NASCARおよびヘンドリック・モータースポーツは3月17日、2023年のル・マン24時間レースに、モディファイされたNASCARの“Next-Gen”車両シボレー・カマロZL1を用い、革新技術を備えた車両に与えられる特別枠である“ガレージ56”から参戦する意向を表明した。
これはWEC世界耐久選手権およびIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の共催イベントが開催されているアメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われた、NASCARとIMSAの合同記者会見で発表されたもの。
NASCARの創設者であるビル・フランスSr.が最初にストックカーをル・マン24時間に送り込んでから約半世紀が経過するなか、今回の構想はNASCAR、ヘンドリック、シボレー、IMSA、グッドイヤーによるコラボレーションにより実施される。
なお、車両の技術的要素や、ドライバーラインアップなどの詳細は、後日発表するとしている。
■「大胆な車両を投入」とチームオーナー。ハイブリッドも搭載か
「NASCARの初期から、我々が国際モータースポーツシーンで目に見える役割を果たすことは、私の父にとって重要だった。ル・マン24時間レースほど大きなステージはない」とIMSA会長兼NASCARのCEO/会長であるジム・フランスは述べている。
「ヘンドリック・モータースポーツ、シボレー、グッドイヤーと提携することで、NASCARの歴史の中で最も優秀なチーム、メーカー、タイヤを手に入れることができる」
「Next-Genカーのテクノロジーを知らしめ、歴史的なレースへの競争力のあるエントリーを提案することを楽しみにしている」
ヘンドリック・モータースポーツは、獲得ポイント、勝利数、ラップリードなどのあらゆる面で、NASCARカップ・シリーズ史上最高のリーダーである。チームは2年連続でタイトルを獲得し、2022年シーズンは4レースのうち2レースで勝利を挙げている。
ジミー・ジョンソンとともに7度のカップ・タイトルを獲得したクルーチーフであるチャド・クナウスが、このガレージ56プログラムのマネジャーを務める。
「オートレースの真に象徴的なイベントのひとつに参加し、世界の舞台においてNASCARとシボレーを代表するのは、特権的なことである」とチームオーナーのリック・ヘンドリックは述べている。
「このプロジェクトのビジョンを持っているジムは、多大な功績を認めるに値する。我々の組織に責任を負わせてくれたことに感謝したい」
「ガレージ56は“1台のみのクラス”ではあるが、我々はコンペティターであり、ル・マンのファンのために大胆な車両をレーストラックに投入するつもりだ」
「これは謙虚な機会であり、今後15カ月にわたってエキサイティングな課題が出てくるだろうが、我々のチームは準備ができている」
かつてビル・フランスはACOとの合意に基づき、1976年6月12日に初めて、ストックカーをル・マンに持ち込んでいる。ダッヂ・チャージャーとフォード・トリノ、2台のNASCARレースカーが、新たに創設されたグランド・インターナショナルクラスに参戦した。
ガレージ56は、革新的な車両のために設けられた1台のみのカテゴリーとして、2012年にル・マンに導入されたものだ。
過去にはデルタウイングやニッサンZEOD RCなどの印象的な車両がこの枠から参戦してきたほか、2021年は日本の青木拓磨含む障害を持つドライバーが運転できるように改造された車両で、アソシエーション・SRT41が参戦している。
「ガレージ56は、ル・マンにとって特別な機会だ。このレースは、ほぼ1世紀にわたって自動車産業の技術プロセスにおけるリーダーであり続けてきたからだ」と、ACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長は述べている。
「ガレージ56のプログラムに関する申請を受け取った際、ACOは関係するすべての人がプログラムを成功できるようにパフォーマンス・パラメータを設定するために、デザイナー、チームパートナー、およびサプライヤーと話し合うことから始める」
「彼らが提案されている2023ガレージ56プロジェクトに向けて取り組んでいる間、私たちはNASCARとそのすべてのパートナーに対し、引き続き協力していく」
なおNASCARは、2024年のシーズンに間に合うようにNext-Gen車両に共通ハイブリッドユニットを組み込むべく取り組んでいるが、これがガレージ56参戦車両にも搭載され、ル・マンはその開発のテストベッド(たたき台)ともなる可能性がある。