景気の動向、技術の進歩、世の中の流行など、クルマを取り巻く環境が目まぐるしく変わっていくなかで、一時はトレンドワードだったにも関わらず姿を消してしまったクルマ用語は多々ある。それらは、当時の流行を象徴したもの、技術の進歩とともに不必要となってしまった機能などさまざまだ。
そこで今回は、一昔前は当たり前のように使っていた用語だったのに、現代の若者にとっては意味不明!? と言われかねない死語的なクルマ用語を振り返ってみよう。
文/入江凱、写真/トヨタ、ホンダ、日産、三菱、スバル、Mercedes-Benz、FavCars.com、NetCarShow.com、写真AC
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技術の進歩とともに姿を消した「メカニズム用語」
■キンコン(速度警告音装置)
今ではほとんど見ることがなくなった装備のひとつが速度警告音装置、通称「キンコン」だ。これは普通車で100km/h以上、軽自動車で80km/h以上の速度になると「キンコン、 キンコン 」と車内に警告音を発生させるというもの。
1974年以降、1986年に撤廃されるまで車両の保安基準として装着が義務付けられていた。もともと は当時の車両の高速走行性能が成熟していなかったことや、警察による速度取り締まりの関係で義務付けられていたと考えられている。
後の法規制廃止の詳細は明らかにされていないが、海外自動車メーカーから日本独自の保安基準であり、非関税障壁になっているとの反発を受けたことが大きな要因とも言われている。
■オーバードライブ
少し前までAT車のシフトレバー脇にはロックを解除するボタンとは別にオーバードライブのオン/オフを切り替えるスイッチが装備されている車両があった。
オーバードライブとは簡単に言えば巡行時に高いギアを使用することで速度を保ちながら低い回転数で走行する状態のことで、通常時はオンの状態になっている。これをオフにすることで低いギアのみを使用、エンブレの利きが良くなり、鋭い加速ができる状態になる。
主に長い下り坂や高速道路など、フットブレーキを多用することが適さない場合や、素早い加速が求められる状況で使用する機能となる。
MT車とは異なり、任意のギアにチェンジできないAT車に採用されていた機能だが、日本で主流となったCVTにはそもそもギアがない。さらに、シフトレバーを左右に倒してマニュアル操作するMシフトや、パドルシフトといった別の形で変速比をコントロールできる装備が普及したこともあってオーバードライブスイッチは静かに姿を消していった。
■キャブレター
ガソリンエンジンは霧状にしたガソリンと空気を混ぜ合わせた混合気に着火して爆発させなければならない。これを電気やコンピュータを使用せず、機械的に行う装置がキャブレター(気化器)だ。
構造がシンプルなので自分で燃料の濃さなどを自分で調節できたが、一度決めた設定を走行中に変更することができなかった。
そして、自動車技術の進歩とともに、状況に合わせてコンピュータが適切に濃度を調整した混合気を噴射するインジェクションが主流となり、キャブレターは姿を消すこととなった。
■チョーク
前述のキャブレターの弱点は、気温や気圧といった環境の変化に弱く、冬場などはエンジンがかかりにくくなることだ。そんな時に使用していたのがチョーク(チョークレバー、チョークノブ)。
チョークを引くとキャブレターの中の弁が閉まり、キャブレターの取り込む空気の量が少なくなる。すると燃料が濃くなり、着火しやすくなることで冬場でもエンジン始動がしやすくなるというしくみだ。
70年代半ばからはキャブレター搭載車でもドライバーが手動で操作する必要のないオートチョークが採用されはじめ、次第にチョークを搭載しているクルマは減っていった。インジェクションの普及とともに、チョークは完全に姿を消すこととなった。
今でもけっこう役には立つが…「ドライビングテクニック用語」
■ダブルクラッチ
現代のMT車にはシフトチェンジを行う際に変速前後のギアの回転数を同調させ、スムーズなシフトチェンジを行うためのシンクロ機構というものが搭載されている。しかし、シンクロ機構が今ほどの性能を持っていなかった時代には、スムーズなシフトチェンジを行うためには、ドライバーがこの同調作業を補う必要があった。
具体的にはシフトチェンジのタイミングでクラッチを切り、ギアをニュートラルに入れてクラッチを繋ぐ。ニュートラルのまま適度にアクセルを踏み回転数を上げてもう一度クラッチを切ってギアを入れたら再度クラッチ繋ぐというもの。
