コロナ禍となる以前の2019年の新車販売台数でトヨタハイエース(レジアスエース含む)は約5万7893台、対して日産NV350キャラバンは約2万551台とトリプルスコアの差となっている。
同じキャブオーバータイプの1BOX車で乗用モデルのワゴンとビジネス用のバンを設定するなど類似点が多い2台だが、人気では圧倒的にハイエースがリードしている。
2021年10月のガソリン車に続いて、2022年2月28日、ディーゼル車のマイナーチェンジを行い、車名もNV350キャラバンからキャラバンへと一新。
そこで、ここではマイナーチェンジしたキャラバンのディーゼルエンジン車の紹介と、ハイエースを上回る点をバンモデルに絞って検証していきたい。
文/萩原文博
写真/日産自動車、トヨタ
■商用車の王道を行くハイエースは安全装備を充実されるモデルチェンジ
まずはハイエースとキャラバンの歴史を振り返ってみたい。2004年8月の販売開始から約17年半というロングセラーモデルとなっている現行型ハイエース。ボディタイプは全長が4695mm(一部4840mm)のロングと5380mmのスーパーロング。全幅が1695mmの標準と1880mmのワイド、そして全高は1980mmの標準ルーフ、2105mmのミドルルーフ、2240~2285mmのハイルーフの3種類を用意している。
さらにドア枚数は4ドアと5ドア、フロア形状は標準とジャストローの2種類、乗車定員は2人、3人、5人、6人、9人乗りの5タイプ。グレードはエントリーグレードのDX、快適装備の充実したスーパーGLを用意。
搭載するエンジンは2L&2.7L直列4気筒ガソリンエンジンと2.8L直列4気筒ディーゼルエンジンの3種類とビジネスモデルらしく多彩なニーズに応えるべくバリエーションが豊富だ。
現行型ハイエースバンが、最初のマイナーチェンジを行ったのは2007年8月。外観の変更をするとともに、搭載するディーゼルエンジンを新長期規制に適合させた3Lエンジンへ変更。また、2010年に行った2度目のマイナーチェンジでは搭載するディーゼルエンジンの仕様変更を中心に、外観を変更している。
2012年4月の一部改良では、盗難防止システムのエンジンイモビライザーシステムを全車に標準装備。2013年の3度目のマイナーチェンジでは、内外装の変更に加えて様々な情報を表示するマルチインフォメーションディスプレイを全車に標準装備とし利便性を向上させた。
2014年12月の一部改良では搭載するガソリンエンジンの仕様変更とともに、ATを従来の4速から6速へと多段化させ燃費性能を向上。
そして2017年11月の一部改良では、ディーゼル車のATも6速へと多段化されると同時にレーダークルーズコントロールなどを外した衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンスP」を標準装備。
2020年4月に行った一部改良ではデジタルインターミラーを全車にオプション設定したのをはじめ、パノラミックビューモニターやインテリジェントクリアランスソナーといった運転支援装備をAT車にオプション設定するなど安全性を向上させている。
現在、ハイエースバンは車両本体価格236万3500円の2.0DX 2WDから2.8ディーゼルスーパーGLの368万5100円となっている。
■精悍なフロントマスクへと一新!! NV350キャラバンからキャラバンへ車名を変更
一方の日産キャラバンの現行モデルは2012年6月にフルモデルチェンジを行い、NV350キャラバンとして登場。ボディバリエーションは全長4695mmのロング、5080mm(標準)、5230mm(ワイド)のスーパーロング。全幅は標準幅が1695mm、ワイド幅が1880mm。全高は標準ルーフの1990mm、ハイルーフの2285mmとなっている。
4ナンバーとなるのがロングボディ×標準幅×標準ルーフ。そして1ナンバーとなる、スーパーロングボディ×標準幅×ハイルーフ、スーパーロングボディ×ワイド幅×ハイルーフの合計3タイプのボディを設定。駆動方式は2WDと4WD。
フロアは床面地上高625mmの低床と770mmの平床の2種類。乗車定員は2人、3人、5人、6人、9人の5タイプ。ドア枚数は4ドアと5ドアを用意している。
デビュー当初、搭載されているエンジンは、2L&2.5Lの直列4気筒ガソリンエンジンと2.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンの3種類。組み合わされるトランスミッションは5速ATだった。
現行型NV350キャラバンは2012年12月にワイドボディの追加をはじめ、2016年1月の一部改良では4ナンバーバンクラスで初めてエマージェンシーブレーキを採用したグレードを追加。同年11月の一部改良では、主要グレードに「エマージェンシーブレーキ」および「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」を標準装備とした。
2017年7月にNV350キャラバンは初のマイナーチェンジを実施。外観では、日産デザインを象徴する「Vモーショングリル」をよりダイナミックに強調し、力強さを表現。さらに、ヘッドランプ(ハイ/ロービーム、オートレベライザー付)、リアコンビネーションランプにLEDを採用することで精悍な印象とし、視認性も向上させている。
