2022年のWEC世界耐久選手権は、トタルエナジーズ社の100%再生可能燃料を導入する。これについてフランスエネルギー大手である同社、ならびにFIAとACO(フランス西部自動車クラブ)は「大きな節目」として歓迎している。
2021年のル・マン24時間で発表されたとおり、今季のWECは開幕戦セブリング1000マイルレースから参戦全車で、『エクセリウム・レーシング100』というブランド名が与えられた100%再生可能燃料を使用する。
ワインの製造工程で発生する残量バイオマスをリサイクルすることで作られるこの燃料は、トタルエナジーズが現在燃料を提供している他のシリーズに先駆け、WECで初めて使用されることになる。
トタルエナジーズのモータースポーツ部門担当副社長であるピエル・ゴティエ・カロニによれば、WECは、持続可能性に向けてさらに前進するための同社の「真の研究所」として機能するという。エクセリウム・レーシング100には、1滴のオイルも含まれていない。
「この100%再生可能燃料をレースに投入できることを、とりわけ誇りに思う」とカロニは述べている。
「これは、トタルエナジーズとACOのパートナーシップにおける大きなマイルストーン(節目)であり、持続可能な開発を促進するという戦略は、社会とともに2050年までにカーボン・ニュートラルを達成するという当社の野心に沿ったものである」
「したががってFIA WECは当社にとっての真の研究所であり、脱炭素化された持続可能なモビリティのために提供できる、革新的なソリューションのショーケース(展示の場)である」
WECの発表した声明によれば、エクセリウム・レーシング100は、FIA、自動車メーカー、および再生可能エネルギーに関する欧州の規定の要件を満たし、そのライフサイクルにおいてCO2排出量を少なくとも65%削減する「本物のレーシング燃料」であるとしている。
これは18カ月におよぶ研究と開発によってもたらされた燃料であり、発酵・蒸留・脱水の過程でブドウの搾りかすと沈殿物から得られたバイオエタノールをベースに生産される。
「耐久レースは、新たな時代へと乗り出している」とACOのピエール・フィヨン会長は述べている。
「ACOの長年のパートナーであるトタルエナジーズとともに、我々は環境負荷を軽減するという共通のコミットメントのレベルを上げている。我々の主な目標は炭素排出量を削減することであり、これを達成するためには全員が参加する必要がある」
「ル・マン24時間レースを自動車テクノロジーの試験場にするという我々の(昔からの)野心を守ることを、誇りに思う」
FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、次のように述べた。
「モータースポーツは素晴らしい光景であるだけでなく、ユニークな研究開発プラットフォームでもあり、自動車産業への持続可能な技術の導入を促進し、世界じゅうの道路利用者に利益をもたらすものだ」
「その性質上、耐久レースは革新の最前線に位置する。したがって、WECが100%持続可能な燃料へと切り替えることは、モータースポーツに持続可能なエネルギー源を導入するというFIAの目的を完全に反映した、重要なマイルストーンである」
この新燃料導入に際し、WECに参戦する各マニュファクチャラーは、先月スイスで行われたFIAのダイナモ・テストに車両を送り込む必要があった。TFスポーツはこの作業のために、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに参戦する95号車アストンマーティン・バンテージAMRを派遣した。
また、ポルシェのWECオペレーション責任者であるアレックス・ステューリヒは、ポルシェGTチームの2台のポルシェ911 RSR-19が先月バルセロナで行ったテストの際、この新燃料で走行していたことを明らかにしている。このテストは、2023年デビュー予定のLMDh車両の開発テストと同時に行われていたものだ。
加えてトヨタGAZOO Racingの平川亮は、昨年11月のバーレーンでのテストからこの燃料を試していたことについて触れ、当時は「うまく適合できていない感じがあった」としつつも、2022年に入ってからのテストでは違和感なくドライブできていると語っている。