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純正でも対向車が悶絶……なぜクレームが増えたのか!? LEDライトの眩しさの正体

 最近、夜走ってると気になるのはLEDヘッドライトの眩しさではないだろうか。

 対向車線を走ってくると眩しい……、夜中の住宅地を歩いていて向かいからくると眩しい……、さらには高速道路などで後続から近づいてきても「光軸がずれているんじゃないか!?」と眩しい……。

 追い抜いていく姿を見ると、最近出たばかりの新型車で、社外品を付けているわけではなく、純正品にもかかわらず眩しい。

 思わず「イラッ」としたという人も多いであろうLEDヘッドライトの“光”害。

 なぜLEDライトはこれほど眩しいのか? そのポイントと、特に街中で眩しいという声が多いJPNタクシーの問題について分析していきたい。

文/高根英幸
写真/TOYOTA、AdobeStock(トップ画像=OrthsMedien@AdobeStock)

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■LEDヘッドライト以外でも気を付けたい光軸の話

ネット上にも対向車や後続車のヘッドライトが眩しいという声が多数ある。自分の視界が明るいのはいいが、対向車からどう見えるのかは一度考えてみたほうがいいだろう(beeboys@AdobeStock)

 ここ数年、夜間の運転を苦痛に感じると思っているのは、筆者の回りだけでも相当する存在する。ネット上にも対向車や後続車のヘッドライトが眩しいという声は無数に見ることができる。

 このヘッドライトが原因についても実にさまざまなものがある。ハイビームの切り替え忘れや、道路の勾配によってロービームなのに上向きに配光されてしまうケース。ハロゲンバルブ仕様のヘッドライトにHIDやLEDのバルブを組み込んでロービームの拡散光が眩しくなってしまっているケースなどさまざまだ。

 自分の視界は明るいほうがいいだろうが、周囲のドライバーの目を幻惑することは違法だという意識も持っている必要がある。ドライブレコーダーの映像でヘッドライトやフォグランプの異常な配光が交通事故の原因のひとつと認定されれば、車両が接触していなくても、責任を問われる可能性があるのだ。

 暗くなってもヘッドライトを点灯していないことに気付かないドライバーとともに、運転に対する責任感が希薄なドライバーには、悪意がなくても事故の原因になることに気付いて欲しいものだ。

■特定の車種、それもタクシーが眩しく感じる?

車種によっては道を歩いている時、つまり歩行者としてアイポイントが高い状態でも眩しいと感じることがある(New Africa@AdobeStock)

 前述のネットでの意見でヘッドライトが眩しいという意見では、ライトの位置が高いSUV車なども名指しで挙がったりするが、とくにJPNタクシーは眩しいと感じるという声もある。

 確かに筆者も、道を歩いている時でも(つまり歩行者としてアイポイントが高い状態でも)JPNタクシーのライトが眩しいと感じたことはある。

 トヨタが作るクルマであり、またプロドライバーが走らせるにもかかわらず、どうしてこれほどネット上に苦情が溢れるのだろうか。

 まずLEDライトの配光特性自体が眩しさを感じさせる原因のひとつでもある。LEDランプの放つ光は高いエネルギーをもっているため、目の中に入っても乱反射して眩しさを感じさせるのだ。

 またJPNタクシーのLEDヘッドライトはプロジェクタータイプで配光がクッキリとしており、ロービームは遮光板によるカットラインによって高さ方向の配光を抑えている。このカットラインが対向車のドライバーにはよし悪しなのである。

 カットラインはギリギリのラインで眩しさを抑えているため、フラットな配光というよりカットライン付近のほうが明るいクルマもある。

 そのクルマを運転するドライバーにとっては、カットラインギリギリまで明るいほうがロービームのままでも先まで光が届いて夜間の視界が見やすいが、走行中のクルマの動きでチラチラと光軸が上向きになって周囲のドライバーは眩しく感じるのだ。

 ちなみにJPNタクシーには2グレード設定があり、ベースグレードとなる「和(なごみ)」はマルチリフレクタータイプのハロゲンランプを採用している。つまり眩しいのは上級グレードである「匠(たくみ)」だと思われる。

 街を走っているほとんどのJPNタクシーは匠グレードという印象だ。しかし匠グレードのヘッドライトにはオートレベライザーが装備されているので、ロービームが上向きになってしまうことはないハズだ。だが、実際にはそんなに単純には解決しない原因があるのだ。

■独特なデザインと構造も原因となっている可能性

タクシーの場合、LPGタンクなどの関係で重心がどうしてもリア寄りになるため、光軸も上になりがちだ。乗客がいる場合さらにリアに重さがかかることになる(James Thew@AdobeStock)

 JPNタクシーのボディ形状と構造が影響している可能性も高い。JPNタクシーは全長4400×全幅1695mmとコンパクトだが、全高は1750mmもある。

 しかもリアのホイールアーチ後端までルーフが伸びて、そこから急角度でバンパーへと斜めに落ちるデザインで、ボディ形状からすれば重心が高く、リア荷重も多めとなるシルエットだ。

 ハイブリッドのバッテリーは車体のほぼ中央フロアパネルの下にマウントされており、低重心化に寄与しているだろうが、PHEVやEVほど大容量ではないため効果は限定的だ。

 そして高いルーフがリアのオーバーハング部分まで伸び、LPGのタンクがリアシートの後ろにマウントされていることが重心を高めてしまっている可能性が高い。

 後席に乗客が乗った場合、その重量のほとんどはリアタイヤに掛かることなり、トランクに手荷物を載せたり、燃料のLPGを充填すればリアサスペンションは沈み込む。

 それによってフロントタイヤに掛かっていた荷重もリアタイヤに移動するためフロントサスペンションは伸びることでヘッドライトの光軸は上昇してしまうことになる。

道路の勾配によっても光軸は上下する。JPNタクシーだけでなく、LEDライト搭載車にはまだ改善の余地がありそうだ(xiaosan@AdobeStock)

 これではカットラインの意味がなくなり、光軸がヘッドライトの高さより上に向ってしまうことになってしまうのだ。車検を取得する際には後席に乗員はおらず荷物もない。燃料も満タンにしている可能性は低いだろう。その状態でヘッドライトの光軸は定められているハズだ。

 だが前述のとおりヘッドライトには光軸を調整するレベライザーが備わっている。これは国際的な保安基準で装備が義務化されているものでもある。JPNタクシーの場合、上級グレードの匠にはオートレベライザーが備わっている(ベースグレードの和は手動式)。

 オートレベライザーが装備されていれば対向車や先行車のドライバーは眩しさから開放される、と考えるのは早計だ。

 前述のとおり後席に乗客が乗車したり、たくさんの手荷物を積んだり燃料を満タンにしてリア荷重が増えれば、レベライザーが光軸を調整してくれても、僅かな勾配や走行中に前後の荷重移動が起こるたびにヘッドライトの配光はチラチラと揺れて、周囲のドライバーの視界は幻惑されることになる。

 これがJPNタクシーのヘッドライトの眩しさの原因であろう。できれば今後のマイナーチェンジでこの配光特性を改善してもらえると、周囲のドライバーは眩しさから開放されて、快適に走れるようになるハズだ。

 なのでトヨタだけでなく、LEDヘッドライトを採用している自動車メーカーには、さらなる熟成をお願いしたいところだ。

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