スズキ バレーノはおそらく日本の自動車史上初のインド産のモデルであった。スイフトの兄貴分として国内販売をスタートしたが、これがまた日本においては不発に終わった一台である。だが、わずか141万円~という低価格であったうえ、今でも十分通じるほどの先進機能を標準装備していたとあって、コスパ最強モデルであったのだ。
筆者:ベストカー編集部/写真:スズキ
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■スズキ版レクサスがインドに存在する!? バレーノは高級車だった
2016年に衝撃の日本デビューを果たしたスズキ 初代バレーノ。何が衝撃的か? といえば生産がインドで行われており、それを日本に輸入される形で導入されたことである。長い日本の自動車史を振り返ってもインド産のモデルはほとんど存在しないのだった。
ちなみにインドにおいてスズキ(マルチスズキ)はネクサなる高級車ブランドを2015年より展開している。イメージとしてはトヨタに対するレクサスという位置づけで、バレーノはその第一弾モデルとしてデビューし、それが日本にも2016年に導入されたワケだ。
インドのスズキはイグニスやスイフト、ワゴンR。そしてかつてのジムニーを彷彿とさせるジプシーなるモデルを販売しており、かなり魅力的なラインアップで勝負しているのだ。
■141万円~という衝撃価格! 装備内容は文句なし
インド産というだけでなく、装備内容。そして141万円~という価格も衝撃的であった。衝突被害軽減ブレーキや先行車を任意の車間距離と速度で追従してくれるアダプティブクルーズコントロールを全車標準に。どれも今となっては当たり前の機能たちだが、これが2016年に、しかも低価格で提供していたことに当時は感動すら覚えたのだった。
初代バレーノは全長3995×全幅1745×全高1470mmと3ナンバーサイズで登場。イメージとしては5ナンバーサイズのスイフトよりも少し大きい兄貴分的な立ち位置である。デビュー当時は1.2LエンジンにCVTを組み合わせたXG(141万8000円)と1Lターボに6速ATを搭載したXT(161万7840円)がラインアップされていた。装備とボディサイズを考えればバーゲンプライスともいえる内容であったのだ。
■バレーノ最大のキモはボディサイズと後席の広さだった
当時スズキディーラーで新車販売員として働いた筆者は、入社して最初に販売したのもこのバレーノであった。価格や装備を考えれば魅力的ではあるものの、最大のキモはスイフトなどの既存モデルとどのように差別化をしてユーザーに進めていくのか? がカギとなった。
スイフトとの最大の違いはボディサイズであり、とくに後席の広さにあった。そのためファミリー層などリアシートの使用頻度が高い方に積極的にオススメをしていく。そして価格の安さを訴求していくカタチとなった。
店舗に訪れるユーザーはバレーノに触れて、後席とラゲッジルームの広さなど使い勝手の良さ、そして低価格であることに対し非常に好意的に受け入れている印象であった。
■安くて装備も超十分なのに何故売れない!? 理由は2つあった
にもかかわらずヒットにつながらなかったのはなぜか? 言わせれば大きく2つの要因があると考える。
インド生産って本当に大丈夫なの? そしてグレードやボディーカラーによっては他のモデルよりも納車まで時間を要してしまうといった不安要素が少なからずあったことを記憶している。
そして内装の質感に対する意見も相当数あった。当時のライバルといえば同社のスイフトやトヨタ ヴィッツ、ホンダ フィットであったが、それらと比べるとダッシュボードやインパネまわりの質感に対して見劣りしてしまうというのも事実であったのだ。
上記のような経緯もあり、バレーノは2020年3月に日本市場で販売終了という結末となった。だが、2022年月にインドで新型バレーノがデビューを果たした。初代モデルよりも若干全長を抑え、コネクテッド機能などを搭載することが明らかとなっている。
現状日本市場へ再参入する予定はないというが、低価格で勝負。あるいはインド市場で初代モデルにラインアップされていたスポーツモデルを導入し、スイフトスポーツの兄貴分といったイメージで勝負するのもアリなのではないか!? どちらにしてもバレーノの展望に期待したい。
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