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 現行型WRX S4には、先代モデルに設定のあったメーカーオプションとなる大型リアウイングが設定されていない。その理由をスバルの開発者に聞いてみると、「先代モデルのS4では販売数が全体の1割に満たず、絶対的に少なかったからです」とのこと。

 現在、BRZにはSTI製のスワンネックタイプのGTウイングがオプション設定されているが、こういったエアロパーツを装着することで、スポーツモデルにとってどのくらいメリットがあり、またデメリットがあるのか。市販モデルにとってのエアロパーツの功罪について国沢光宏氏が斬る!!

文/国沢光宏写真/中島仁菜、ベストカー編集部、スバル

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■コーナリングスピードや安定性ではリアウイングありに軍配

先代WRX STIのリアウイングは先代S4にもメーカーオプション設定されていた(ただし、2.0GT-Sアイサイトグレードのみ)。歴代のWRX STIといえばマストアイテムだが……

 スポーツモデルといえばリアウイングである! 大きければ大きいほどよい、という脳天気オヤジです。とはいえ、あまり大きいと車検合格とならない。合法ギリギリのサイズでもけっこう存在感ある。

 何を隠そう、スポーツモデルを買ったら私は必ずリアウイングをつけます。先代MIRAIだって合法ギリギリのサイズでGTウイングつけたし、現在持っているリーフe+にも車検をクリアできる最大サイズのリアウイングをつけた。先代WRX S4の場合、瞬時も迷うことなくオプションのWRX STI形状となるリアウイングつけました。

 なぜリアウイングなのか、といえば理由などない(笑)。先代MIRAIで電気自動車レースに出ていたのだけれど、お試しにGTウイングつけた状態で空力抵抗を計測したら、ないほうが最高速は伸びると判明。実際、高速コースの富士スピードウェイで外してみたこともある。

 ただ、コーナリングスピードや安定性という点からすれば明らかに有利。富士スピードウェイの100Rや筑波サーキットの最終コーナーなども、リアウイングをつけた状態のほうが走りやすかった。ということで総合的に評価すると、車速160km/hくらいまでだったとしても、その効果はあると思う。

■アラフォーのドリフト好きはリアウイング嫌い

先代WRX S4とマイチェン後のWRX STIにメーカーオプション設定された控えめなトランクスポイラー。こちらを好んだユーザーも多かったという

 じゃあ、10万円出してつける価値があるかとなれば、もはや気分の問題かもしれない。何と新型WRX S4はリアウイングのオプションなし! なぜかとスバル側の開発関係者に聞いたら、「先代の装着率は10%くらいしかなかったので用意しませんでした」。

 何と! そこまで人気ないとは! クルマ好きにとって今やリアウイングは魅力的なアイテムじゃないってことか? いろいろ調べてみたら年代や趣味性の違いで価値観が違うようなのだった。リアウイングをつけない人の典型例が40歳前後のドリフト好き。聞くと、「リアウイング嫌い!」に近い。

 考えてみたらドリフトに出場している車両って基本的にリアウイングなし。速度域が低いのに加え、リアウイングがあるとテール流れ過ぎた時に外側フェンスに引っかかってしまうためだという。ドリフトの車両を見慣れると、リアウイングって重ったるしく感じちゃうようだ。

■標準ボディで空力性能はもはや充分!?

 そもそも真横になって走っていたらリアウイングあっても風が当たらず効きません(笑)。そんなクルマをかっこいいと考えている人たちからすると、リアウイングなんかないほうがよいということになる。このタイプの皆さんがスポーツモデルを買う層の中心になっているのだろう。

 その下の年齢層もリアウイングに対する思い入れは薄い。前述のとおり、客観的に評価すると車速160km/h以下の効き目が弱いし、そもそも公道のコーナーでダウンフォースを効かせて曲がるなんてありえない。高速道路だって160km/h出すことなど乱暴過ぎる。高価なリアウイング付けたって意味ないということらしい。これまた正論だと思う。

 昨今のクルマは空力を追求しているため、高速域でリアが浮くような特性にならない。むしろ標準のままのほうがバランスがいいということ。となればリアウイングつけなくていいかも。

■160km/h以上の高速域ではメリットあり!

マクラーレンの市販モデルではこのようにリアウイングがせり上がってくる

 一方、武闘派のクルマを見ると新車からリアウイングがついている。例えばマクラーレン。一定の速度域になるとリアウイングが一段立ち上がる。これで160km/h以上出した時の安定性ははっきり違うという。

 クルマというのは微妙なバランスに成り立っており、160km/hで30kgくらいのダウンフォースかかると、体感できるほど安定感が増す。横風が吹いている時などはさらに効果的。最高速が200km/hを超えるようなクルマを見ると、基本的にリアはダウンフォースをつけるような形状をしていると思う。200km/hになったら明確に必要だ。

 マクラーレンの場合、一定以上のブレーキをかけるともう一段立ち上がる。飛行機が着陸した時のグランドスポイラーのような役割を果たす。ダウンフォースというより空気抵抗だ。これも効く!

 私は電気自動車レースのため、先代MIRAIにブレーキを踏むと直立するリアウイングをつけた。富士スピードウェイのストレートは180km/hくらい出るのだけれど、ブレーキ踏んだ瞬間、「ドン!」という衝撃を感じるくらい大きな空気抵抗になっている。ちなみに旅客機の着陸速度って260km/hくらい。この速度でエアブレーキ掛けたらきっちり効くということです。

■最も理にかなっているのは可動式ウイング

bZ4Xのリアビュー。左右分割型のリアウイングが装着されているのがわかる

 個人的には可動式ウイングが最も理にかなっていると考える。空気抵抗の走行安定性を両立できるからだ、250km/h以上出るようなクルマには必須装備だと信じて疑わない。それなら遅いクルマならリアウイングなど不要か? これまたそうじゃないからクルマって面白い。

 電気自動車のbZ4Xを見たら、リアにウサギの耳のような左右別体のリアウイングがついてます。はたまたリアハッチの最後部にダックテール形状のリアスポイラーがつく。bZ4Xだけかと思いきや、ボルボの電気自動車C40リチャージもまったく同じような形状。

 理由を聞いたら、「50km/hくらいから空気抵抗を減らしてくれるんです」。何と! 走行抵抗やタイヤの転がり抵抗を極限まで減らした電気自動車は50km/hから空力が効いてくるのだった。100km/h巡行にもなると「激しく効きます!」。

 機会あったらbZ4XやボルボC40のリア周りを見ていただきたい。立派なウイングやスポイラーが標準でついている。今後も空気抵抗を減らすべく、リアウイングやスポイラーは採用されるということ。とはいえ、リアウイング大好き連盟会員の私としては、今後もデカいウイングをつけていきたい。

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