かつて日本のミニバンブームを牽引してきた両雄が寂しい末路を迎えている。トヨタエスティマは2019年10月、ホンダオデッセイは2021年末をもって生産終了。いずれもメーカーから、次期モデルの登場に関するアナウンスは一切ない。実に寂しい限りだ。
しかし、ここに来て、エスティマ、オデッセイともに復活するという情報が飛び込んできた。はたして、どのように復活するのか、遠藤徹氏が真相に迫る。
※本稿は2022年1月のものです
文/遠藤徹
写真/ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部、トヨタ、ホンダ
■エスティマが生産終了に追い込まれた理由
3代目エスティマの最終モデルは2006年1月に登場し、13年というロングセラーモデルだった。
RAV4などと共通の新MCプラットフォームを採用しているが、リアは専用設計となった。外観デザインは先代モデルのアップグレードだが、ルーフが浮いているように見える「フローティングルーフ」を採用。
搭載するパワートレインは最高出力280psを発生する3.5L、V6をはじめ、2.4L、直4そして2.4L、直4エンジン+モーターのハイブリッドの3種類。ハイブリッド車の燃費は10・15モード燃費で20.0km/Lまで向上した。
マイナーチェンジは2008年12月、2012年5月、そして2016年6月に行い、2016年6月のマイナーチェンジでは、衝突回避支援パッケージの「トヨタセーフティセンスC」を全車に標準装備し、安全性を向上させた。
その一方で、3.5L、V6エンジンを廃止し、グレードもアエラスに1本化されるなどモデルの統廃合を行った。
エスティマが廃止されたのは、2019年10月、2020年5月に行われたトヨタの販売チャンネル統合を見据えた車種整理によるものだった。流通在庫分は2020年3月末に販売終了した。
かつてミニバンジャンルは、背の高いワンボックス型ミニバンと、背の低い乗用車ミニバンの二極化していた。
しかし、時代とともにワンボックス型ミニバンが席捲、背の低い乗用ミニバンは衰退していった。
ワンボックス型ミニバンは、ラージクラスではアルファード/ヴェルファイアがエルグランド、エリシオンを圧倒し、エリシオンを生産終了に追い込んだ。
背の高い5ナンバーミニバンではノア/ヴォクシー、ステップワゴン、セレナの三つ巴決戦が今でも続いており、これにシエンタ、フリード、さらにハイトワゴンのルーミー/トールが人気だ。
こうしたなかでマツダ、スバルの両社はミニバン市場から全面撤退し、SUVに軸足を移すようになった。
トヨタ、日産、ホンダ、三菱の各社もミディアムクラスの乗用車タイプミニバンを廃止し、新世代SUVを相次いで投入することになった。
ではなぜトヨタはエスティマを廃止したのか? それはミニバンの主力がアルファード/ヴェルファイアとハコ型に移行し、ワンモーションフォルムのエスティマのニーズが薄れたことが挙げられる。
これに加えて、エスティマの生産終了は販売体制の変革によるところも大きい。トヨタは2021年5月から、従来の4系列店体制による1本化を図り、全系列店併売態勢に切り替えた。
それまではトヨタ店とカローラ店がエスティマ、トヨペット店がアルファード、ネッツ店がヴェルファイアと分けて販売していたことで、同クラス3車種の継続販売が可能だった。
1本化すれば同クラスの車種は絞らざるを得なくなる。これまでの販売推移を見れば、ボックス型の高級ラージミニバンであるアルファードへの1本化が自然の流れといえる。
■初代がヒットし、代を重ねていくごとに走りのいい乗用車ミニバンへ移行していったオデッセイ
2013年11月に登場した現行5代目オデッセイは、2020年11月に行われた2度目のマイナーチェンジで、内外装を大幅に変更。特にフロントマスクは大きなグリルを装着し、押し出し感を強めた。
このビッグマイナーチェンジで、低迷していた新車販売台数も回復を見せていたにもかかわらず、2021年末をもって生産終了がアナウンスされた。
オデッセイは初代モデルが爆発的な人気で隆盛を極めた。ホンダはキャブオーバー車のような商用車ベースのノウハウがなく、最初からパッセンジャーのハイトワゴン作りからスタートした。
このため乗用車感覚の走りのよさ、乗り心地や運転のしやすさ、静粛性などが受け、これが初代オデッセイヒットの要因となった。その後ハイトワゴンタイプに加えて、背の高いボックス型が台頭し、両陣営が競うように上級ミニバン市場を席捲していった。
このトレンドに呼応してホンダはオデッセイをベースにボックス型の「エリシオン」を派生させ、上級ミニバントータルのシェアアップにチャレンジした。
エリシオンはアルファード/ヴェルファイア、オデッセイはエスティマにそれぞれ分けて対抗させる狙いがあった。ところがこの狙いは失敗した。エリシオンは販売不振でモデル廃止に追い込まれた。
オデッセイも2代目でエリシオンとのコンセプト分けを明確にするために背を低くし、スタイリッシュなデザインに仕立てたのが、あまり売れなかった。
3代目では機械式駐車場に収まる全高1550mmに収めつつ、低重心の走りのいい3列7人乗りミニバンとしてアピール。4代目は3代目の正常進化で背の低いミニバンを維持したが、時代はボックス型ミニバンが主流になっていき販売は低迷。
そんななか、2013年11月に登場した5代目オデッセイは、背の低い乗用ミニバンからコンセプトを変え、全高を1695~1725mmとした背の高いボックス型ミニバンへ方針転換するも、遅きに失した感があった。
ユーザーの目はもはやヴェルファイアかアルファードの二択という状況、エルグランドも背を少し低くして差別化も図るも、マイルドヤンキーと法人ユーザーからの支持も拡大していったアルファード、ヴェルファイアに底引き網のごとく高級セダンユーザーもろとも一気にさらわれていった。
アルファード/ヴェルファイアが好調な半面、ホンダのエリシオン、オデッセイはなぜ販売不振に追いやられたのだろうか?
