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Mac Studioと「Studio Display」。セットだとやっぱりかなりバランスのいい組み合わせだ
3月18日、Mac Studioとともに発売されるのが「Studio Display」だ。
Mac Studioと組み合わせることを強く意識した商品だが、もちろんほかのMacと組み合わせて使うこともできる。
各種機能のクオリティはどうなっているのか、Mac Studioとの組み合わせだけでなく、Windows PCにつないで使ったときの動作も含めて検証してみた。
Nano-textureガラスは効果大、5Kを生かすなら有用
Studioディスプレイにはいくつかのモデルがあり、購入時にカスタマイズするのが基本となっている。ディスプレイとしての仕様は表面加工以外同じで、スタンドなどの仕様変更が中心だ。
基本はアンチグレア加工の「標準ガラス」で、傾きを変えられるスタンドが付いている。
そこに、より微細な表面加工で反射を防ぐ「Nano-textureガラス」を使ったモデルがあり、さらに「傾きと高さを変えられるスタンド」、そして「VESAマウント」から選ぶ。
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Appleの購入ページより。スタンドは3種類から選ぶ
今回テストしているのは「Nano-textureガラス」を使い、スタンドは傾きだけを変更できるタイプのもの。これでも価格は24万2800円なので、相当に高価なディススプレイである。

今回使っている「Nano-textureガラス」採用モデル。かなり強く光を当てても、反射はこのくらい
サイズは27インチ。解像度は5K(5120×2880ドット)だが、ミニLEDなどを使った「ローカルディミング」は行なっていない。トップ輝度は600nitsで、いわゆる10ビットカラー対応となっている。
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27インチなのでパッケージサイズはかなり大きい。上に置いているiPad Air(10.9インチ)と比較するとイメージが湧きやすいだろう
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パッケージから取り出すのも一苦労。この辺はiMacにも通じる
まず使って感じたのは、Nano-textureガラスの効果の高さだ。
いわゆるアンチグレアだと色が拡散する効果が出てしまい、精彩感と発色が落ちやすい。そのため、テレビにしろディスプレイにしろ、「光沢仕上げ+薄膜の反射低減コーティング」というものが多いのだが、仕事で使う場合、反射はない方が疲れにくい。
Nano-textureガラスによるコーティングは、精彩感・発色を落とすことなく反射をほぼ感じられないレベルへと軽減してくれる。
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MacBook Pro 14インチと並べて。光沢仕上げのMacBook Proとは、映り込みの状況が全く違う
実のところ、輝度の突き上げを含めたHDR感では、ミニLEDを使っている14インチMacBook Proのディスプレイの方がいい。発色は同等だと思う。
だが、どこから見ても反射がない、画面が消えてもおっさんが映り込まないという点では、圧倒的に快適だ。
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画面を表示した上で、斜めから。Studio Displayは映り込みなくすっきり見えるが、MacBook Proだとそうはいかない
このコーティングは汚れがあると効果が落ちる。一方、表面に傷をつけても効果が落ちるため、柔らかく、汚れが落ちやすいもので拭く必要がある。
そのため、このモデルには「Apple ポリッシングクロス」が付属する。1980円と高価であることから「しんじゃのぬの」なんて皮肉で呼ばれたりもする、あれだ。Appleはこの布で拭くことを強く推奨している。
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付属の「Apple ポリッシングクロス」。ネタにされがちだが、とても使いやすく、品質が良いクロスだ
今回初めて使ってみたが、確かに非常に使いやすく、手触りも良かった。
とはいえ、同様のマイクロポリッシングクロスはもっと安く売られているので、追加で買うのは好き好きかと思う。まあ、Nano-textureガラス版のStudio Displayを使っているなら、積極的に使っていくべきなのだろう。なにしろ付属していて、サポート対象なのだから。
カメラやマイクを内蔵、接続は「USBデバイス」として
Studio Displayはただのディスプレイではない。昨今のビジネス向けディスプレイのトレンドを反映し、「多機能化」している。
上部・下部にはスピーカーが内蔵され、上部中央にはカメラとマイクが入っている。
