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空振り上等! 気合いは充分でした! 売れなかったけど痺れたクルマ6選

 かつて登場し、とんでもなく個性があった! ……売れなかったけど……。でも、そんな全力の空振りもいいんです! だから痺れるんです!!

 今回は、1990年代に登場し、結果的には売れなかったけれど、クルマとしては個人的にものすごく好きだった、衝撃を受けたというクルマを片岡英明氏がピックアップ! それぞれのクルマの魅力を熱く語っていく。

文/片岡英明
写真/MAZDA、SUBARU、HONDA、ベストカー編集部

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■RX-7の影に隠れてしまった名車「マツダ ユーノス コスモ」

1990年登場のマツダ ユーノスコスモ。ロータリーエンジンを搭載した高級スポーツクーペだ

 バブル期に開発されたクルマには衝撃的な作品が多いが、とりわけシビレたのが「ユーノスコスモ」だ。

 マツダが1990年4月にフラッグシップとして送り出したロータリーエンジン搭載の高級スポーツクーペで、驚きの連続だった。

 エクステリアは、ちょっと見には平凡なノッチバックの2ドアクーペである。だが、全幅1800mmに迫るワイドなボディサイズを上手に使いこなし、うねった味のあるフォルムを生み出していた。

 インテリアもチョー豪華で、見どころ満載だ。ドライバーの前にラウンディッシュなインパネを据え、メーターはキーをひねると文字盤が浮かび上がる自発光式メーターだ。インテリアにはオーストリアのシュミット・フェルドバッハ製のなめした本革を用い、1台に3頭もの牛革を使っている。

 上級グレードのタイプEはステアリングだけでなくドアなどのトリムも本革だった。フランスのリヨン産の楡材を使った本木目パネルは、イタリアの名門、シンプレス社が加工を手がけた逸品だ。表面を塗装していない美しいものだった。

 カーマニアの驚きはパワートレーンだろう。RX-7などに積んでいる13B型2ローター・ロータリーに加え、世界初、世界で唯一の3ローター・ロータリーを設定している。

 しかもシーケンシャル・ツインターボだから過給が始まれば重いボディを苦もなく加速させた。最高出力は280ps/6500rpm、最大トルクは怒涛の41.0kgm/3000rpmだ。

 電子制御の4速ATだけの設定だったが、6速MTがあれば、さらに刺激が増しただろう。ユーノスコスモはバブルが弾けたこともあり、販売は低迷した。RX-7の影に隠れ、正当に評価されずに消滅したが、その凄さは今になってみるとよくわかる。

■スタイリングも走りも鮮烈「スバル アルシオーネSVX」

1991年登場のスバル アルシオーネSVX。デザインを手掛けたのはご存知ジョルジェット・ジウジアーロ

 スバルが初めて送り出したワイドボディの高級4WDスペシャルティカーが「アルシオーネSVX」だ。鮮烈なデビューを飾ったのは1991年秋で、鬼才、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手掛けている。

 ユーノスコスモ以上に時代の先端をいく尖ったデザインだった。独創的なグラス・トゥ・グラスのラウンドキャノピーを特徴とする2ドアクーペで、フロントマスクも個性的だ。このフォルムには今でもシビレる。その反面、インテリアはオーソドックスなデザインと感じられた。

 走りの実力も高い。パワーユニットは3.3LのEG33型水平対向6気筒DOHCだ。240ps/31.5kgmを発生し、トランスミッションは電子制御4速ATを組み合わせている。高回転までウルトラスムーズで、実用域のトルクも厚みがあるから扱いやすい。

 駆動方式は、センターデフに電子制御LSDを組み合わせた最先端のVTD-4WDを採用した。基本的な前後のトルク配分は35:65とリア寄りの味付けだ。だが、電子制御油圧多板クラッチによって前後輪のトルク配分を50:50まで自在にコントロールする。

 4WDであることを意識させない自然なハンドリングを披露し、ワインディングロードでは運転がうまくなったように感じるほど狙ったとおりに走れた。雪道でもコントローラブルだ。価格の高さだけに目が行き、販売は伸び悩んだが、シビレたスペシャルティカーだった。

