<p>ウクライナ発祥の郷土料理「ボルシチ」 元・公邸料理人が振舞う本場の味</p><p>ウクライナ発祥の郷土料理「ボルシチ」 元・公邸料理人が振舞う本場の味 東京・渋谷のレストラン「ベトラーヴ ビストロ ジロー」。駐ウクライナ日本大使の元公邸料理人、飯島二郎さん(45)が「現地で食べた味に近いものを出したい」とこだわりのボルシチを提供する。</p><p>熱々の真っ赤なスープが美しいボルシチ。ロシア料理の代表格と思われがちだが、実はウクライナ発祥とされる郷土料理だ。ニンジンやタマネギ、肉などを煮込み、ビーツで赤…</p><p>熱々の真っ赤なスープが美しいボルシチ。ロシア料理の代表格と思われがちだが、実はウクライナ発祥とされる郷土料理だ。ニンジンやタマネギ、肉などを煮込み、ビーツで赤色に仕上げたものが一般的だが、シンプルな煮込みスープだけに、地域によってさまざまな調理法が存在するという。発祥の地の味を確かめに、本場仕込みのシェフが腕を振るうレストランを訪ねた。 住宅街の一角に青と黄色のウクライナ国旗が映える。東京・渋谷のレストラン「ベトラーヴ ビストロ ジロー」。駐ウクライナ日本大使の元公邸料理人、飯島二郎さん(45)が「現地で食べた味に近いものを出したい」とこだわりのボルシチを提供する。 ボルシチの具材は地域によって異なり、数十種類以上のバリエーションがあるともいわれる。飯島さんによると、ウクライナのボルシチは、キャベツやニンジン、タマネギ、肉などを使うことが多い。同店のウクライナ風ボルシチも、これらの野菜と牛肉を炒めてトマトペーストと煮込む。 駐ウクライナ日本大使の公邸料理人を務めた経験がある飯島二郎さん(寺河内美奈撮影) 具材を細かく切るのも特徴で、「日本では大きな具材がゴロゴロ入っているボルシチもあるが、ウクライナでは見たことなかった」と飯島さん。細かく切り、炒めてから煮込むことで、野菜のうまみをスープに溶かす。ビーツだけを最後に入れると、スープがきれいな深紅色に仕上がり、食感も楽しめる。 食べるときには、スープにかかった「スメタナ」という発酵乳製品を混ぜる。日本で出されているボルシチではサワークリームを使うことが多いが、本場ではスメタナ。濃厚なヨーグルトに近い味でウクライナのボルシチには欠かせない。 ただ、日本では入手が難しく、飯島さんは、できるだけ本場の味に近づけたオリジナルのスメタナを自作し、ボルシチと合わせた。 住宅街に青と黄色が映える「ベトラーヴ ビストロ ジロー」(寺河内美奈撮影) 同店ではウクライナのボルシチを出しているが、単純に模倣しているわけではない。もともとフランス料理を勉強していた飯島さんの経験を生かし、スープには現地では使われないフランス料理の基本、鶏ガラブイヨンを使用。具材など郷土料理のベースは守りながら、より先鋭的に自分がおいしいと思うウクライナ風ボルシチを追求している。店には歴代の駐日ウクライナ大使も足を運んでおり、ウクライナ人からは「故郷を思い出す本物の味」と高い評判を得ているという。 飯島さんは大学卒業後、フレンチのレストランで修業し、26歳で公邸料理人としてウクライナに約3年間滞在。現地で料理と向き合う中、日本でもこの味を広めたいと思い、平成23年に現在の店を開いた。店名のベトラーヴは、フランス語でビーツを意味し、料理人としての原点であるフランス料理と、ボルシチに必須のビーツを店のシンボルにしたいと命名した。 今年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻以来、ウクライナを知りたい、応援したいという来店客が増え、満席の日も珍しくないそうだ。3月には、ウクライナを支援するための募金箱を設置した。 飯島さんは「自分にできるのは料理でウクライナを知ってもらうこと。ボルシチを通してウクライナの食文化を少しでも感じてもらいたい」と話している。(永井大輔)</p>