利便性の向上として、住宅街や深夜・早朝などで大きな音を立てずに全閉できる「バックドアオートクロージャー」や視認性に優れた液晶モニターと大きなスイッチにより操作性を向上させた「オートエアコン+リアクーラー」を設定。
そして注目のポイントは先進安全装備や利便装備の充実。バンの2WD車の一部のバリエーションのみに標準設定していた「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」、「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)[TCS機能含む]」、「ヒルスタートアシスト」をバン全車に拡大。
また、4ナンバーバンクラスで初めて「インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物・検知機能付)」を装備している。2017年11月にはバンに2.5Lガソリン車の4WD車を追加した。2020年の9月の一部改良ではマルチベッド仕様を新設定している。
2021年10月にまず、ガソリン車が2度目のマイナーチェンジを行った。外観は、フロントグリルとフロントバンパーを刷新し、よりダイナミックで力強く、存在感のあるデザインとしている。
一方、インテリアは黒を基調に、落ち着いた雰囲気を演出している。メーターは、先進的で視認性、操作性を大幅に向上した新型ファインビジョンメーター(5インチTFTディスプレイ付)を採用。ステアリングは、新形状のD型のステアリングを採用し、シートトリムは生地を刷新するなど、質感も大幅に向上させている。
2L&2.5Lガソリンエンジンに組み合わされるトランスミッションは従来の5速ATから多段化された7速ATへ変更。ワイドレンジによって、動力性能と燃費性能の両立を実現するとともに高速走行時の静粛性向上に寄与するだけでなく、追加されたマニュアルシフトモードにより、意のままのドライビングを実現している。また、運転の疲労を軽減する「スパイナルサポート機能付きシート」を全車標準装備としている。
運転支援機能では、天候や周囲の明るさに左右されにくいミリ波レーダーとカメラのフュージョン方式を採用した「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」を全車に標準装備。自動車だけでなく、歩行者の検知も可能となった。このタイミングで車名がNV350キャラバンからキャラバンへと変更されている。
■キャラバンは新型ディーゼルエンジン搭載でパワーアップ
そして、2022年2月28日にはディーゼル車をマイナーチェンジ。内外装の変更や運転支援機能の変更はガソリン車と同様だが、搭載するディーゼルエンジンは、廃棄処理に尿素SCRシステムを採用した新型2.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンへと変更。
最高出力は132ps、最大トルク370Nmを発生しつつ、燃費性能はJC08モードで13.9km/Lと従来モデルより12%向上。同時にトランスミッションは7速ATへと変更されている。
さらに今回のマイナーチェンジで専用の内外装の仕様を施した最上級グレード「GRANDプレミアムGX」を新設定した。
その一方でガソリン、ディーゼルのMT車そしてディーゼル車のワイドボディが廃止となった。
キャラバンの最新の車両本体価格2.0ロングボディDXの241万2300~2.5ディーゼルロングボディGRANDプレミアムGX 4WDの418万2000円となっている。
■キャラバンはハイエースを超えられるか
オーナーに話を聞くと、ハイエースのほうが耐久性は高い。アフターパーツが充実しているといったように販売台数と同様にハイエースが優勢だ。そんな中でキャラバンの良いポイントを挙げてみる。
まずは荷室の室内長が、4ナンバー小型商用車でクラストップの3050mmを実現していること。さらに、広くなった荷室空間を乗員と積載物とで最大限活用できるよう、長尺物を収納しても、後席に1人座ることが可能な5:5分割可倒式シートを採用していうことだ。
ハイエースは全長5,320mmのスーパーロングボディは全幅1880mmのワイドボディしか設定していないが、キャラバンは全長5230mmのスーパーロングボディでも全幅1695mmの標準ボディを設定していこと。
運転シートに、中立姿勢を維持し長時間のドライブでの疲労を軽減する「スパイナルサポート機能付きシート」を全車標準装備していること。またシート表皮にウイルスや菌の増加を抑制する抗菌加工を施したシートバックとクッションを採用していることが挙げられる。
そして、今回のマイナーチェンジでディーゼルエンジンはアドブルー(ドイツの高品位尿素水の登録商標。一般的にはディーゼルエグゾーストフルード:DEF、または規格名のAUS32で呼ばれる)対応となったことで、環境性能も向上している。
こうして見ると、利便性やドライバーの快適性などにおいてはキャラバンのほうがハイエースを上回る実力を持っていると言えるのではないだろうか。
【画像ギャラリー】最新型のキャラバンとハイエースの画像をこれでもか!! と一挙掲載!!(39枚)画像ギャラリー投稿 マイナーチェンジで三菱製ディーゼル搭載! ついにキャラバンは王者ハイエースを超えたのか は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。