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上部・下部にはスピーカーのための穴が。音はかなり良い
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上部中央には12メガピクセルのカメラとマイクが。ノッチはない
インターフェースはThunderbolt 4の入力が1つだが、そこからUSB Type-Cが3つつなげられる。入力のためにつないだ端子からは96Wでの電源供給も行える。すなわち、MacBook Proなら電源ケーブルを接続する必要がないわけだ。
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本体を横から。電源は本体中央につながる
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3つのUSB Type-C端子と、Thunberbolt 4端子がある。ディスプレイに接続するときにはThunberbolt 4端子を使うので、1入力になる
重要なのはカメラやマイク、スピーカーの存在。macOS側から見るとわかりやすい。
カメラやスピーカー、マイクはそれぞれ「USBデバイス」として接続され、OS側から利用可能になっている。だから、色々なアプリから特に意識することなく使える。
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macOSのサウンド設定から。マイクやスピーカーはUSBデバイスになっているのがわかる
以下の動画は、Mac版のZoomから「センターステージ」を使ってみたものである。自分の動きに合わせ、きちんとフレーミングが追従しているのがわかるだろう。
これらの制御には「A13 Bionic」が使われており、実質的に、ディスプレイの中に独立したデバイスが組み込まれているような構造になっている。A13 Bionicが入っているといってもiPhoneやApple TVの機能を持っているわけではなく、各デバイスの制御用SoCとして使っている形のようだ。
音もいい。空間オーディオ楽曲を再生すると「広がり」をしっかり楽しめる。ただし、低音は強いがちょっと響きすぎるところもあり、その辺は好みが分かれるかも、と感じた。
Windowsにもつながるが、フル機能は生かせず
と、ここで気になる点が一つ。
USBデバイスとしてつながっているということは、Mac以外につないだらどうなるのだろうか? AppleがサポートしているのはMacとiPadだが、Windows PCをつないだらどうなるのだろう?
答えは「意外と普通に動く」。
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Thunderbolt 4端子でつなげば、Windows PCでも普通にディスプレイとしては使える
デバイスマネージャーから見ると「デバイス方向センサー」が動いていないが、カメラもマイクもスピーカーも、一般的なデバイスとしてつながり、利用できる。表示ももちろん問題ない。
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デバイスマネージャーを表示してみた。カメラやマイク、スピーカーはUSBデバイスでつながっているが、「デバイス方向センサー」が動いていない
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Windows版のZoomでもカメラとして認識できた。ただし、「センターステージ」は動かない
すべての機能が動いているわけではない。
「センターステージ」はWindowsでは動いていないし、Siri連動も当然使えない。また、今後ファームウエアのアップデートがあっても、サポート外のWindows PCからアップデートできるとは限らない。
サポート外なので、このくらい動けば御の字……というところではないだろうか。
HDMI非対応で「1入力」をどう見るか
全体的にみて、Studio Displayは好ましい製品だ。画質も良く、音もいい。デザインも、Mac Studioと合わせて使うのにちょうどいい。
一方で、今のPCディスプレイのトレンドを考えると、ちょっと不満な点もある。
入力が実質1系統である、という点がまず気になる。特に、HDMI入力がない点だ。
PCディスプレイやテレビだと、複数のデバイスをつないで切り替えて使ったり、同時に2出力で画面を分割したり、という機能があるが、それはできない。
輝度は高く発色もいいが、HDRには弱い。そもそもの想定として、HDR編集には、より高価な「Pro Display XDR」や、ミニLED搭載のMacBook Pro、iPad Proを……ということなのかもしれないが、これだけ高価な製品なので、ちょっともったいない。
HDRや複数入力にこだわらなければ、Studio Displayはとてもいい製品だと思う。ただし、この価格を許容するなら、だが。もちろん、この価格相応に、長く使えるディスプレイではある。
(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)