全日本ロードレース選手権ST600でチャンピオンを2度獲得し、昨年は、ST1000クラスにステップアップ。初めての1000ccながら初戦から速さを見せ、最終戦オートポリスで優勝し、ヤマハファクトリー入りを引き寄せた岡本裕生。YAMAHA FACTORY RACING TEAM入りを果たし、誰もが憧れるファクトリーチームのシートという最高の環境で走るチャンスを手に入れて挑む2022年シーズンに向けた心境を聞いた。
3月上旬に行われた鈴鹿ファン感謝デーが岡本にとって、初めてYAMAHA FACTORY RACING TEAMの一員として迎える公の場だった。さぞかしJSB1000仕様のヤマハYZF-R1で走り込んでいるかと思いきや、袋井のテストコースで一度走っただけ。それも極寒だったという。その表情からは、絶対的に走ることができていない“不安”を感じることができた。
「ファクトリーチームに入れたことは、もちろんうれしいですね。恵まれている環境にいられますから。その反面、勝たなくてはいけないという義務もあるので、正直いうと、すごくプレッシャーもあります。マシン、タイヤ、チームとすべてが変わったので、まだまだ慣れていかなければならないことが多いですが、新しい発見も多いので、成長していける実感があります」
「常にライダーがやりやすいように準備してくれているのがわかるので、いい走りをして結果で恩返しをしたいという気持ちに自然にさせてくれます」
ファン感謝デーの翌日に行われた2輪合同テストは、午前中は、路面が濡れていてキャンセル。午後は走ることができたものの、2度の赤旗、路面コンディションもよくなく、確認する程度しか走れなかった。
「ようやく本格的にサーキットを走ることができた感じですが、まだまだマシンもタイヤもフィーリングをつかんだ程度です。そのなかで感じたのは、JSB1000は、もっと身体を動かして乗らないといけないということでした。ST1000より体力も必要ですし、ハードなレースになるでしょう」
フィジカル面では、いつもより長かった今回のシーズンオフに、しっかりトレーニングできたという。岡本は、一緒にトレーニングをしているライダーの中でもランニングがずば抜けており、優れた持久力を持っている。
「ランニングのスタミナは、自信がありますけれど、バイクをライディングするスタミナは、また違うので、必要な筋力などのバランスをトレーナーと相談しながら身体作りをしています」
昨年、ST600からST1000にスイッチしたが、早い段階で乗りこなすことができていた。今回は、ST1000からJSB1000にスイッチするが、どちらが難しいのだろうか。
「ST600からST1000の方が、すんなりスイッチできると思います。僕の場合は、J-GP2クラスをほぼ経験していなかったので、固いスリックタイヤを使ったことがありませんでした。今年、初めてブリヂストンのスリックタイヤを履かせていただくのですが、すごく新鮮な気持ちです。慣れるまで時間がかかりそうですが、すぐに事前テスト、開幕戦となるので、そうも言っていられません。事前テストからペースを上げていきたいですね」
岡本のすぐ隣には、偉大なチャンピオンである中須賀克行がいる。ヤマハは、中須賀、野左根航汰に次ぐ人材として岡本に白羽の矢を立てた。
中須賀も「若いライダーが入ってきたことは、いい刺激になる。お互い切磋琢磨してレースを盛り上げていきたい」とコメント。岡本にとって、中須賀という大きな壁を越えていくことが、当面の目標となるのは間違いない。その成長に期待したいところだ。