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 2021年にはオデッセイ、レジェンド、クラリティを生産終了させたホンダだが、車種整理が加速し、不採算モデルを切り捨てていると捉えられる動きを見せている。売れているクルマに集約することで、会社として健全化を図ろうと考えているのだろうか?

 そして、N-BOXやフィットといった小さいクルマばかりに注力していると捉えられているため、一部にはホンダ=コンパクトや軽自動車の会社という認識され始めている。

 将来的には全車EV化を宣言しているホンダだが、そういった部分も含めて、今のホンダと、これからのホンダはどこへ向かうのだろうか? 考察していく。

文/渡辺陽一郎
写真/ホンダ

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■生産終了確定も! CR-V、インサイト、シャトルはどうなるのか

 今の自動車業界は激動の真っ最中で、車種についても見直しが行われている。例えばトヨタでは、コンパクトカーのポルテ&スペイド、ミニバンのエスティマ、セダンのマークXやプレミオ&アリオンを廃止した。その代わりにSUVのライズ、ヤリスクロス、カローラクロスなどの新型車を加えている。

 最近の動向で気になるのがホンダだ。オデッセイ、レジェンド、クラリティ、S660などはすでに生産を終えており、これからはCR-V、インサイト、シャトルも廃止される可能性が高い。そのいっぽうで新型車の投入は少ない。

 販売店によると「シャトル、CR-V、インサイトは今でも受注しているが、改良する話は聞いていない」という。

 シャトルは先代フィットのワゴン版として造られ、現行フィットも発売からすでに2年を経過した。現行フィットをベースにした次期シャトルが存在するなら、何らかの案内があってよい時期だが、前述のとおり販売店に改良などの話は届いていない。そうなると廃止する話にも現実味が生じる。

ワゴン市場は縮小傾向のあおりを受けたシャトル。生産終了となると、代替車種が見当たらないという人も多い

 CR-Vも売れ行きが伸び悩み、2021年の登録台数は、1カ月平均で約370台だ。ヴェゼルは約4390台だから、CR-Vはその8%に留まって将来が危うい。ちなみにCR-Vは、過去にも販売を中断したことがある。

 そのあとにSUV市場が拡大して「コンパクトなヴェゼルだけでは、オデッセイやアコードからSUVに乗り替えるお客様が満足できない」という理由によりCR-Vを復活させた。それが改めて廃止されると、もはや二度とCR-Vが国内で売られることはない。

 廃止される可能性のある車種のうち、インサイトは、2022年の中盤に登場するシビックハイブリッドに切り替わる。インサイトとシビックはボディサイズがほぼ同じだから、両車の併売は考えにくく、インサイトが終了するわけだ。

2018年12月にデビューしたインサイトは、質感が高くデザインもいいが販売面で苦戦

■ムダが多く理解しがたいオデッセイ販売終了 小さいクルマシフトが進むホンダ

 上記のような車種の整理が進むと、国内で売られる全長が4400mm以上のホンダ車は、ステップワゴン、シビック、アコードのみになる。それ以外はすべて軽自動車とコンパクトな車種で占められる。

 そしてこの状況は、今の時点でも相当に進んでいる。2021年に国内で新車として売られたホンダ車のうち、N-BOXが33%を占めた(直近の2022年2月は38%)。N-WGNなども含めた軽自動車全体になると、2021年に国内で新車販売されたホンダ車の57%に達する。そこにコンパクトなフィット、フリード、ヴェゼルを加えると85%になるのだ。

 逆にステップワゴンやシビックなどの全長が4400mmを上まわる車種は、すべてを合計しても国内販売総数の15%に過ぎない。つまりオデッセイ、レジェンド、今後行われる可能性のあるCR-Vの廃止は、「ホンダ車のコンパクト化」をさらに推進させてしまう。

 仮にホンダが現状を打開してミドルサイズ以上の車種を盛り返したいと考えていたら、少なくともオデッセイは廃止しない。堅調に売れているからだ。現行オデッセイの発売は2014年だが、2020年11月に、フロントマスクまで大幅に刷新するマイナーチェンジを実施した。その後の売れ行きは、コロナ禍の中でも伸びており、2021年の登録台数は2020年の2.2倍に達する。1カ月平均なら1760台だ。

2021年12月に生産終了となったオデッセイ。新型ステップワゴンの先行予約開始までのつなぎが必要とみて、かなりの生産枠を確保していたため、2022年3月現在でも在庫車がまだ手に入る状態にある

 この登録台数は決して多くないが、オデッセイの売れ筋価格帯が350~450万円に達することを考えれば、廃止するには惜しい販売実績だ。2020年11月に大幅なマイナーチェンジを実施して、売れ行きを伸ばしながら、1年後に廃止というのもムダが多く理解しにくい。

 販売会社から見ても、オデッセイは堅調に販売できる粗利の多い商品になる。特にメーカーの資本に依存しない地場資本の販売会社は、オデッセイに力を入れることが多い。販売店では以下のように説明している。

