新古車はお買い得というイメージを持っている人は多いと思う。新古車とは、新車同然の状態でありながら中古車に位置付けられるクルマだ。ただし、一定の条件を満たした場合にのみ市場に出回るため、簡単に購入できるわけではない。
では、新古車はどうしたら手に入れられるのだろうか？ また、新古車は本当にお得なのだろうか？ この記事では、ディーラーの営業マンだから知っている、新古車の基礎知識をご紹介しよう。
文／関谷明日香、写真／トヨタ、ホンダ、写真AC
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新古車とは、新車同様の中古車のこと
実は新古車というのは正式名称ではない。過去には、販売店がディスプレイや試乗車用に新車登録したクルマや、一度販売されてナンバーを取得したが、買い手がすぐ売りに出したため距離もほとんど走っていない新車同様の中古車が新古車として販売されてきた。
しかし現在では、新古車という名称は新車との区別がつきにくく混乱を招くとして、「登録済未使用車」や「届出済未使用車」と表示するルールが決められた。ただ、このルールが適用されるのは自動車公正取引協議会としいう組織に加盟している販売店だけで、加盟していない店では、いまだ新古車の表記をしていることもある。
新古車は、ディーラー（新車販売店）や中古車販売店、新古車専門店などで買うことが可能だ。ただし、ディーラーでは新古車として店頭で販売していることはほとんどないため、ディーラーで新古車を買う場合は、直接ディーラーに在庫があるかを問い合わせる必要がある。
ちなみに、ディーラー以外で新古車を購入するのは不安な場合は、「新古車」と表示されているものではなく、「登録済未使用車」や「届出済未使用車」と表示されているものを選ぶようにするといいだろう。
新古車のメリットとデメリット
お買い得感が高い新古車だが、人によっては新古車を選択することが合わないことも。まずは新古車に飛びつくのではなく、メリット、デメリットを理解しておくことが、後になって「失敗した」と後悔しないためには必要だ。
新古車購入のメリット
■本体価格が安い
新古車は新車に比べ、書類上は中古車扱いになるため安く購入することができる。新車にほぼ近い状態の軽自動車の場合で比較すると、新古車は新車本体価格よりも約10％（10万～20万円）安くなっていることもある。軽自動車は普通車に比べ車体本体価格が安く、ディーラーの儲けが少ないことから新車で購入する際には値引きをあまりしてくれない。そのため軽自動車こそ新古車がお薦めだ。
■納期が短い
新車の納期は早くても1～2カ月。人気の車種によっては1年弱待たなくてはならない場合も。加えて最近では、新型コロナや半導体不足の影響で納期はさらに長くなっている。反面、新古車はすぐに乗れる状態にあるので、条件さえ整っていれば３日から1週間もあれば納車が可能。今すぐにクルマに乗りたい人には大きなメリットだ。
■初期費用が抑えられる
クルマを新規登録する際には「自賠責保険」「自動車重量税」「自動車税」を支払う必要がある。しかし新古車の場合、ディーラーがそれらに関しては支払い済みであるため、基本的には購入者は支払いが不要となる。そのため、初期費用を抑えることが可能となる。
■保証プラス安心が付いてくる
車種にもよるが、新古車は新車と比べて20万円から50万円ほどお得に購入できる可能性がある。登録済み、新車同様のクルマを安く手に入れられるなんて、新古車はお得に感じられる。また、新規登録から2年、または3年未満のクルマであればメーカーの新車保証が継承できる場合もある。保証もそのまま付いてくるうえ、金銭的なお得だけでなく安心もゲットできる。
新古車購入のデメリット
■選択肢が少ない
すでにある在庫から選ぶため、自分の欲しいカラーや、グレードを見つけるのは難しい。人気の車種となればその競争率は宝くじ並み!? 車種もカラーもグレードも自由に選べないところは大きなデメリットと言える。
■ワンオーナーカーではなくなる
中古車店では、これまでのオーナー数を重視することがある。新古車の場合、ディーラーから購入したとしてもワンオーナー車ではなくなる。最初にディーラーが所有者として登録をしており、その後に購入するため、書類上は少なくとも2人目以降のオーナーということに。そのため、クルマを売る際に下取り価格が下がってしまう可能性がある。
■メーカーオプションが付けられない
製造時にしか取り付けられないメーカーオプションは付けられない。気に入ったメーカーオプションがあったとしてもそのクルマに装備されていなければ後付けはできないため諦めなければいけない。メーカーオプションを選びたいという人は新古車は不向きだ。
ただし、すでにある程度のメーカーオプションが付いていることもあるので根気強く探すのもアリ。希望のメーカーオプションが付いていれば、新車に取り付けるよりも安く済むので、その場合は逆にメリットとなる！
新古車を手に入れやすい時期は？ 車種は？
新車同然のクルマとして人気の高い新古車。ただし、いつでも在庫があるわけではない。さらに、選べる新古車の種類が多いほうが嬉しい。では、いつなら新古車が購入しやすく、どんな車種を検討すれば選択肢が広がるのだろうか？
■手に入れやすい時期
新古車の購入に適した時期としては、決算期を過ぎた4月または10月が挙げられる。ディーラーや自動車販売店が、決算期に売れ残った新車をノルマ達成するために買い取って在庫とし、それらを新古車として売りに出す時期だからだ。
ボーナス商戦の時期でもある７月と12月もディーラーが新車購入のキャンペーンなど活発に企画し、売り上げを伸ばそうとする傾向にあるため、新古車を見つけるのにお薦めの時期だ。
■モデルチェンジする車種を狙え！
クルマのモデルチェンジは一般的に2〜3年。ディーラーとしては新モデルが販売される前に旧型モデルの在庫をなくしたいと思っている。ここが狙い目。
処分しきれない旧型モデルを新古車として売りに出すこともあるので気に入った車種がモデルチェンジするようなら、その少し前の時期を狙ってみるのがお薦め。上級グレードのクルマが安く手に入るかもしれない！
損をしないための新古車の選び方
ここまでの解説だとお得な感じしかしない新古車だが、さらなるチェックは必要。では、ここからは新古車を探す際の注意点を解説しよう。
■走行距離のチェックを忘れずに！
新古車の一般的な走行距離は数㎞~数十㎞程度。しかしなかには数万㎞~数十万㎞のように長くなっているものもあるので要チェック。走行距離が多い場合は試乗車だったのかもしれないので、必ず確認しよう。
ただし、走行距離が多ければそれだけ価値は下がるので、逆に交渉をすると値引きをしてもらえる可能性大。損をしないためにも走行距離は必ず確認を。
■手放すことも考えれば人気車種を選びたいが……
クルマは車種やグレード、カラーによって需要に差が出る。売ることは考えず乗り潰すぞ！ と思ってる人には関係ないだろうが、将来売ることも視野に入れて新古車を選んでる人はリセールバリューが高い車種を選ぶことをお薦めする。
ただし、「リセールバリューが高い車種＝人気がある」なので競争率は高く、見つけるのも大変で、しかも購入の際の値引きは期待できない。
まとめ
競争率の高い新古車市場。そのなかでも保証面でも安心なディーラーの新古車情報はネットやチラシではほとんど出回らない。より確実にディーラーから新古車を購入したいと思っている人は、定期的にディーラーに出向いて情報収集するなどが必要となる。また、ディーラーとの良好な関係性を築くことも、条件の良い新古車を手に入れるコツと言える。
投稿 ディーラーの営業マンが解説！ 新古車ってどうやって手に入れられる？ ホントにお得？ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。