■時代を先取りしたクーペとSUVのクロスオーバー4WD「三菱 ギャランスポーツ」

1992年登場の三菱 ギャランスポーツ。RVRのヒットを意識してかRVのテイストを取り入れている

 1992年5月、三菱は売れっ子だったギャランをモデルチェンジし、7代目を送り込んだ。初めてボディサイズを3ナンバー枠まで広げ、ふくよかなフォルムを特徴とした。

 エンジンも上質なパワーフィールのV型6気筒DOHCを主役の座に据えた。排気量は2Lだが、4気筒とは比較にならないくらい滑らかだ。静粛性も高い。

 フラッグシップのVR-4はインタークーラー付きターボとなる。その痛快な加速にはシビレた。また、気持ちいい加速を楽しむと燃費にもシビレたものだ。時代に先駆けてファジー制御の電子制御4速ATを設定したことことにも注目である。

 駆動方式もFFとビスカスカップリング付きのフルタイム4WDがあり、主役は後者だ。7代目ギャランでシビレたのは1994年8月に登場した「ギャランスポーツ」である。当時はバブル期から続くRVブームの真っ只中だ。

 ギャランスポーツは、RVRのスポーツギアがヒットしたのに気をよくしてか、フロントガードバーやルーフレールを装備し、RVルックに仕立てた。クーペ風を気取った5ドアハッチバックとは言っても、このクラスにRVテイストを持ち込むのは大胆だ。しかもリアにはスポイラーを装備している。

 GTが積むのはパワフルな2Lの6A12型DOHCターボだ。滑らかだが、下のトルクは薄く、3500回転あたりから弾けるような加速を見せつける。ただし、ターボを使ってアクセルを積極的に踏み込むと燃費は一気に落ち込む。これにもシビレたね。

 ハンドリングは4WDを意識させないオン・ザ・レールの気持ちいい走りだった。ギャランスポーツは、時代を先取りしたクーペとSUVのクロスオーバー4WDだ。が、ちょっと早すぎたのか、ファンは飛びつかなかった。残念な結果に終わったが、驚きの連続だったね。

■デザイン命のナンちゃってSUVの草分け役「日産 ラシーン」

1994年登場の日産 ラシーン。デザインを重視したSUVの先駆けといえそうなモデルだった。SUV全盛の現在に発売したらもっと売れていた!?

 世界に根付いたクロスオーバーSUVの先駆けとなったのが日産「ラシーン」だ。ベールを脱いだのは1993年秋の東京モーターショーである。ショーで好評だったから、1年ほどの準備期間を経て1994年12月に発売された。

 ラシーンは、サファリやテラノなどの本格派クロスカントリーSUVとは違う。メカニズムは乗用車のものを使っている。が、4WDモデルだけの設定だから、非日常の世界を手軽に味わうことができた。

 しかもデザインのセンスがいい。だから参考出品されたときから多くの人が注目し、SUVに興味を持たなかった女性やベテランまでもシビレさせた。

 ボディサイズは最新のノートとそれほど違わない。スペアタイヤを背負っているから4mを超えるが、取り外せば4mの枠のなかに収まる。全高も同様だ。ルーフレールを装備しているから高く感じるが、全高は1515mm。立体駐車場も無理なく使える高さだった。

 ただし、ホイールベースはちょっと短い。しかも日常のシーンで使い勝手がよかった。ドアはスイング式の4枚ドアで乗り降りしやすい。また、リアゲートは上下に開くツインゲートだ。荷物を積みやすいし、下側のゲートはベンチのように座ることもできる。

 プラットフォームやパワートレーンは、4代目パルサーなどの日産のFFコンパクトカーをベースに開発された。駆動方式はビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDだ。デビュー時のパワーユニットは1.5LのGA15DE型直列4気筒DOHCだけの設定で、5速MTと4速ATが用意されていた。

