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日本維新の会の鈴木宗男参院議員は20日、フェイスブックへの投稿で、自民党の高市政調会長が前日の記者会見で北方領土返還交渉をめぐり、「国としては四島返還をしっかりと進めることに変わりはないと考える」と述べたことについて、「認識は正しくない」などと苦言を呈した。

高市氏(官邸サイト)鈴木氏(参院サイト)

高市氏の記者会見では、北海道新聞(道新)の記者から、安倍元首相が昨年末、首相在任中のロシアとの返還交渉を振り返った道新の単独インタビューで「100点を狙って0点なら何の意味もない」と述べるなど、北方四島の返還から、2島返還を軸とした交渉に転換したことを事実上認めたと報じたことを尋ねられた。

これに対し、当該記事を読んだという高市氏は「安倍元総理はインタビューの中では2島という言葉は使っておられない」と、否定的な認識を示し、岸田政権も安倍政権時代の方針を踏まえて領土問題に対応していると強調。さらに、記者から高市氏個人の見解を重ねて尋ねられると、「日本国としては四島返還をしっかりと進めることに変わりはないと考えるが、現実的な選択肢として、1つずつその地(北方領土)に日本人の方々が渡って生活できる実態を積み上げることも一つの方法だと考える」との認識を述べた。

このやりとりを報じた道新を読んだ鈴木氏は、フェイスブックの投稿で「議院内閣制は与党が政権を作り、与党と政府は一体である。この基本からして高市氏の認識は正しくない」と一喝。「北方領土について政府は『四島返還』という表現は使っていない」「さまざまな諸合意があり、今、交渉のテーブルに残っているのは2018年11月14日の安倍―プーチン両首脳によるシンガポール合意である」などと、これまでの返還交渉の経緯について、自らの認識を披露。

その上で、高市氏が、安倍元首相がインタビューの中で「2島という言葉は使っていない」と述べたことについて、鈴木氏は「インタビューの中身をよく読んでいないのか。それとも高市氏自身の一方的価値観での思い込みでの話なのか。この点、安倍元総理に直接確認することをお勧めしたい」と皮肉を交えながら高市氏に苦言。

さらに鈴木氏は「外交は積み重ねであり、相手がある。日本の主張だけが一方的に通る外交はない。逆に相手の一方的主張でまとまる外交もない」「北方領土問題解決と日露平和条約は、安倍総理が決断した『シンガポール合意』で進めるしかない」と持論を述べた。

自民党の中でも保守派に属する高市氏は、安倍首相が100点満点に例えた「四島返還」に強いこだわりがあるとみられるが、ロシア側との独自の人脈を持ち、領土交渉の裏事情に精通している鈴木氏としては、「与党の政策責任者が正しくない発言をしてきており、そのことが北方領土問題解決を遅らせてきた」(鈴木氏投稿)という苛立ちを募らせたようだ。