三菱ふそうトラック・バスのeキャンターは、2017年に電気小型トラックの量産モデルとして世界に先駆け発売を開始。現在まで世界累計販売台数は約350台と少量ながら総走行距離は450万km以上の実績がある。
こうした実績で培われた技術とノウハウを投入する、eキャンター次世代モデルの試作車が3月15日に三菱ふそう喜連川研究所でお披露目された。
まだ試験段階なため詳細は秘匿とされたが、次世代モデルのeキャンターは何が変わるのか? 今わかっていることをお伝えしよう。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
現行eキャンターの概要
三菱ふそうの電気小型トラックへの開発は10年以上前から行なわれている。EVトラックの試作車「キャンターE-CELL」を2010年に発表。13年には同・第二世代を投入して日本ではNEXCOなどで実用供試試験を行なってきた。
現行eキャンターはその第三世代にあたる初の量産モデルで、ディーゼルエンジンのキャンターを改造ベースとし、既存FR車と同じようにプロペラシャフトを介し後輪を駆動させる。
電気自動車はエンジンがなく多段トランスミッションも不要となるため、既存のレイアウトに囚われない比較的自由な設計が可能だが、こうした改造ベースでは嵩張るバッテリーをどう搭載するかなどレイアウト上の自由度は限定される。
そのいっぽう既存コンポーネントを利用することで、開発費を低く抑えることができ、開発のリードタイムも短縮できるメリットがある。
日本仕様の現行eキャンターではワイドキャブ/ロングボディ車(フレーム組幅750mm/ホイールベース3400mm)という大き目の車型をベースにして、バッテリー総容量81kWhという大容量の駆動用バッテリーが搭載されている。
同車は大容量化することで架装の汎用性を確保しつつも、航続距離100kmを実現する。現在までにドライバンのほか、電力消費が大きいコンビニ配送用の冷蔵車、塵芥車、ウイング車などの各種架装を施したeキャンターもユーザーに納入されている。
第四世代となる次期eキャンターでは何が変わる?
今回、3月15日に公開されたのは次期eキャンターの試作車。まだ試験中ということもありキャブはカモフラージュのラッピングが施され、車両スペックなども未公表。またコンポーネントなどの詳細のわかる撮影もNGだった。
ただ、ラッピングの上から見た形状やドア下部に配置されたサイドターンランプなどから、2020年にフェイスリフトが行なわれた新型キャンターがベース車だというのがわかる。
新型キャンターとのキャブ外観上の違いは確認できなかったが、あるいは現行eキャンターに採用されているグリルのライトを踏襲し差別化を図るのかもしれない。
いっぽう内装は(これも撮影NG)だが、新型キャンター・現行eキャンターとも大きく異なる専用(?)の内装であることが窺い知れた。助手席側ピラー部には左折時などで巻き込み防止警報を行なうASGA(アクティブ・サイドガード・アシスト)のランプも搭載されており、先進安全装備の拡充も行なわれることになりそうだ。
現行eキャンターは、ホイールベース間もバッテリー搭載スペースになっているが、試作車のバッテリーは、大型化したバッテリーパックがフレーム下部にすべて搭載されており、架装性や衝突時の安全性も向上するはず。
これにあわせプロペラシャフトを排し、リアアクスル部にモーター・インバーターなどを組み込んだeアクスル(電動アクスル)が初採用されている。
eアクスルを採用することで、バッテリーが収まるフレーム下部のスペースが増大、ワイドキャブ/ロングボディのE尺車一択の現行型に対し、次期モデルではより小柄な標準キャブやショートボディ、反対にワイド/超ロングボディといった車型も拡充される見込みだ。
また次期モデルが搭載するバッテリーパックの容量は明かにされなかったが、車型や搭載する(できる)パック数に応じ、航続距離100km未満~100km超のものまで選択できるようになるという。
なお今回公開された試作車は、標準キャブ/ショートボディ、ワイド/ロングボディ、ワイド/超ロングボディの3タイプが用意されており、搭載するバッテリーパックは前者から順番に1基、2基、3基となっていた。
現行eキャンターは大口(フリート)ユーザー向けにリース販売されているが、次期モデルの販売方法は、車両購入やバッテリーのみをリースする方法も検討されているという。
発売時期はまだ先の話とのことだが、ラインナップの拡充を含め、選択肢を広げた次期eキャンターが販売されることになれば、三菱ふそうの電動化はさらに弾みをつけることになりそうだ。
なお、三菱ふそうを含めたダイムラー・トラックグループは2039年までに日本・欧州・北米の3市場で新型車のすべてをカーボンニュートラル化する目標を掲げている。
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