 のちにバリエーションを拡大し、1.8LのSR18DE型エンジンを加えている。4WDシステムは、センターデフ+ビスカスカップリングの「アテーサ」だ。

 1998年4月に3ナンバーのワイドなラシーン・フォルザを加え、2LのSR20DE型エンジン搭載車も登場した。2000年夏まで生産が続けられ、7万台あまりがオーナーの手に渡っている。

 RAV4ほどのヒット作にはなっていない。が、インパクトは強く、デザイン命のタウンユースをメインとしたナンちゃってSUVの登場には衝撃を受けた。登場は少し早すぎたようで、もう少しあとに登場していれば、もっと売れたはずだ。

 実際、生産打ち切りから20数年後の今でも中古車を探しているファンは少なくないのである。

■高性能なFFスポーツクーペとしてのイメージを覆した衝撃作「ホンダ CR-Xデルソル」

FFスポーツクーペの傑作、CR-Xの後継として1992年に登場したホンダ CR-X デル ソル。スイッチ操作によって室内から開閉操作できる電動式ルーフを備えていた

 ホンダが送り出したFFスポーツクーペのCR-Xは傑作だった。が、1992年2月にベールを脱いだ第三世代のCR-Xは、異端だ。サブネームを「デルソル」としたCR-Xの3代目は、スポーツカーの新しい形を提案した。今につながるクーペ・カブリオレやリトラクタブル・ハードトップの先駆けだったのである。

 CR-Xデルソルは電動メタルトップを採用した2人乗りのスポーツカーで、クーペの快適性とオープンカーの爽快感を1台で手軽に味わうことができる。

 が、CR-Xは高性能なFFスポーツクーペとしてのイメージができていたから多くの人は驚いた。

 それ以上に、スポーティ派は衝撃を受けている。衝撃は、画期的なトランストップを採用していたことだ。手動タイプもあるが、主役はスイッチ操作によって室内からルーフを開け閉めできる電動式のトランストップだった。デザインは強烈な個性を放っている。ボディカラーも鮮やかなグリーンをメインに据えていた。

 パワーユニットは1.5Lと1.6Lの直列4気筒だ。フラッグシップのSiRは可変バルブタイミング&リフト機構のVTECを採用したB16A型直列4気筒DOHCを積み、リッターあたり出力は100ps/Lを超える。

 が、トランストップを採用しているため、車重は1100kgオーバーだ。上屋も重いから2代目までのCR-Xほどの軽快感は望めない。デザインも奇抜だったから販売は今一歩に終わっている。1990年代、衝撃の1台だった。

■強烈なインパクトを放ったスペシャルティなSUV「いすゞ ビークロス」

1997年登場のいすゞ ビークロス。大胆なデザインで1993年の東京モーターショーに登場した時には誰もがショーカーだと考えていたところにまさかの市販化となった

 1993年秋の東京モーターショーのいすゞブースに展示され、大胆なフォルムがSUVマニアを刺激したのがコンセプトカー「ヴィークロス」だ。

 パネルにメタルとカーボンファイバーを多用するなど、素材面においても画期的だった。これはショーカーだな、と思っていたが、1997年春に「ビークロス」の表記に変え、市販に移されている。ほとんどデザインを変えることなく量産化されたのは驚きだ。クルマ好きでなくても、このデザインにはシビレた。

 プラットフォームはビッグホーンの2ドアショートボディのものを使っている。その上にキュートなデザインの2ドアボディを被せた。ただし、インテリアはビッグホーンに準じた平凡なデザインだ。

 もう1つビックリしたのは、当時、まだ珍しかったバックアイカメラを装備し、モニターで後方の安全を確認できたことである。

 エンジンはビッグホーンから譲り受けたオールアルミ製の6VD1型3.2L V型6気筒DOHCだ。最高出力も215ps/5600rpmを発生する。トランスミッションは電子制御4速ATだけの設定だ。

 SUVのスペシャルティカーと言えるビークロスは驚きの連続だった。翔んだデザインや上質なV6ガソリンエンジンだけの設定としたことに加え、20色のボディカラーを用意している。これも日本車としては異例だ。

 日本での販売は2年ほどだったから、販売台数は多くない。だが、強烈なインパクトを放ち、記憶に残るSUVになった。

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