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 WEC第1戦セブリング1000マイルレースは、3月17日に予選のセッションが終了。18日の決勝レースを待つばかりとなっている。ここではFP3と予選が行われた木曜日のトピックスを、セブリング・インターナショナル・レースウェイのパドックからお届けしよう。

■予選の赤旗がなければトヨタは何番手?

 何人かのドライバーは、3月12〜13日に行われた公式テスト“プロローグ”以降、レースウイークのトラックコンディションが進化したと述べている。

「プロローグはずっと涼しかったので、タイヤにとってフェアなテストではなかった」と語るのは、ハイパーカークラスで708号車グリッケンハウス007 LMHをドライブするライアン・ブリスコーだ。

「(決勝では)タイヤを2スティント使う必要がある。プラクティスでは周回が限られていたために実際にはシミュレーションができていないので、明日のレース中にそれを学び続けることになると思う」

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 そのグリッケンハウスで予選アタックを担当したオリビエ・プラは、ポールポジションを奪ったアルピーヌ・エルフ・チームとのギャップはもっと少ないものと考えていたというが、彼らを倒せそうなほどではなかったと述べている。

 アルピーヌの36号車アルピーヌA480・ギブソンを駆ったニコラ・ラピエールはプラに対し、予選で1.3秒もの差をつけた。2021年から導入されたドライバー1名による予選においては、これまでは昨年スパでの0秒519というのがもっとも大きなトップと2番手のギャップだった。

「僕らはこのクルマでここを走るのは初めてだ」とプラ。

「まだまだ僕らにはやるべきことがたくさんある。現時点では、バンプの上では難しいクルマになっているので、現在改善に取り組んでいるところだ」

予選2番手となった708号車グリッケンハウス007 LMH
予選2番手となった708号車グリッケンハウス007 LMH

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 トヨタGAZOO Racingのテクニカル・ディレクターであるパスカル・バセロンは、予選でのトヨタの苦戦について「驚くことではなかった」と述べている。

「予選で我々が目にしたものは、それまでのセッションで見てきたものと正確に一致している」とバセロン。

 LMP2車両のクラッシュによって、チェッカーまで12秒というところで赤旗が提示されたとき、2台のトヨタGR010ハイブリッドは力強いアタックラップに入っていた、とバセロンは付け加えている。

 1分49秒0程度のラップタイムが出た可能性があり、LMP2車両すべてを上回ることができたかもしれないとバセロンは推定しているが、それでもフロントロウに並ぶことはできないタイムではある。

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 WECの決勝が終了するまで、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のセッションに参加しないというトヨタ所属ドライバーへの決定について、バセロンは以下のように述べている。

「金曜日のレースが終わるまで、彼ら(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス)はここにいる。そしてその後、彼らは彼らが望むことをする」

「彼らはWECとIMSAのパドックを行き来しない。彼らが(IMSAで)レースをすることを我々は喜んで許可するが、それが我々の週末を妨げるほどにはできない」

「我々(WEC)のレースウイークの間、彼らは我々と100パーセント一緒にいる。そしてレースが終わったら、彼らはやりたいことをする」

「我々は常にドライバーと話し合い、最善の利益を見つけている。それはとても単純明快だ」

トヨタGAZOO Racing・WECチームでテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロン
トヨタGAZOO Racing・WECチームでテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロン

■グリッド表も発表。『1000マイル』は何周?

 LMP2クラスにタイヤを独占供給するグッドイヤーが、今季からインターミディエイトタイヤを廃した一方、ミシュランはハイパーカークラスにおいてはインターミディエイトをスペックとして保持している。

 ミシュランのスリックに関して、トヨタとグリッケンハウスはいずれも『ソフトホット』と『ミディアム』を持っているが、アルピーヌは『ソフトコールド』と『ソフトホット』が利用可能となっている。

WECではハイパーカークラス、LMGTEプロ&アマクラスにタイヤを供給するミシュラン
WECではハイパーカークラス、LMGTEプロ&アマクラスにタイヤを供給するミシュラン

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 開幕前のスポーティング規則の変更により、LMP2クラスにおける運転時間が、6時間および8時間レースで変更になっている。

 6時間レースの場合、シルバーとブロンズにレーティングされるドライバーの最低運転時間は1時間(以前はそれぞれ1時間15分と1時間45分だった)。今週末の1000マイルレースを含めた8時間レースでは、彼らの最低運転時間は2時間から1時間40分へと変更されている。

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 予選に先立って行われたFP3のセッション終了時、LMGTEアマクラスのデンプシー・プロトン・レーシング88号車をドライブするジュリアン・アンドラウアーはチェッカーフラッグを3回受けたことで、2500ユーロ(約33万円)の罰金を科せられた。

 スチュワード・ディシジョンの通知によれば、アンドラウアーは「ダッシュボード(モニター)と無線が機能しておらず、無線を再接続させるのに忙しかった」と説明している。

 この通知文書上では『Car 88 took the chequered flag tree times!』と、公式文書にもかかわらず末尾に『!』マークが付けられていることが、事の重大さを強調している。しかもよくよく見れば、『three(3)』と表記すべきところを『tree(木)』と綴りを誤っている。

 アンドラウアーが周回を続けたことにより、チェッカー後にもかかわらずポストでは赤旗が提示される事態となっていた。

FP3でトリプルチェッカーを受け、ペナルティを科せられたデンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSR-19
FP3でトリプルチェッカーを受け、ペナルティを科せられたデンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSR-19

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 LMGTEプロクラスの予選で、ポルシェGTチームのミカエル・クリステンセンがマークした1分57秒233というタイムは、直近のセブリング戦である2019年にアントニオ・ガルシアがシボレー・コルベットC7.Rでマークしたクラス最速タイムの1分57秒257を、わずかに上回るものだった。

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 併催されるIMSAとは異なり、WECは決勝レース朝にウォームアップ走行を設定していない。18日は午前中にIMSAの予選セッションが行われたあと、現地時間正午(日本時間19日1時)に1000マイル(268周)または最大8時間で争われる決勝レースがスタートする。

 シリーズからは、すでに決勝の暫定グリッド表が発表されている。

 トヨタの車両がフロントロウに不在となるのは、レベリオン・レーシングがポールポジションを獲得し、ジネッタを走らせるチームLNTが2番手となった、2019年バーレーン8時間レース以来のこととなる。

 予選首位のアルピーヌはアンドレ・ネグラオ、2番手のグリッケンハウスではプラがスタートドライバーとしてグリッド表に記載されている。

 トヨタは8号車がセバスチャン・ブエミ、7号車はコンウェイがスタートを担当する。

WECとIMSAが併催となる“スーパー・セブリング”の週末を楽しむ観客たち
WECとIMSAが併催となる“スーパー・セブリング”の週末を楽しむ観客たち