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売れてます!! アクアはやっぱり強かった!! 激戦コンパクト市場で異様な存在感を放つ実力と課題

 2021年7月19日にフルモデルチェンジとなった、トヨタ「アクア」。発売開始直後の8月は9,442台を記録、その後は7,000台~10,000台の登録台数を維持しており、デビュー1年目の新車としては、上々の成果を上げている。

 身内のヤリス(ヤリスクロス含む)やノート(ノートオーラ含む)、フィットといった競合ひしめくコンパクトカーにおいて、後発となった新型アクアが、なぜこれほどまでに選ばれるのか。アクアの強さの秘訣とともに、今後の課題についても、考察する。

文:吉川賢一
写真:トヨタ、ベストカーWEB編集部

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ユーザーの要望を見事に具現化した

 2011年12月にデビューした先代・初代アクアは、デビュー翌年に販売台数2位(26万6567台、月平均で2万台超)を獲得後、2013年から2015年まで連続して首位を獲得、以降も毎年10万台の登録台数を記録してきた。当時の勢いは身を潜めたものの、新型となった今でも新型アクアの人気は健在だ。

 新型アクアの強さの秘訣は2つ。ひとつめは、使い勝手のよさだ。ヤリス(ヴィッツ)とプリウスの間を狙った、丁度よいサイズのアクアは、初代と同様、5ナンバーサイズを死守しながらも、ホイールベースを50ミリ伸ばし、後席の居住性を改善している。

 開発責任者によると、「自動車は世代更新する度に、ボディサイズが大きくなってしまうのがセオリーだが、アクアに課せられた使命である「使い勝手のいいハイブリッド車」を維持するためには、5ナンバーに拘った。」という。そのうえで、車内の空間は、最大限大きくなるよう工夫されており、特に後席などは、大人二人が座っても窮屈さは感じにくい。友人、知人とのドライブなどにはうってつけだ。

 ふたつめは、「燃費のよさ」だ。カタログ燃費は、初代比で約20%向上のWLTCモード燃費35.8km/L(市街地36.5、郊外39.5、高速33.5 ※Bグレード)にもなる。筆者が試乗したときの実燃費は、山坂道で結構アクセルを踏み込むような厳しいシーンでも、20km/L近くを維持できていたので、一般道をメインに使うならば25km/Lは余裕で叩き出せるはずだ。燃費を理由にクルマ選びをする方には、絶好のモデルだろう。

 ちなみに、カーボン排出レベル(CO2排出量)は65~77g/km(WLTCモード)だ。他社車が「CO2排出量95g/km」の基準を必死に達成しようと躍起になっている中で、これほど低いCO2排出量のコンパクトハッチは見たことが無い。

 他にも、インパネ最上段に10.5インチ大型ディスプレイオーディオを置くなど、先進性も高められている。電気ポットやドライヤーなどの家電製品を使うことができるAC100V 1500Wまでのアクセサリーコンセントと、非常時に電力を取り出せる給電モードも全車標準装備した。万が一の際に役立つ給電機能を標準にしたことは、新型アクアのひとつのポイントだと、トヨタは説明している。

4050×1695×1485(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2600mm。初代アクアの外寸のまま、ホイールベースを50mm延ばし、後席のスペースを拡大した

代り映えしなかったエクステリアとエンジンノイズの対策は課題

 こうした強さの反面、不足と感じるのが、エクステリアデザインと、走りの質感だ。社用車としても広く使用されてきた初代アクアのイメージを強く引き継いだエクステリアデザインは、新型アクアのネックとなっているようにも感じる。

 初代アクアでは、2度の大きなマイナーチェンジのたびに、フロントフェイスの意匠を微修正してきた。同時に、Xアーバン(2014年12月~)や、クロスオーバー(2017年6月~)などの変化球モデル追加し、常に鮮度を保つよう、手が加え続けられてきた。「飽きられる前にデザインをブラッシュアップする」ことで、長く愛されるモデルとして、君臨することができたと考えられる。

 また、エクステリアデザインだけ見れば、新世代の日産を象徴するアリア顔となった新型ノートや、スタイリッシュな顔つきから一気にかわいい顔となったホンダフィットなど、魅力的なライバルも多い。当然ながら、数年後のマイナーチェンジでテコ入れを行うと思われるが、初代アクア程のスタートダッシュ(デビュー翌年に26万6567台登録)ができなかった理由には、代わり映えしなかったデザインが影響しているのではないだろうか。

 また、やや残念だったのが、走りの質感、主に「エンジンノイズの対策」だ。高速直進性やコーナリング、乗り心地、ロードノイズに大きな不満があるわけではない。最新のプラットフォームGA-Bは、骨格結合構造の最適化を行い、超高張力鋼板を用いて軽量化と高剛性化を実現している。

 また、吸遮音材を適切に配置したことで、高速走行時の会話明瞭度は15%向上、乗車時停車中のノイズは1dB(約10%)低減した(トヨタ発表)という、進化の度合いは感じられるのだが、定常走行時と、加速時の騒音レベルのギャップが大きい。

 ワインディングのアップダウンのようなところを走ると、登坂時は相当、アクセルペダルに力を入れて頑張る必要がある。加速に必要なパワーはきちんと出てくるのだが、エンジンは常にうなりを上げている状況だ。

関東地方でも随一のワインディング、箱根ターンパイクで試乗中の新型アクア。加速時、そして下りでは、エンジンのノイズが大きめに車内に鳴り響いていた

 新型アクアから採用となる「バイポーラ型ニッケル水素電池」は、約2倍のバッテリー出力を実現するというが、燃費向上の方に割り振られているため、単純に加速力が2倍になるわけではない。エンジンノイズが盛大に入ってくるのは、ちょっと期待外れであった。

 ただ、平坦な路面へと出ると、微小な風切り音程度のノイズレベルにグッと下がり、車内は無音に近い静粛性となる。この、エンジン始動・停止のノイズレベルの落差が非常に大きいことで、新型アクアは「走りの質感」を大きく損ねているように感じられ、ここはひとつの課題といえる。

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 先代アクアは、若者世代にも受け入れられてきた。プリウスからのダウンサイザーも多い。同じコンパクトカーでも、身内であるヤリスはパーソナルな活用に適したモデルであり、アクアはファミリーユースにも適したモデルだ。そしてサイズも価格も上級のプリウスと、トヨタ内ではしっかりとキャラ分けができており、トヨタ内でのつぶし合いは存在しない。

 使い勝手や低燃費、198万円(2WD、Bグレード)~の手ごろな価格など、すべてが良い方向に進化した、新型アクア。今後の動向が楽しみだ。

200万円を切るBグレードは、法人用途やレンタカー用途などに使われることが多い。実際は、上級グレードの「G」や「Z」が売れ筋となっている
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