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 2021年8月に発表・発売されたランドクルーザー300。だが、月に700台製造されるのに対して、推定受注累計は約3万台、現在の納期は4年以上にも及ぶという。

 にも関わらず、なぜユーザーはキャンセルすることなく待ち続けるのか? なぜトヨタは生産が間に合ってないのに受注活動を止めないのか? 通例ランクルの発表の1年後となるランクルプラドはどうなるのか? 流通ジャーナリスト・遠藤徹氏が探る。

文/遠藤 徹、写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】最大で納車5年待ち! 3年後の残価価値は驚異の67%!? 人気過ぎて生産が追い付かないランクル300をギャラリーでチェック(35枚)画像ギャラリー

■サプライヤーからの半導体供給不足により、組み立て台数を増やせず

2021年8月2日に発表、発売した「新型ランドクルーザー300」が好調な受注推移を見せており、納期は4~5年以上となっている。半導体不足を始めとした部品の供給が滞っており、生産が進んでいない状況が続いている

 トヨタが昨年8月2日に発表、発売した「新型ランドクルーザー300」が依然好調な受注推移を見せており、この2月初め現在の納期は4~5年以上となっている。

 国内向けの月販計画は700台となっているが、これに対して推定受注累計は約3万台であるから、4年以上待たされることになっている。

 ふつうに考えると新型車の受注台数が生産販売計画を大幅に上回るほどの多数に達すると増産し、納期を早めるようにしないとユーザーは待ちきれずにキャンセルが続出し、メーカーや販売店は困ることになる。

 ところが、今回のランドクルーザー300は増産できない事態に直面している。サプライヤーからの半導体を中心とした部品の供給が滞り、組み立て台数を増やせない状況にあるのだ。販売店の受注活動自粛で調整すればよいのだが、これをすると販売の勢いがそがれる。

 そうなるとダメージが大きくなるために受注活動を続けているので、余計に納車が先送り状態になっているのである。メーカーのトヨタでは1台でも多く生産するため、やりくりして部品の供給を正常化すべく努力している状況なのである。

■リセールバリューも魅力。すべてが新しくなったランクル300

新型ランクルは新開発のGA-Fプラットフォームを採用、高張力鋼板の採用を拡大、各部のアルミ化、最新の溶接技術を活用したことで、剛性向上かつ200kgにも及ぶ軽量化を達成した。ボディサイズは全長4950mm×全幅1980mm×全高1925mm、ホイールベースは2850mm

 一般的には新車を成約するとおおよその生産予定と納期が提示される。4年以上の待ちとなれば、車検の時期が来てしまうので、車検を取り直しせざるを得なくなる。あまり待ち期間が長くなると待ちきれず、キャンセルしほかの車種に切り替えることになる。

 ところが、今回のランドクルーザー300の場合は我慢して待っているケースがほとんどとなっている。現在までのところ多くが歴代ランドクルーザーの既納ユーザーで占められている。

 ランドクルーザー300の人気の高さはトヨタの新しいクルマづくりの考え方である「TNGA」による新開発のプラットフォームを採用、クォリティアップ、一段と磨きをかけた高い走破性を実現したフルタイム4WD、最新のデバイスを盛り込んだ安心、安全パッケージの「トヨタセーフティセンス」、高いリセールバリューなどが上げられる。

 このうちの高いリセールバリューは残価設定クレジットで支払いを組んだ際の残存価値で示される。例えば3年後だと67%、5年後は54%となっており、クラウンよりも15ポイント以上も上回っている。

 また、ランクル300のリセール価値はこれだけではない。どういうルートで流れているのか明確ではないが、早くも中古車オークションで現行モデルが出品されている。

 最上級のGRスポーツ(車両本体価格770万円)が80万円強のオプション&付属品を装着したフル装備状態で、1500万円程度の落札でプレミアム価格がつけられたという情報もある。現行の新車に対して600万円ものプレミアムがついたことになる。

