抜けるような青空の下、とても快適なコンディションで開催されたNTTインディカー・シリーズ第2戦XPEL375は、最終ラップの最終コーナーでの大逆転によって2017、2019年チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が今季初勝利を飾った。
2位に敗れたのは開幕戦ウイナーのスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)。インディカー参戦2年目の28歳は248周のレースで最多の186周をリードしたが、最後の最後でトラフィックに追いついたことによって開幕2連勝という大魚を逃すこととなった。
10シーズンで20勝を挙げてきている先輩チームメイトは千載一遇のチャンスを見逃さなかった。アウト側にマシンを振ったニューガーデンは0.0669秒先行してゴールラインを横切った。彼のリードラップは最終ラップを含めた3周だけだった。
予選7番手だったニューガーデンは、56周目と1回目のピットストップをやや早目に行うと新品タイヤのグリップを活かして一気にポジションアップ。スタート直後からトップを走り続けていたマクラフランのすぐ後に第2スティントからつけて走ることとなった。
レースは中盤以降にヒートアップし、マクラフランとニューガーデンのチームメイトであるウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、オランダ出身の若手で昨年1勝しているリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、タイトルを6度獲得し、テキサスでも5勝しいているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、さらにはF1出身で昨年2勝のマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)らがトップ争いに加わり、目まぐるしく順位は入れ替えられた。
ニューガーデンは今日の勝利に大興奮だった。
「ゴールラインに飛び込む前から叫んでいたよ。そんなこと、これまでになかった。最終ラップの最終コーナーで逆転するなんて経験したことのない勝ち方だった。あのラインは昨年までだったら走れなかった。今年はダウンフォースが増やされていた。それでトライしたが、実は成功する確信はなかったんだ」
「残り2ラップとなった時、“今日はもう無理だ。2位でのゴールを受け入れよう”と考えた。ところが、最終ラップのターン3で急に考えが変わったんだ。“勝つために何かをしよう”と。それで外側のラインに突っ込んで行った。リスクを冒してみよう。そう瞬間的に判断した。“壁にぶつかったら、それは自分の責任だ”とね」
この勝利はチーム・ペンスキーにとっての通算600勝目となった。昨年のミド・オハイオでニューガーデンはチーム・ペンスキーの創立50周年の週末に優勝。“持っている”男は昨年惜しくも3回目のタイトルを逃すランキング2位となったことと、若いチームメイトの急激な台頭にも刺激を受け、「今年こそ!」という思いを強くしている。
まさかの負け方を喫し、マクラフランは悔しがっていた。
「リスクを承知でアウトに行く手はあった。でも、そうしていたら自分はクラッシュし、ジョセフ(・ニューガーデン)を巻き込んでいたかもしれない」と彼は逆転シーンを振り返った。
「今日の自分達は、トラフィックでのハンドリングが序盤は良かったが、終盤はそうでもなかった。今日の敗戦から多くを学んで、さらにレベルを上げていくだけだ」とポイントリーダーの座を守った彼は前を向いた。
チーム・ペンスキーは1-2フィニッシュ。そして、チーム・ペンスキーとシボレーはともに開幕2連勝を飾った。
3位はエリクソン。オーバルで初めて表彰台に上った。
4位はパワー。5位はディクソン。そして、6位には元ストックカーチャンピオンで去年からインディカーに出場。今年からオーバルでも走り始めたジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)。
7位は昨年のシリーズ・チャンピオン=アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)だった。トップ7をペンスキーとガナッシ、インディカーのふたつの強豪チームが独占した。
まだ2戦が終わっただけだが、ポイントスタンディングはトップが優勝と2位のマクラフラン(97点)。2番手がパワー(69点)、3番手がパロウ(67点)。ニューガーデンは今日の優勝で4番手につけることとなった(65点)。5番手はエリクソン(58点)で、6番手はディクソン(55点)とランキングのトップ6までをペンスキーとガナッシのドライバーたちが占めている。
佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は予選で3番手となり、レースでは1回目のピットストップ前にトップに浮上する好調ぶりだった。
しかし、そのピットでチームメイトのデイビッド・マルーカスのマシンが進路を妨害する形でストップしており、大幅タイムロスしてトップ争いから脱落。中団グループでの戦いで徐々に順位を挽回して行った琢磨だったが、ルーキーのデブリン・デフランチェスコ(アンドレッティ・スタインブレナー)がフラついて接触。ターン2の壁にヒットしてサスペンション破損。20位でのゴールとなった。
「優勝争いができるマシンになっていました。ダウンフォースを減らしたセッティングにして行って、スタート直後に2台にパスされても抜き返すことができました。最初のスティントはタイヤを労って、路面にタイヤラバーの乗って来るのを待っていました」
「マクラフランは燃料を使い切ってピットイン。ローゼンクヴィストはタイヤがなくなってフラついていたのでパスすることができ、1回目のピットを前にトップに立つことができました」
「しかし、チームメイトが私たちのピットをブロックする形で止まっていて作業に時間がかかってしまい優勝のチャンスを失ってしまいまいた。デイビッドは自分たちより2周後に入る予定いだったのに何のトラブルがあったのか緊急ピットイン」
「それは仕方ないと思いますが、トップ争いをしているチームメイトが入って来るのが見えていて無理にピットアウトさせたのは判断ミスだったと思います。15番手以降に下がって、そこから何とか上位に戻ってこようと走ってて、少しずつ挽回できていたんですが、ルーキーがアウト側に膨らんで来て接触。壁にヒットしてサスペンションが壊れ、修理して走りましたが20位という結果に終わりました」と琢磨は悔しがっていた。
彼の言った通りマシンの仕上がりはエントリー中ナンバーワンといっていい良さだった。
残念な結果となったが、移籍してからの2戦、チームの戦闘力の高さは知ることができた。ストリートはまずまずで、高速オーバルでは非常に高い戦闘力があると証明された。チームのエンジニアリングレベルもクルーたちのスキルや士気も高い。琢磨が初優勝したコース、ロングビーチでの次戦に期待したい。