ヴェルファイアに始まった(と私は見ている。初代エルグランドの人気の要因もオラオラ顔)オラオラ顔の人気が決定付けたといっていいだろう。2004年5月に発売したエリシオンは、2007年に3.5L、V6と大きなグリルとヘッドライトを持つエリシオンプレステージで、当時大ヒットしていたヴェルファイア(当時はアルファードよりもヴェルファイアの人気が高かった)に対抗するも失速し、2013年10月に生産終了。
その後、2015年6月に現行アルファード/ヴェルファイアが登場すると、ミニバンを超えた高級車としてのクオリティの高さと認知度&ブランド力、頻繁に改良するトヨタの力の入れ具合などから揺るぎないポジションを獲得し、新車販売全体の4位という大ヒット車になったのはご存じの通り。
そのほか、アルファード/ヴェルファイアの強さは、トヨタの販売力ではホンダカーズの2倍以上もあることも見逃せない。同じ商品力でも2倍の販売台数を売ることが可能になる。ユーザーのバックグラウンドも重要だ。トヨタは一般のパッセンジャーユーザーのほか、法人層に強力な代替え母体を持っている。
クラウン、マークX(マークII)などの保有ユーザーからの代替えも多い。ホンダは一般ファミリーのパッセンジャーユーザーは多いがクラウン、マークXのようなハイオーナーセダンは少ないし、法人層は皆無に等しい。ひとたび上級ミニバンのトレンドが変化すると生産販売の維持が難しくなってしまうのである。
数年愛用して手放す際のリセールバリューも20万円以上も格差がついてしまうので多くのユーザーはトヨタ車に代替えしたくなるのである。
■販売終了したオデッセイの今後はどうなる?
販売終了したオデッセイをホンダは今後どうするのか? 中国市場で販売されているエリシオンを輸入でカバーするとの案も検討されたが、こちらはなくなった、というのが最新情報である。中国版エリシオンのボディサイズは全長4940×全幅1845×全高1710mmと、サイズが大きすぎて日本の道路や車庫、駐車場事情に合わないといったことが理由だ。
当面は2022年5月末に発売する次期型ステップワゴンに上級グレードを設定し、こちらでカバーする方針である。
同新型車には標準の「エアー」と上級の「スパーダ」があり、さらに上級の「スパーダプレミアムライン」を設定する。こちらは17インチアルミホイール、2列目シートヒーター、オットマンの標準装備などオデッセイ並みの充実装備仕立てとする。
現在、私が入手しているホンダ関係者からの情報では、現在のオデッセイよりひと回り大きい背の高いボックス型ミニバンを2022年末の導入を目処に開発中。パワーユニットは2Lエンジンのe:HEVとなるだろう。
オデッセイの後継ミニバンは、はたして打倒アルファードなるか?
■スタイリッシュなミニバンを望む声が多くあり! 新型エスティマはどうなる?
2019年10月に生産終了したエスティマは、いまだに復活を希望するユーザーの声は大きく、「エスティマはEVで復活する」という、トヨタ関係者からの証言も得ている。
トヨタとスバルが共同開発した、EV専用の新しいプラットフォーム、e-TNGAを採用したミニバンで、薄型の大容量電池パックを床下に平置きし、居住空間を犠牲にせずにパッケージング。
エクステリアは2022年末~2023年春に登場予定のアルファードと差別化を図るため、bZ4Xや発表された16車種のBEVのようなデザインテイストになると見られる。
登場は早くても2024年もしくは遅くとも2025年あたりになりそうだ。現状、エスティマのような流麗な背の低いミニバンは存在しないだけに大いに期待したい。
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