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ツイッターでこの週末、著作活動をしている男性とみられるアカウントが「内閣情報調査室(内調)は元々20名程度の人員だったのが、安倍政権から200名を超える組織に肥大している」と投稿し、拡散したが、ネット民や政界関係者などから実態は違うと指摘される一幕があった。

2019年12月、首相時代、記者団の取材に応対する安倍氏(首相官邸ツイッター)

この男性は「内閣情報調査室(内調)は元々20名程度の人員だったのが、安倍政権から200名を超える組織に肥大している」との持論を示した上で、「これは何を意味しているか?おそらくその実態は、映画「新聞記者」で描かれているものと大差ないだろう。つまり諜報機関。政権に不都合な人物を摘発するためのもの。民主主義とは相容れない」と、内調が独裁国家の“秘密警察”のような役割をしているとの見解を示した。

日本は欧米と比べ、政府の情報機関の体制が脆弱と指摘はされてきたが、たった20人の規模で運用されていた時期はあるのだろうか。この男性がいう安倍政権とは、第1次政権(2007年9月〜08年9月)、第2次政権(2012年12月〜19年9月)のいずれを念頭に置いているのは不明だが、第1次政権の前任となる小泉政権時代の2004年11月4日、参議院の内閣委員会で内調の定員に関する質問が参考になる。

名前を持ち出すのはやや微妙な感じだが、当時、参議院議員だった自民党の秋元司氏(のちに衆院転出、現在はIR汚職事件で公判中)が国際テロや北朝鮮の工作活動などへの危機管理体制をテーマに政府側に質問し、内調について「どのような体制になっていらっしゃるのか」と尋ねたところ、政府側は伊佐敷眞一・内閣審議官(当時)が、人事や予算を行う「総務部門」、国内情勢の情報の収集・分析を行う「国内部門」、対外情報を担当する「国際部門」などの組織体制を説明した上で、

この部門、合計いたしまして約160名の体制で臨んでおります。

と答弁。これに秋元氏が「俗に言うプロパーとして雇い入れた人の数と、そしてまた出向でお願いしている数、その割合、ちょっと教えてもらえますか」とさらに尋ねたのに対し、伊佐敷氏は

現在の職員は、先ほど約160名と申し上げましたが、厳密には165人でございます。このうち内閣情報調査室採用の者が73名、それ以外の者は関係省庁からの出向でございますが、重立ったところを申し上げますと、警察庁が42名、公安調査庁が15名、防衛庁が9名、内閣府が7名、海上保安庁が6名、外務省が3名、以下2名ないし1名の省庁が幾つかございます。

と補足した。この委員会の質疑では、アメリカCIA(中央情報局)の総員数を公開していないことも話題になっており、むしろ厳密な定員数まで明らかにした日本政府の“サービス過剰”が保安的に大丈夫なのか気になる程の回答ぶりだ。

首相官邸(fujikiseki1606/PhotoAC)

いずれにせよ、冒頭の男性が認識しているように、「かつての内調20人体制→安倍政権時代に200人体制」というストーリーは大きく事実関係と異なり、ネットメディア界でファクトチェックを売り物にしているバズフィードジャパンなどが検証すれば、今回のツイートは「誤り」と判定されそうだ。すでにネットでは男性に対し、

現実と妄想がごちゃまぜになっている

興味があるなら内調について書かれた本を2、3冊お読みになればいい

などのツッコミが殺到している。

この男性と同一とみられる人物が電子書籍で積極的に執筆活動をしており、2年前の6月に開設したツイッターアカウントでは、これまで安倍政権を非難する内容の投稿をたびたびしている。バズフィードは左派系の発信者のファクトチェックは、保守系に比べると、以前から積極的に行っていないのではとの指摘が絶えないが、そもそもバズるネタではないとみて関心がないのか、別件で忙しいのか、14日15時現在、記事にしていないようだ。