シフトチェンジの間にギアをニュートラルにして回転数を調整すると言ったほうがわかりやすいかもしれない。
MT車が激減し、シンクロ機構の性能が向上していくなかで耳にする機会も減ったテクニックだが、シンクロ機構への負荷を減らす効果が期待でき、MT車に乗る人は知っておいて損はないテクニックだ。
■逆ハン(カウンターステア)
右に曲がりたければハンドルも右に切る。当然のことのように思えるが、高速でコーナーに進入する場合、遠心力に後輪の摩擦力が負けてしまい、リアが旋回円の外側に流れ(オーバーステア)、スピンしてしまう危険性がある。
逆ハンとは、このオーバーステアを防ぐために通常のコーナーリングとは逆の方向にハンドルを切りながら曲がることを指す。頭文字Dの世界では当然のワードではあるが、峠族なども死語となりつつある現在においては、滅多に耳にしない言葉となってしまっている。
ただし、雪道といった路面の摩擦力が低下している状況で後輪が流れ始めた際にも使えるテクニックだ。
クルマが憧れの存在だった時代があった!「トレンド用語」
■ハイソカー
バブル経済のど真ん中である1980年代半ばから生まれたブームで上流階級のクルマという意味の和製英語HighSocietyCarを略したもの。移動手段としてのクルマが普及し、上向きな経済のなかでラグジュアリーな雰囲気を持つクルマの人気が高まった。
面白いのはハイソカーの明確な定義があるわけではなく、強いて言えばハイソカーだと感じられるイメージを持っていることが条件だったということ。ただし、手の届かない本当の意味での高級車ではなく、努力すればいつかは手に入れられるクルマがハイソカーブームを牽引した。なかでも主役となったのは、10~20系のソアラや60~80系マークIIなど。
しかし、バブル景気の象徴とも言えるハイソカーブームは長くは続かず、バブル経済の崩壊とともにハイソカーの存在は忘れ去られていった。
■RV(Recreational Vehicle)
RVとはRecreationalVehicleの略で、悪路走破性や居住性に優れ、レジャー用途に適したクルマ全般を指す用語だ。
80年代からRVの人気は高まり、90年前後には大ブームを巻き起こすこととなった。本来は、SUV 、ミニバンやステーションワゴンもRVに分類されるが、この時のブームの牽引役となったのはクロカン系のモデルだった。代表車種としては1991年に発売され爆発的なヒットを記録した2代目パジェロや、1989年に発売された2代目ハイラックス サーフなどが挙げられる。
しかし、燃費が悪く、趣味性の高いクロカンの人気は次第に低迷。そのかわり、実用性に富むSUVやクロスオーバーSUVが台頭し、RVという用語そのものが忘れ去られていった……。
今となったらちょい恥ずかしい…「ブランド用語」
■ベーエムベー
若者の多くは知らないだろうが、BMWが「ベーエムベー」や「ベンベ」「ベーンヴェー」と呼ばれていた時代があった。「ビーエム」という英語読みもあったものの、ドイツ語読みの発音に近いほうがかっこいいというイメージが強く、あえて「ベーエムベー」や「ベンベ」「ベーンヴェー」という用語を使う”ヤンエグ”が続出した。
ちなみに、ヤンエグはヤングエグゼクティブの略で、青年実業家や起業家など、若くして富を成した人のことを意味する用語。こちちらも今となっては死語となっている……。
■アーマーゲー
この用語は、メルセデス・ベンツのチューニングブランドであるAMGのドイツ語読み……ではない。正しいドイツ語読みは「アーエムゲー」。こちらもヤンエグの定番用語のひとつだった。
この間違った「アーマーゲー」という呼び方が広まった理由の一説としては、人気漫画の影響とも言われているが、今では国際的に英語読みの「エーエムジー」が定着している。
バブル期のAMGモデルは、派手なエアロパーツを装備していたこともあり、いわゆる「ワル」のイメージが先行することもあった。しかし、メルセデス・ベンツの一部門となった近年のモデルはすっかり垢抜けたデザインとなっており、「アーエムゲー」と呼ばれていた頃の面影はない。
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投稿 知ってたらオジサン確定!? 若者にとっては死語のクルマ用語10選 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。