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経歴詐称や不当圧力など、公務以外でスキャンダルまみれの横浜市の山中竹春市長だが、「本業」の手腕にもいよいよ雲行きが怪しくなっている。昨年8月の市長選で掲げた重点公約「3つのゼロ」が、新年度予算案にいずれも盛り込まれないことが判明した。

記者会見で記者の質問に吹き出す山中市長(編集部撮影)

「3つのゼロ」とは、①市バスを無料で使える「敬老パス」の自己負担ゼロ(75歳以上)②子どもの医療費ゼロ(新生児〜中学生)③出産費用ゼロ--の3つ。これらに加え、もう一つの目玉公約だった「中学校給食の全員実施」も含めて、予算案に盛り込まれない見通しとなった。読売新聞が15日付朝刊の神奈川版で大々的にスクープ報道。翌16日には、地元紙の神奈川新聞が追いかけ、18日には日本経済新聞がローカル版で「敬老パス」とバス事業に焦点を当てる形で報じるなど、市政記者クラブメディアも続々と報じるようになった。

報道が出た直後からネット民は

公約違反じゃないのか?

公約は絵に描いた餅だったのね

横浜市は人口も減少し、今後収入が増える見込みはないので、三つのゼロ、中学校給食、何にしても実現できませんよ。山中竹春を横浜市長に推した人達はいつ責任を果たすんですか?立憲や共産の議員、党員、サポーターは逃げずに山中市長の嘘の責任をとってください。

などの厳しい意見や失笑が相次いでいる。

横浜市長選の選挙公報に掲載された山中氏の公約。「3つのゼロ」をめざす意気込みにあふれる

そもそも、今回予算案に見送られた山中市長の公約はいずれも巨額の財政支出が見込まれ、市長選の最中から実現性を危ぶむ声が出ていた。就任後最初の市議会でも、選挙戦で戦った最大会派の自民党市議から「お手並み拝見」と言われていたが、読売の記事では、市側が同党との関係悪化を避ける狙いがあったと書かれている。

しかし、この記事の内容について、同党ベテランの横山正人市議はツイッターで「予算案というものはそもそも市長が市会に対して提案するものです」と、制度の基礎的な話を説明した上で、「我々から市長に公約に関する予算は計上するなと言えるものでもありません」とも付け加えた。つまり、結局は大言壮語しながら実現するだけの見通しも手腕も持ち合わせていなかった山中氏を痛烈に皮肉ったわけだ。

横浜市役所(作:ひろあき@ぼっちたび/PhotoAC)

地元紙報道の「異変」!?

これまで山中氏のスキャンダルは、本サイトなどのネットメディアや週刊誌が追及の主体となり、市政記者クラブメディアは黙殺していた。山中氏が国政野党に支援されて当選した経緯もあり、朝日新聞などのリベラル系メディアは及び腰と見る横浜市民も少なくない。

しかし、公約の杜撰な未達成ぶりが確定的になったことで、ようやく「追及モード」に変わるのだろうか。特に影響力のある地元紙、神奈川新聞がどう対応するのか注視されるが、市長選で山中氏と争った候補者の1人は、山中氏の後ろ盾となった「ハマのドン」こと、横浜経済界に強い影響力を持つ藤木幸夫・横浜港ハーバーリゾート協会会長の存在を指摘。「神奈川新聞はドンに忖度しているから、山中氏への追及が甘い」とまで辛辣だ。

ドンの睨みをはばかっているのかはわからないが、近年の横浜市の予算報道の流れからすると今年は確かに「異例」だった。大都市ヨコハマの新年度予算案のスクープは地元紙の面目躍如。林文子市長時代の過去3年でいえば、神奈川新聞は年によって一面に載せるほど、他紙を毎年先行してきた感があるが、今年の記事の書き出しは「横浜市の2022年度当初予算案の概要が、15日までに分かった」とあるように、例年にない「までに」が判明日に付いている。先述したように、今年は読売に譲っており、「までに」は一歩遅れたことを認める書き方だ

山中氏の公約ゼロ未達成が見込まれるから、今年はあえて他紙にスクープを譲ったということはまさかあるまいが、山中氏の公約に期待して投票した50万の横浜市民は、記者たちの市政ウォッチングを通じて公約の達成度を推し測っている。