もっと詳しく

電力会社は問題を抱えている。電力会社の「スマートグリッド」は10年前の請求問題を解決するために作られたもので、電気自動車、ソーラーパネル、そしてリアルタイムデータへのこだわりを持つ2022年の消費者のニーズや期待に応えるためのものではないからだ。この問題を解決すべく、処理能力の低いスマートメーターと消費者のインターネット接続の間を橋渡しする、エレガントで小さなハードウェアデバイスを展開するCopper Labs(コッパーラボ)が550万ドル(約6億5000万円)を調達した。

「問題は、現在最も洗練されたSmart Grid(スマートグリッド)でさえ、昨日起こったことを15分間隔でしか電力会社に伝えられないことです」とCopper LabsのCEOであるDan Forman(ダン・フォーマン)氏はいう。「多くの電力会社は、30日に1回しかそのデータを取得できません。電力だけでなく、ガスや水道の場合も、30日に1回しかデータにアクセスできないところがほとんどです。送電網のディスラプションのペースは、技術革新のペースに見合っていません。当社は、電力会社が必要なソリューションを提供するために、より費用対効果の高い方法を見つける手助けをしています」。

Copper Labsは、アーリーステージの気候に特化した技術革新に資金を提供するベンチャーキャピタルClean Energy Ventures (CEV)がリードしたラウンドで550万ドルを調達した。同ラウンドには既存投資家のNational Grid PartnersBlue Bear Capitalも参加した。新たに調達した資金により、Copper Labsは2023年にかけて営業、エンジニアリング、マーケティングの各チームを増強し、公益事業全域での浸透を加速させる計画だ。今回の資金調達に加え、同社はClean Energy Venturesのベンチャーパートナーで米連邦エネルギー規制委員会の元コミッショナーのNora Mead Brownell(ノラ・ミード・ブロウネル)氏を取締役に迎える。

ブラウネル氏は「Copper Labsのチームは、電力会社が逼迫し限られた資源で将来を計画し、目的に合った供給システムを再構築できるよう支援することを使命としています」と述べた。「このチームが顧客に力を与え、より持続可能な未来のために急速に変化する外部性に適応している成熟した産業と提携するのをサポートすることを楽しみにしています」。

Copper Labsは基本的に、電力会社がこれまでアクセスできなかったデータの宝庫を解き放つ。リアルタイムデータが行動の変化の潜在的推進力となる世界では、特に重要なことだ。例えば、11日前のピーク時にTesla(テスラ)車両を充電していたと消費者に伝えても、その時点ではエンドユーザーはなぜ車を接続したのか思い出すことができず、意味がない。充電時点で、電気代や環境に対するダメージはすでに終わっている。

「これまで家庭用の需要管理プログラムは、主にスマートサーモスタットに接続し、ピーク時の負荷を軽減することを目的としていました。そうすることで、電力会社は高価で汚れたガスで稼働する尖頭負荷発電所(電力需要が急激に高まったピーク時にだけ運転する発電所)への依存を減らすことができます。しかし、スマートサーモスタットが設置されているのは米国の家庭の20%未満であり、そのうちの半数程度がこうした制御プログラムに申し込んでいるのが現状です」とフォーマン氏は説明する。「スマートサーモスタットは例えばEVの充電器など、今後発生するであろう他の問題をすべてカバーできるわけではありません。グリッドエッジのリアルタイムな情報だけでなく、ターゲットとなるユーザーを引き込むチャンネルが必要です。例えば、ピーク時に誰がEV充電器を使っているかがわかれば、電力会社にとっては価値の高い情報です。そして、その人をターゲットにして、負荷を抑えるインセンティブを与えることができます」。

Copper Labsのモバイルアプリは、住宅所有者に電力消費の最新情報を提供し、電力・水・ガスを節約するための実行可能な洞察とインセンティブを提供する(画像クレジット:Copper Labs)

既存のスマートメーターをインターネットに接続する家庭内ブリッジや、数十軒から数千軒の住宅に対応する近隣規模のソリューションなど、いくつかのソリューションがある。

「スマートグリッドのメーターには、ZigBeeホームエリアネットワークが内蔵されているものがあります。当社は安全なハンドシェイクを行い、翌日まで待つことなく約30秒間隔でデータを取り戻すことができます。設置するには、電力会社から郵送でデバイスが送られてきます。Copperのモバイルアプリをインストールし、すべてを接続します」とフォーマン氏は説明する。「これを壁に差し込むだけで、すべてをワイヤレスで行えます」。

近隣型ソリューションも同様で、有線または既存の無線ネットワークによる独自のインターネット接続が必要だ。電柱に設置し、より多くの家庭にサービスを提供することができる。

「当社の近隣レベルの装置では、1台の装置で数百軒の家庭から約1分間隔のデータを取得します」とフォーマン氏は話す。「その価値は、明らかに家庭のハードウェアコストを劇的に削減することです。消費者に何もしてもらう必要はなく、専用のブロードバンドやワイヤレスネットワークがあるので、消費者のWi-Fiに頼る必要もありません」。

クールなのは、Copperのデバイスは、太陽光発電メーターを追跡し、どのような電気が発電されグリッドに供給されているかを示すこともできる点だ。分散型の屋根上の太陽光発電アレイを可視化できない電力会社にとって、これは特に強力な独自の視点だと同社は主張する。また、このアプリは異常検知、使用状況データ、さらなる洞察をも可能にする。

「スマートメーターの有無にかかわらず、Copper Labsは迅速な意思決定を可能にすべく消費者、電力会社、スマートホームプロバイダーにとって高頻度データの宝庫を開きます」とBlue Bear Capitalのパートナー、Carolin Funk(キャロリン・ファンク)博士は述べた。

つまり、Copper Labsが解決しようとしている課題は、メーターベンダーの遅いイノベーションサイクルを回避して、古いグリッドを最先端のスマートグリッドよりも賢くすることだ。さらに、同社のソリューションは電柱に設置するため、、家庭レベルでまったく問題なく使用できる100個の電力メーターを交換するよりもはるかに安く、早く、そして環境にも配慮したものだ。

画像クレジット:Copper Labs (Merrick Chase Photography) under a license.

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi