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 3月19〜20日に三重県の鈴鹿サーキットで開催されるENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第1戦『SUZUKA 5時間耐久レース』。予選、決勝に向け3月17日は特別スポーツ走行が行われたが、外国車でST-XやST-Zに参戦するチーム関係者と話すと、思わぬ現状を教えてくれた。新型コロナウイルス感染拡大、そして悲しむべき状況が続くロシア軍によるウクライナ侵攻といった世界情勢が、パーツサプライなどに悪影響を及ぼしているようなのだ。

 近年、日本のモータースポーツ界でもスーパーGT GT300クラスやスーパー耐久のST-Xクラス、ST-Zクラス、TCRジャパンシリーズなどでGT3、GT4、TCRといったカスタマーレーシングカーが活用されている。豊富な車種バラエティはファンにとっても嬉しいものであり、迫力ある外国車たちの競演はどのシリーズにとっても欠かせないものだ。

 そういったカスタマーレーシングカーは、原則として自作でのパーツ変更は許されず、メーカーが製作しホモロゲートされたパーツを使用しなければならない。外国車の場合は、当然本国から輸入しなければならないのだが、各メーカーともユーザー=チームの満足度を上げるために、非常に効率的なシステムを構築している。例えばメルセデスAMGでは、かなり以前からネット通販のように、ホームページから必要な部品を注文することができる。

 もちろん日本メーカーもそうしたアフターサービスは欠かさない。主要シリーズではパーツサプライ用のトランスポーターがサーキットを訪れ、ユーザーチームをサポートしている。カスタマーレーシングカーでは非常に重要なサービスだ。

 ただ、2020年後半の頃から、新型コロナウイルス感染拡大による物流の停滞が少しずつ悪影響を及ぼしてきていた。そしてここへきて、ロシア軍によるウクライナ侵攻が、ヨーロッパを中心とした海外の車両を使うチームにとって、非常に大きな余波となっているようなのだ。

 特にロシア周辺が飛べなくなったエアカーゴは費用が高騰しており、これまでも高い価格を出せば優先して運ばれる状況だったというものの、このところの世界情勢の不安定化により暴騰。“言い値”価格を出した者から優先される状況だという。あるチームによれば、「バンパーを注文しただけで、間に合わせようとしたら輸送費が100万円以上かかった」というケースも。通常料金ではどんどん後回しにされてしまい、いつまで経ってもパーツが来ないという。

 モータースポーツは経済情勢の影響を受けやすいスポーツではあるが、こうして日本のモータースポーツ界にすら影響が及んでしまっている。「それでなくても、本当に戦争なんて勘弁してほしいです」と関係者は漏らすが、まさにそのとおり。一刻も早く平和が、日常が取り戻されることを願わずにはいられない。