もっと詳しく

時事通信が17日に配信した「電機大手、『ジョブ型』加速 一般社員に拡大、人材獲得激化」という記事が話題を呼んでいる。日立製作所や富士通などの電機大手がこれまで日本企業に多かった「メンバーシップ型」雇用から「ジョブ型」雇用に切り替えていると報じている。

ジョブ型雇用とは、あらかじめ職務内容を明確に決めた形での雇用形態。これまで日本で重視されてきた学歴や年齢より、仕事内容に必要なスキルや実績が評価される。事業展開や業態の変化に合わせて労働市場から機能的に能力の高い人材を採用できるというメリットがあり、欧米企業では一般的だ。

sesame /iStock

ジョブ型雇用推進への期待

日立や富士通に限らず、このところジョブ型雇用に切り替える大手企業は少なくない。NTTは昨年からジョブ型の人事制度を全社員に適用している。資生堂も昨年、ジョブ型雇用に切り替えた。カゴメは2015年に、課長職以上でジョブ型雇用を導入している。KDDIは、2020年8月入社の中途社員からジョブ型雇用の適用を開始。昨年4月の新入社員からは一律の初任給制度ではなく能力に応じた給与制度が導入されている。

大手企業がジョブ型雇用を推し進めることの期待は大きい。ツイッターでは、

優秀な人は引く手あまたになるな

同調圧力社会がなくなるきっかけになってほしい

皆の望んだ未来がやってきた。今後人材はどう動く?

IT業界ではすでにジョブ型が普通だと思うし、従来の日本型の終身雇用型だと会社のお荷物が増えるからジョブ型広まってほしい

といった意見が確認できた。

『若者はなぜ3年で辞めるのか?』などの著書がある人事コンサルタントの城繁幸氏は「『新卒一括採用や年功序列の人事制度では多様な人材が入ってこない』という点はどの業界も一緒なのですぐに電機以外にも広がります」とツイートし、これからより多くの企業がジョブ型雇用を採用すると予測した。

xavierarnau/iStock

ジョブ型って言いたいだけ !?

ただ、日本でジョブ型雇用を導入しても骨抜きになってしまうのではないかという懸念も一部から出ている。

ツイッターで約3万6000人のフォロワーを誇る、ビジネス系人気匿名アカウントの哲戸次郎氏は、「なんか30年前の『成果能力主義』みたいなのと同じで、ジョブ型って言いたいだけな感じ。そもそも解雇規制を緩和しないと会社にジョブ無くなったらどうするん?」と指摘する。

「転職とキャリア」がテーマのブロガーで『私にも転職って、できますか?』の著書がある安斎響市氏はツイッターで、「採用観点では良いこと」としたうえで、「結局、『年功序列で昇格しちゃった現役管理職』に対して『あなたジョブ型の要件満たしてないから降格ね。あ、あなたはクビね』ってやらないと改革にならない気がする」と、日本企業がジョブ型雇用を推し進めることの課題を指摘していた。

長時間労働、女性の活躍の難しさ、労働市場流動化が進まない点など、日本には数多くの雇用問題がある。こうした問題の原因は、現行の雇用制度だとみる向きも少なくない。課題解決につながるかもしれないジョブ型雇用が、日本企業で根付くかどうかは、メンバーシップ型を前提とした現行の雇用制度をドラスティックに見直せるかどうかにかかっているようだ。

関連記事:日立が全社員「ジョブ型」雇用シフトが話題も、日経新聞が書かない「限界」