世の中で「働くクルマ」にはさまざまタイプがある。もちろん、農業機械もそのひとつ。さまざまな収穫物に対し、それぞれ必要とされる機械は無数に存在している。
今回は、米の農業を支える代表である「トラクター」、「コンバイン」、「田植え機」を紹介していく。それぞれの魅力と価格について解説していく。
文/末永高章、写真/井関農機、ヤンマー、クボタ
【画像ギャラリー】お米作りに欠かせないイセキ、ヤンマー、クボタの農業機械を写真で見る(15枚)画像ギャラリー農業機械にもさまざまな種類がある!! まずはトラクター!
自動車と同じようにホイールで前進・後退・操舵を行なうものの、自動車ではなく、はるかに複雑な形状をしている農業機械。田畑近くの道を走っていると、道路を徐行とはいわないまでも低速で走っている姿に遭遇する、アレだ。
北海道のように広大な大地にあるプラントでは、巨大な農業用機械も活動しているが、そのほかの土地ではバイクのような2つのグリップを握って、作業者が機械の後方から歩いて操作するタイプのトラクターから、大きめのSUVといった感じのサイズ感のイメージと思われる。
農業機械にはその仕事によってタイプがあり、田畑の地面を耕すトラクター、田んぼで稲を植える田植機、実った作物を刈り取るバインダー、脱穀するハーベスター、バインダーとハーベスターの仕事を同時にこなすコンバインなどがある。
もちろんさまざまな収穫物に対し、それぞれ必要とされる機械は無数に存在しているが、ざっくりと代表的なもの、わりと目にするものはこんなところだ。
今回の注目ポイントは価格。これら、農業用機械はいったいおいくらくらいか、という話だ。サイズや能力によって幅があるのはもちろんだが、どう考えても普通の自動車よりは高いだろうな、というのはイメージできる。
まず、トラクター。耕耘機とも呼ばれるが、ベストカーWebなので乗用タイプでいえば、もっとも小さめのもので130万円くらいからだ。これは、クボタのJB13XNというモデルで、13.5psのオープンエアタイプだ。同様にヤンマーだとYT118、イセキならTQ3などがラインナップされている。
ということで気になるのは最大機種。正直、欧米の広大なプラント用に建造物のような機械も活動しているというが、現実的に日本で、ということでもかなり巨大なモデルが用意されている。
クボタではM7。170psのエンジンを搭載し、価格は最高グレードで2750万円ほどだ。ボディサイズは全長4760×全幅2485×全高3125(mm/すべて最大モデル値)と、小振りのバス並みだ。トランスミッションはノークラッチ有段変速と無段変速が用意され、いずれも2ペダルのイージーオペレーションを可能としている。
堅牢なキャビン内には、サスペンションシートを装備したコックピット。ホイール式ステアリングを中心として、オペーレーションの多くをタッチパネルで操作でき、作業器でもあるタイヤサイズは前:540/65R28 後:650/65R38。これをエアサスで支える。乗用車とはスケール感がまったく異なるが、すべてが人類の食を支える性能なのだ。
2つの機能を兼ね備える便利な「コンバイン」!!
続いては刈り取り&脱穀を1台でこなす、いわばプラントのフィニッシャーたるコンバインだ。こちらも迫力ある仕事っぷりが魅力の機械。トラクター同様に小〜大までラインナップされているが、最小クラスだと、ヤンマーのYH211では全長2720×全幅1470×全高1475(mm)という軽自動車より小さい。農業機械で小型のものは、キャビンの内オープンエアのコックピット仕様だ。
エンジンパワーも10〜14ps、価格は200万円以下の設定。刈り取るレーン数も多くが2条〜3条となる。
そして最大クラスのものになるとヤンマーのYH7115が7条刈りで最大クラスのものとなる。全長4830×全幅2460×全高2775mmというボディサイズで、115psのエンジンでクローラーを駆動する。価格は2000万円超となる。
またコンバインは収穫期のため、重要なスペックにタンク容量という項目がある。刈り取った稲を脱穀した籾を車体内にストックする容量だ。YH7115のの場合、2000Lという数値を誇っている。
刈り取り作業を進めながら脱穀し、収穫物を自車体内にストック。満杯になったらトラックの荷台などに放出し、これを繰り返すわけだ。なのでタンクにストックした収穫物を排出する能力も重要だ。同機の場合は満杯のタンクを90秒で排出する。
なお、刈り取りと脱穀を同時に行なうコンバインという機械がありながら、刈り取り機であるバインダー、脱穀機であるハーベスターが存在しているのは、もちろん両方の能力は不要、という理由があるためだ。
カマキリの前脚のようなアーム!? 田植え機とは?
そして田植機。農業の行程の最初の方に登場する機械で、動画などに見たことがある人も多いと思われるが、カマキリの前脚のようなアームを使って、稲をサクサクと田んぼに植えていく、あの機械だ。こちらもコンバイン同様に、同時に作業するレーンの数が多いほど大型のものとなる。
小型のものは歩行タイプで、2条植えタイプ。これだと50〜70万円台の価格だ。この田植機はサイズによる価格帯は意外と狭く、最大級の10条植えでもクボタのNW10Sで588万円、8条植えながら上級機種となるNW8SAで687万円といったところ。ボディサイズは全長3410×全幅2235×2730mm。意外にも華奢な印象だ。
エンジンも1.2リッタークラスで28ps程度と非力だが、もちろんそれはこの程度のパワーがあれが十分というもののため。
ただこの田植機は自動車目線で見ると、苗を積載するトレーが配置されているという事情から、もっとも奇妙な形をしており、ホイールも耕地に干渉しないように細く設計されていたりと、いまひとつ格好は良くはない。
しかしいざオペーレーションに入れば、その動きによる働きっぷりは他を寄せ付けない“一所懸命”感があるので侮れない。
これら、大費用的といえる農業機械を価格で見ると、高級乗用車と並ぶ数字となるモデルが多く存在していることがわかった。国内で普通に販売されている機械を紹介したが、これ以上のサイズやスケールのものだと、海外仕様機や輸入品(逆輸入品)となり、今回紹介したモデルの2〜3倍の価格となるモデルも普通ある。
■まとめ
ココで紹介したものは自動車ではなくあくまでも機械だが、乗用使用するものならクルマ好きのメンタルにも響くと思われ、ならば「働く自動車」のカテゴリーに収めてもいいとも思える。
働く自動車は、それ自体がお金を稼ぐための設備でもあるため“利益が出る”ことから、ある意味、高級乗用車よりも優れた存在なのかもしれない。
いま、大規模なフィールドで動いている農機や建機などの走行系機械は、オペーレーターがこれまでの用に乗車して作業を行うという形式から、自動運転化へと進んでいる。それはドローンによる地形撮影に始まり、GPSでの位置情報の取得や、マッププログラミングによるもので、「スマートコンストラクション」「スマートオペーレーション」と呼ばれるものだ。
職業としている方には優れた能力に間違いないが、こういった機械を操縦することへのロマンも大切にしたいものだ。
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