トヨタGAZOO Racingのテクニカル・ディレクター、パスカル・バセロンによると、WEC世界耐久選手権第1戦セブリング1000マイルレースでクラッシュを喫した7号車GR010ハイブリッドは、第2戦スパ・フランコルシャン戦に向け「おそらく」モノコック交換をすることになるという。
ホセ・マリア・ロペスがターン14のタイヤバリアに高速でクラッシュしたことにより、7号車のモノコックは「変形しすぎていて、再び使うことができない」とバセロンはSportscar365に対し語っている。
同時に、GR010ハイブリッドのクラッシャブル・ストラクチャーはロペスを無傷に保ち、サーキットのメディカルセンターでのチェックの後、ロペスはWEC決勝翌日に行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のセブリング12時間レースに出場している。
「クルマが損傷している。とくに、右フロントのタイヤ&ホイールによって、モノコックが損傷している」とバセロンは述べている。
「ホセは大きな衝撃を感じなかった。彼はクルマがとても安全だと感じた、と。それを聞けたのは良かった。クルマはそれほど酷くは損傷していないものの、タイヤ&ホイールがモノコックに押し込まれており、モノコックは変形しすぎていて、再び使うことができない」
この大クラッシュは、トラフィックのなか、ターン9手前でロペスがLMGTEアマクラスのマシンと接触し、コース右側のバリアでフロント部を損傷した後、ピットへと戻る際に生じたものだった。
数コーナーを抜けた後、彼はフロントを引きずったまま高速のターン14へ飛び込み、旋回も減速もできないまま、バリアへと突っ込んで2回目の事故を引き起こした。これにより、レースは即座に赤旗中断となった。
「クルマにそれほどダメージがなかったのは、印象的だった」とバセロンはターン9での最初のアクシデントについて語った。
「フロントエンドの交換のみを計画していた。ホセがコースへと復帰したとき、クルマは(フロント部分以外は)問題なさそうだった」
「ホセはなるべく速くピットに戻ろうとした……だが明らかに速すぎた。250km/hに達するとスプリッターのピラーが壊れ、それを失った。そして、フロントのダウンフォースがなくなった。これが、彼がクラッシュした理由だ」
■平川の走りに満足。BoPは「コメントできない」
バセロンはまた、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮が2位につけた8号車GR010ハイブリッドについては、「集中した」レースだったと語り、大きな問題はなかったと説明している。
8号車にとってイレギュラーだったのは、7号車のクラッシュによる赤旗の後、セーフティカーランでのレース再開時に緊急の燃料補給を行ったこと。これにより、一時708号車グリッケンハウス007 LMHに2番手の座を明け渡したが、グリッケンハウスがSC時の追い越しでペナルティを受けたこともあり、その後2番手を回復している。
「すべてクリーンで、フリープラクティスよりも少し良かったと思う」とバセロンは振り返った。
「大きな問題はなかった。適切なタイミングで、適切なタイヤ(スペック)を使用した。ピットストップのミスはない。我々は、できる限りの機会を利用した。チームの観点からすれば、良いレースだった」
バセロンはまた、ハイパーカーデビュー戦となった平川亮のパフォーマンスに、満足していると語っている。
「亮は非常に良いダブルスティントをした」とバセロン。
「彼は当初、スピードを上げるために数周を要した。安全にいくという面で、それは非常に良いことだった。彼のセカンドスティントは、とても良かった。タイヤのデグラデーションも非常に少なかった」
「彼は、とてもいい第一歩を踏み出したと思う」
アルピーヌ・エルフ・チームのノンハイブリッドLMP1車両であるアルピーヌA480・ギブソンが優勢を示して優勝した後、バセロンはハイパーカークラスのBoP(性能調整)についてはコメントしようとしなかった。
「我々の目標は、7号車では達成できなかったミスのないレースをすることだった、とは明白に言える」とバセロン。
「我々は8号車で集中したレースを戦えたと思うが、あとのことについてはコメントできない」
BoPについてさらにコメントするよう求められたバセロンは、こう答えている。
「(第2戦)スパに向けて何がされるべきかについては、私はコメントできない」
「ある時点において、1台の速いハイパーカーの存在を我々は見せられた。それだけだ」