崎 911 GT3R)

 迎えた決勝ではスタートから永井がトップ争いを繰り広げ、レース残り1時間となる100周目には伊藤がトップをキープしたまま最後のピットイン、上村が首位のままレースに復帰する。しかし、その背後に猛烈な勢いで迫ってきたのが、すでに最後のピットを終えているDAISHIN GT-Rを駆る2020年スーパーGT GT300チャンピオンの藤波清斗だ。

 藤波はファステストラップを更新する走りで上村に接近するが、オーバーテイクするまでには至らない。しかし、105周目の逆バンクで快調にトップを走行していた上村の目前で他クラスのマシン同士が接触してしまい、上村はその影響を受けペースダウン、その隙に藤波が先頭に立つことになるが、ここから今回のレースのハイライトともいえる走りを上村が繰り広げる。

 上村は「ドライバーチェンジを行うまでは2番手のDAISHIN GT-Rに30秒くらいマージンがありましたが、僕がコースインしてからは追い抜かれてしまいました」と最終スティントを振り返った。

「(DAISHIN GT-Rに)追い抜かれた後は『何が何でも追い抜くぞ!』という気持ちで全力で走りました。とにかく一番になりたかったですし、優勝することしか頭になかったです」と続けた上村。

 その言葉どおり、上村は2番手に後退してもDAISHIN GT-Rに食らいつき、NISSINブレーキヘアピンの進入でバックマーカーを一気にかわすなど気迫あるドライビングをみせ、数周にわたってテール・トゥ・ノーズのバトルを繰り広げる。だが、GT300王者藤波の巧みな走りとストレートスピードに勝るGT-Rを前に、なかなかオーバーテイクすることができない。

DAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3Rのトップ争い
DAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3Rのトップ争い
DAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3Rのトップ争い
DAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3Rのトップ争い

 しかし迎えた120周目、日立Astemoシケインの立ち上がりでGT-Rの加速が鈍った隙を見逃さず「立ち上がりでうまくあわせ込むことができた」上村がホームストレートで横に並びかける。そのままサイド・バイ・サイドで1コーナーに進入した両マシンだが、2コーナーでインを取った上村がついにトップの座を奪還する。

「藤波選手がクリーンにラインを残してくれたので追い抜くことができました。ですが、GT300チャンピオンでもある藤波選手も、僕に追い抜かれた後も同じようなラップタイムを刻んでいたので、その後も全力で走行を続けました」

 そんな全力な走りをみせる上村は徐々にDAISHIN GT-Rを引き離し、トップ争いはこれで決着かと思われた。しかし、その直後に右フロントが大破し、ボンネットが開いてしまったポルシェセンター岡崎GT3Rの姿が飛び込んでくる。

 ステアリングを握っていた上村は「ヘアピンの立ち上がりでST-5クラスの車両とぶつかってしまいました。速度差もあったので、その影響でボンネットが開いてしまい、そのままリタイアとなってしまいました」と状況を語った。

「僕らもレースをしていますが、他クラスの車両もレースをしているので、どちらが悪いということはないと思います。ですが、少し動きが予測できなかったのでぶつかってしまいました」

フロントにダメージを負ってしまい、ボンネットが開いてしまったポルシェセンター岡崎 911 GT3R
フロントにダメージを負ってしまい、ボンネットが開いてしまったポルシェセンター岡崎 911 GT3R

 この接触でポルシェセンター岡崎GT3Rはトップを奪還しながらも残り16分というところでピットに戻りリタイア、さらにレース後にはドライビングマナー違反として競技結果に対して40秒が加算される結果で開幕戦を終えることになった。

 上村は「今日は、ただ暴れただけになってしまいました」とレース後に悔しさをみせた。

「本当に……とにかく勝ちたかったです。永井選手も最初のスティントで後続を抑えてくれましたし、今年は僕の憧れである伊藤大輔選手と組むことになったので、僕のなかに『いつも以上にやったるぞ!』という気持ちがありました」

「ですが、今回はその気持ちが出すぎてしまったのだと思います。もう少し落ち着き、気持ちを切り替えて次のレースも頑張りたいと思います」

 サーキットを沸かせた最終スティントでのクリーンで熱いバトルに、レース後には「良い走りだった」と上村に声をかける関係者の姿もあった。今回は優勝目前で悔しい結果となってしまったが、記憶に残る走りを披露した上村。持ち前の熱い走りに冷静さをプラスした次戦の走りに期待したい。

2022スーパー耐久第1戦鈴鹿 上村優太(ポルシェセンター岡崎 911 GT3R)
2022スーパー耐久第1戦鈴鹿 上村優太(ポルシェセンター岡崎 911 GT3R)
DAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3Rのトップ争い
DAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3Rのトップ争い
バックマーカーをかわしながらトップを争うDAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3R
バックマーカーをかわしながらトップを争うDAISHIN GT3 GT-Rとポルシェセンター岡崎 911 GT3R