 「オデッセイには30年近い歴史があって知名度も高い。ホンダ車を使うお客様やご友人がLサイズミニバンを求められた時、オデッセイはちょうどいい選択肢になる。またオデッセイは、今も昔も走りのよさではライバル車をリードしている。走りで妥協しないミニバンが欲しいお客様は、歴代のオデッセイを乗り継がれている」

 このようにオデッセイは、ユーザーと販売会社の両方から愛されている大切な商品なのに、ホンダは廃止した。

 なぜオデッセイを廃止するのか、その理由をホンダの商品企画担当者や開発者に尋ねると「今まで生産していた狭山工場を閉鎖することになった」「オデッセイは高価格車だが、メーカーとしては意外に儲かっていない」といった話が聞かれる。

 狭山工場の廃止は事実だが、同工場で生産していたヴェゼルは鈴鹿製作所に移され、新型ステップワゴンも埼玉製作所で生産する。それならオデッセイも、埼玉製作所に移して生産を続ける方法はあっただろう。

 それをせずにオデッセイを廃止したのは、ホンダが国内市場を、軽自動車とコンパクトな車種で完結させようと考えているからだ。国内で売られるホンダ車の約60%が軽自動車で、そこにフィット+フリード+ヴェゼルを加えると85%に達するなら、この流れに逆らわず小さなクルマに集約すれば合理的と考えた。

2022年で生産終了が予定されている現行型の5代目CR-V。 7人乗り3列シート仕様車も設定されたがライバルのトヨタ RAV4に大きく水をあけられている

 ホンダのブランドイメージはすでにダウンダイジングを開始しており、この流れを汲み取れば、オデッセイなどに力を入れるのは確かにムダでリスクも伴う。

 そして新型ステップワゴンは、外観を穏やかに仕上げてヴォクシー&ノアと異なるリラックスできる価値観を与えた。この考え方はライバル車との競争も避けられてメリットになるが、新しいステップワゴンを象徴するグレードのエアでは、安全性を高めるブラインドスポットインフォメーションなどの装備を装着できない。

 そうなると結局は、必要な装備を得るために従来と同じスパーダを選ぶことになり、ヴォクシー&ノアと同じ土俵で勝負を強いられてしまう。

 新型になったヴォクシー&ノアは、エンジン、ハイブリッドシステム、プラットフォームを刷新させ、安全装備と運転支援機能も進化させた。新型ステップワゴンがこの強豪に立ち向かうには、価値観の異なるエアを磨く必要があるのに、それができていない。

 今のホンダ車は、居住性、内外装の造り、走行性能、乗り心地、燃費などについては、いずれも優れている。トヨタに負けることはない。しかし各グレードに装着される装備、価格設定、発売時期、販売方法などについては、ユーザーのニーズに沿っていないことが多い。

 仮に新型ステップワゴンのエアが装備の乏しい状態で発売されると、個性を十分に発揮できない。ヴォクシー&ノア、2022年後半に登場する新型セレナとの競争に負けてしまう。シビックも売れ行きを大幅に伸ばせるとは思えないから、国内市場におけるホンダの小型化は、ますます進んでいく。

 言いかえれば、ホンダがスズキやダイハツに近付くわけだが、この2社は古くから軽自動車を中心に扱ってきたから、販売店まで含めて低コストで成立している。ホンダがスズキやダイハツのように商売するのは簡単ではない。

■2024年の電動化を前に迫られる変革 その責任はメーカーにある

 そしてホンダは、2040年までに、すべての新車を電気自動車と燃料電池車にすると発表した。今後の電気自動車の動向は不透明だが、従来のガソリンエンジン車やハイブリッドに比べて、価格が高まることは間違いない。

 そうなると高価な電気自動車を日本国内で積極的に販売するには、ブランドイメージも高く保つ必要がある。CR-V、オデッセイ、さらにNSXといった付加価値の高いハイブリッド車の存在感を強め、中級から上級の電動車メーカーとしてのブランドを確立すべきだが、実際は逆方向に進んでいる。

 現状で軽自動車が60%近くを占めるから、仮にフィット、フリード、ヴェゼルがハイブリッドを中心に販売しても、ブランドイメージでは軽自動車と価格の安さが目立ってしまう。

 ホンダが直近で行うべきことは、ミドルサイズ以上の最多販売車種となる新型ステップワゴンのテコ入れだ。エアの装備充実も含めて、ヴォクシー&ノアの「オラオラ系」的な世界観との違いを際立たせる。

 シビックハイブリッドとタイプRも宣伝に力を入れ、シビック自体の販売促進というよりも、ホンダのブランドイメージ復権に主眼を置く。

 早々に手を打たないと、ホンダの国内販売は大失敗に至る。その責任は販売会社ではなく、メーカーにある。

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