■新型含め歴代ランクルは「購入後1年間転売禁止」

 現行ランドクルーザー300が発売された当初、トヨタはランクル300を扱うトヨタ系列店に対して「成約したユーザーに対しては購入後1年以内に転売しないように証約書を書いてもらってほしい。」と依頼している。これはどういうことか。

 購入後他に業者が転売すれば、購入時の価格より高く売れて商売になり、これが悪い慣習を生みかねないとの配慮によるものだった。こうした事象は歴代モデルでもあった。

 業者がランドクルーザーをまとめ買いして、輸出業者に転売する。海外などで売りさばけば購入時の2倍以上で売れるので、商売になるからだ。

 海外で売られ、故障などのトラブルがあれば、メーカーのトヨタは対応できず、企業や商品のイメージダウンにつながりかねないとの判断もある。

■販売店はなぜ受注活動を続けているのか ユーザーはなぜキャンセルしないのか

 多数のバックオーダーを抱えているのに増産対応ができない現状なのにトヨタ販売店はなぜ受注活動を続けているのか。

 コロナ禍が収束し、半導体を中心とした部品の供給が整えば増産が可能になる。それがいつになるかはっきりしないので、とりあえず受注活動を続け、ユーザーに待ってもらうスタンスなのである。

 販売店にとっては成約してもナンバーを取得して納車をしないと代金を徴収できない。そうなるとメーカーへの仕入れ金が払えないので困ることになる。

 ただ、このあたりは販売店各社にとってはいろいろな対応があるようだ。基本的には成約し、ナンバーを取得して納車しないと代金は徴収できない。

 ところが、なかには成約した段階で100万円程度を前受け金で徴収し、キャンセルが発生しないような縛りをかけるケースもある。

 ランドクルーザー300クラスのユーザーは多くが年収2000万円以上の高額所得者であり、複数のクルマを所有しているので、納車待ちはあまり苦になっていないのが現状である。

■プラドは通例ならランクルの1年後。今回はどうなる?

トヨタはこれまでランクルの新型車投入から約1年でプラドのフルモデルチェンジを行ってきた。しかしランクル300の納期が4年以上となると次期型プラドの投入は遅れる可能性が高い。実際首都圏トヨタ店営業担当者はプラドのフルモデルチェンジの話は聞いていないという

 さて、これまでトヨタは歴代ランドクルーザーの新型車の投入から約1年後に弟分のランドクルーザープラドのフルモデルチェンジを実施してきた。

 この慣習を今回も引き継ぐとすれば、次期型ランドクルーザープラドは今秋の発売ということになる。ランクル300の納期が4年以上だと、次期型プラドの投入スケジュールはどうなってしまうのだろうか。

 首都圏にあるトヨタ販売店筋によると、「今年のトヨタのニューモデル販売計画は夏から年末にかけてシエンタ、クラウン、プリウス3車種のフルモデルチェンジのみでランドクルーザープラドの一新は聞いていない。ランクル300の納期遅れがあるので、重なってしまうので2023年以降に先送りされていると思われる。」(※証言:首都圏トヨタ店営業担当者)と打ち明ける。

 同モデルの開発プロジェクトは動いているので、ランクル300の納期短縮にめどがついたタイミングを見計らって投入することになりそうである。

 ランドクルーザー300の納期が4年以上と大幅に遅れているのは、販売店にとっては困ったことだが、引っ張りだこの人気ぶりはありがたいことだ。

 受注を継続しているのは、増産対応をどうするかトヨタが常に検討しているからだ。それだけお客さんとの商談機会が増え、ほかのモデルを薦めるきっかけにもなる。

 今のところ歴代ランドクルーザーからの代替え希望がほとんどだ。車検の時期が来れば、受けてから待ってくれるケースが多い。複数保有ユーザーがほとんどで待ってくれている。希望グレードはGRスポーツかZXの上級グレードで占められており、ガソリン車が大半でディーゼル希望者は少ない。

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