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いまだ物流の大動脈!! 今再び注目される貨物鉄道輸送

 今、鉄道での貨物輸送に再び注目が集まっている。これは、長距離トラックのドライバー確保や労働環境改善、環境問題への対策などの一環で、鉄道+トラックを組み合わせたモーダルシフトも進んでいることもひとつの要因だ。

 かつては貨物輸送といえば鉄道が大きなシェアを占めていた時代もあったのだが、ドアtoドアの需要の増加などで全盛期と比較するとやや衰退した印象も受ける。しかし鉄道貨物の進化は止まっておらず、まさに今こそ鉄道輸送の回帰が必要な時代かもしれない。今回は、進化する貨物列車の今をレポート。

文、写真/成田颯一

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■今、ふたたび注目される鉄道

西濃運輸の専用貨物列車

 モーダルシフトとは、拠点までをトラックで輸送し、そこから鉄道や船舶で遠方の拠点までを輸送し、再びトラックなどに移し替えて納品先などへ輸送されるという仕組みだ。

 一度に大量の荷物を輸送でき、JR貨物によると、1本の貨物列車(26両分)は、10tトラック65台に相当するとされている。このことから、いかに鉄道の輸送効率が高いのがわかる。

 また、鉄道は線路を走行しているため渋滞リスクがなく、到着時間が正確で計画を立てやすいというメリットもある。荷物を扱う拠点は貨物輸送の取扱いがある貨物ターミナル駅などとなっている。

 現在は、日本の貨物列車のほとんどをJR貨物が運行しており、コンテナによる輸送が中心だ。中身は野菜や生乳などの食品から工業製品、工場へ輸送する原料などさまざま。

 また最近では、西濃運輸や福山通運など物流業者を中心に、列車を貸切で利用するブロックトレインが増えてきた。

 自動車業界大手のトヨタも、2006年から専用列車である「TOYOTA LONGPASS EXPRESS(トヨタ・ロングパス・エクスプレス)」を導入。中京圏から、トヨタ自動車東日本岩手工場に向けて部品を輸送するため、盛岡貨物ターミナル行きの専用貨物列車を高頻度で運行している。

 ちなみに、海外では日本と全く異なるスケールでの貨物列車があるようだ。当然、国土の面積の差が大きいというのもあるが、アメリカのボーイング社の飛行機の動体輸送や2階建てのコンテナ貨物列車など、想像を絶するスケールの貨物列車は一度でいいから目にしてみたいものだ。

■実は意外と身近にある貨物線

日中の渋谷駅を通過する貨物列車

 トラック輸送がまだ盛んでない時代には、鉄道が貨物輸送の中心としてその役割を担っていた。

 貨物列車の本数も増えたことと、都市部での旅客列車の増発や安全性の観点から、当時の国鉄は新たに貨物列車のために線路を用意して効率化を図っていった。そして後に、これらの沿線にも住宅地や都市ができたことで、貨物線は利便性を目的に旅客化されたという例が数多い。

 例えば東京都内を走る山手貨物線は、現在の湘南新宿ラインとして利用されている路線で、田端駅から品川駅を池袋や新宿を通って山手線と並行して走っている。

 もともと、貨物線として東西の大動脈である東海道本線と東北本線、常磐線を結ぶ重要な役割を果たしていた。

 しかし、今では同線を日中に通過する貨物列車の数はかなり少なく、特に池袋〜大崎の区間は、埼京線、湘南新宿ライン、相鉄線が乗り入れる過密なダイヤなため貨物列車が走る隙もない。1日に数本が走っているものの、貨物線としての役割は少なくなってきている。

 そして、この山手貨物線を迂回するバイパス的な役割で誕生したのが現在の武蔵野線だ。開業当初と比べると沿線人口が増加したことで、今では旅客列車が10分間隔ほどで走っている。

 途中駅は京浜東北線や中央線などとの接続駅があり、途中で乗り換える利用が多い。そんな武蔵野線は、現在でも旅客列車の隙間を昼夜問わず多くの貨物列車が通過しており、駅でもしばしば通過する貨物列車に遭遇することができる。

 同線を通過する列車は、東北、上越方面から西日本を結ぶ列車や、千葉県と神奈川県を結ぶ列車も都市部を迂回して通っているのがほとんどだ。

 沿線にはいくつか貨物ターミナルがあり、コンテナが山積みになった貨物ターミナルの横を通過するため、車窓からは他の路線とは少し違った景色を眺めることができる。

 また最近は、定期列車のない貨物線だけを巡る貨物線ツアーもあり、かなり人気なようだ。こうした貨物線は関西にもあるのでぜひ一度探してみると楽しいかもしれない。

■内陸のガソリン輸送に欠かせない鉄道。価格にも影響

長野県における石油輸送の拠点の1つ、坂城駅

 最近ガソリン価格の高騰が話題となっているが、特に長野県は全国の中でも飛び抜けて高い価格となっている。ではなぜ長野県のガソリンの価格はそんな高いのか?

 実は、長野県や群馬県などの内陸地域には、神奈川県や千葉県の沿岸部にある製油所から貨物列車によって輸送した後、そこから油槽所を経てタンクローリーで各スタンドに運ばれている。このため、輸送に掛かるコストは通常より多くかかっており、その分が価格に上乗せとなっているようだ。

 寒さが厳しく、山間部の集落などは車が必須。灯油やガソリンは必需品。石油貨物列車はほぼ毎日走っており、需要が高まる冬は増発も行われている。

 また、長野県の場合、東は千葉県や神奈川県から中央東線を経由するルート、西は三重県の四日市から中央西線を経由する二系統が確保し、万が一どちらかの路線が自然災害などで不通となった場合にも柔軟な対応ができるようになっている。

 このように、鉄道は移動だけでなく物流の面でも、私たちの生活に欠かせない重要な役割を担っている。もし、駅や沿線で貨物列車を見かけた際には、そんなことも思い出しつつ是非とも応援する気持ちで見て欲しい。

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