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 トヨタとスバルの協業によって誕生したトヨタbZ4X&ソルテラのプロトタイプ試乗会が開催され、各メディアで報道されているが、気になるのはその次のBEV・SUV第二弾になりそうなのが、2021年12月14日に発表されたbZスモールクロスオーバーこと、bZ1X。

 さらにその後に続く、bZXシリーズはどうなるのか、今わかっている情報すべてをお伝えしていこう。

文/柳川洋
写真/ベストカー編集部、トヨタ、三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

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■bZ4Xの次は、bZスモールクロスオーバーか?

昨年の発表から大注目されていたbZ4Xをサーキットで初試乗!!大容量のバッテリーを積むため重量はあるが、専用プラットフォームのおかげで走りは爽快だ
サイズ的にはRAV4と同等サイズだ。デザイン的にも一脈通じるところはあるが、ブラックアウトされた下回りの踏ん張り感が強調され、アクティブながらクールな印象も受けるデザインだ
トヨタbZ4Xとスバルソルテラ。兄弟車だがフロントパネルのデザインにはトヨタ・スバルのらしさを感じさせる意欲的なデザインだ。購入の際には悩みそうだ

 トヨタの新しいサブブランドであるbZシリーズは、2021年12月14日に開催されたトヨタの「バッテリーEV戦略に関する説明会」で初めてお披露目された、BEV専用のブランド。

 スバルと共同開発した、走行性能と踏破性を兼ね備えたミディアムセグメントのSUV、bZ4Xは、その第一弾として2022年半ばに発売される予定。先日、千葉県の袖ケ浦フォレストウェイでの報道陣向け試乗会も行われた。

トヨタが意気込み充分で投入する新型EV第一弾!! bZ4X初試乗で見えたその実力は!!?

 戦略説明会ではbZ4X以外にも4台のbZがベールを脱いだが、そのなかでも最も市販に近いクルマと言われているのがbZスモールクロスオーバー。bZ1Xと名付けられる可能性が極めて高い、シティユースのAセグメントコンパクトSUVだ。

2021年12月の発表会で発表されたbZスモールクロスオーバー。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 説明を見聞きしても「バッテリーEVで小型SUVか」と軽くスルーしてしまった人がほとんどだったかもしれないが、実はこのクルマ、説明会でスペックが発表された時に聴衆からどよめきが起こってもおかしくなかったぐらいのとんでもない、超ド級のクルマだったのだ。

 何が凄いかというと、その電費性能。1km走行するのに必要なエネルギー量がたった125wh。100wの電球を1.25時間つけておくのと同じだけの、ほんのわずかな電力で、クルマが1km走る。

 そう言っても全然ピンと来ないかもしれないが、どれくらい凄いかというと、「ハイブリッドにばかり固執して電気自動車には力を入れておらず、BEV市場参入に遅れをとってカーボンニュートラルに消極的」などと言われていたトヨタが出してきたクルマの電費が、世界最高水準の電費性能を持つテスラモデル3の127wh/kmをいきなり上回ってくる、という話なのだ。

 ちなみに世界初の量産BEVである日産リーフの現行モデルの電費は155wh/km、最新のアリアは166wh/km、メルセデス・ベンツEQCは236wh/kmであることからも、125wh/kmの電費を誇るbZスモールクロスオーバーの凄さ、トヨタの技術力の高さがわかる。

 BEV専業のメーカーではなく、HVもPHEVも、FCEVもガソリン車もディーゼル車も全て開発しているトヨタが、いきなり世界最高水準の電費性能のBEVを発売しようとしているのだから。

 こういうと、スモールクラスのBEVの電費がミディアム・ラージクラスのBEVの電費より同等もしくはよりいいのは当たり前、という声が出るかもしれない。だが、こう考えてみてほしい。

 ガソリン1リットルで30km走る超高効率なガソリン車でも、ガソリン価格が170円する今日この頃では、1km走るのに6円弱かかる計算になる。

 だが、標準的な電気代(1kwhあたり25円)を使って計算すると、bZスモールクロスオーバーの電費は125wh(=0.125kwh)/kmなので、1km走るのにたった3.125円しかかからない。ガソリン1リットルの値段と同じ170円の電気代を払えば、つまりガソリン車の燃費のように表現すれば、1リットルあたり54.4km走れるということになる。

 そもそもリーズナブルな価格で売られる小型車には、より大きくラグジュアリーなクルマで使われるような高価で性能のいいバッテリーを積むのは難しく、安くてその分効率の劣るバッテリーを積まざるを得ない。

 それでいて同等もしくはよりいい電費を叩き出し、実用的な航続距離を確保するためには、軽量化を含め、クルマ全体のエネルギー効率を高めるしかない。

 そしてそれは結果的に「いいクルマ作り」につながる。まさにこの分野はトヨタが長年培ってきたお家芸だ。小さなクルマは当然燃費がいい、というICE時代の常識は、BEV時代では必ずしも正しくないのだ。

 ゼイタクなクルマに乗る人は少々電費が悪くても気にならないかもしれないが、経済的な小型車に乗る人ほど電費が気になるはず。

 こんなにエネルギー効率がいい、ランニングコストが低くて経済的な小型のバッテリーEVを待ち焦がれていた人は多いのではないだろうか! 300km走っても電気代は1000円以下しかかからないのだから。

■bZスモールクロスオーバーはどんなクルマ?

Aセグメントのクルマとはいえ、存在感をしっかり感じさせるデザインと意欲的な
装備を併せ持つアイゴX
暗闇に稲妻の様に光るアイゴXのテールランプ。コンセプト発表時のデザインそのままに市販車にも採用された!
インパネもアイゴのような良くも悪くもシンプルなデザインから一歩踏み込み、エクステリアに負けない作り込みがされているようだ

 ではbZスモールクロスオーバーそのものをより深く掘り下げてみていくことにしたいが、残念なことに電費以外の情報については、まだほとんど発表されていない。だが、こちらの写真を見てみてほしい。

 ツートーンカラーのエクステリアやボディに対するタイヤの張り出し感、ブラックアウトされたピラーからテールゲートまでの力強いデザイン、ドアの形状などbZスモールクロスオーバーそっくりだ。

 実はこのクルマ、欧州で2022年から販売されているアイゴX。スタイリッシュでコンパクト、運転しやすいクルマを目指して作られたシティコンパクトクロスオーバー。ライバルはフィアットパンダ、ヒョンデ(ヒュンダイ)i10など。2021年に欧州カーオブザイヤーを受賞したヤリスと同じGA-Bプラットフォームが共用される。

 1L、72馬力の小さなガソリン車ながら、オーバージエアでのソフトウェアアップデートや、ワイヤレススマホ充電、LEDヘッドライトやアンビエントライトなど、意欲的な最新装備が与えられている。

 bZスモールクロスオーバーは、バッテリーEVとガソリン車という違いはあれど、見た目同様にパッケージングもアイゴXにかなり近くなるのではと予想されている。

アイゴXと兄弟車といっても信じてしまうぐらいよく似通っているbZスモールクロスオーバーのデザイン。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY

 アイゴXのサイズは全長3700mm、全幅1740mm、全高1525mm、ホイールベース2430mm。タイヤは18インチ。bZスモールクロスオーバーのサイズもかなり近いものになるだろう。

 外観からわかるアイゴXとの違いは、bZ4X同様にフロント部分左右のLEDライトとその中央がブラックアウトされていることや、BEVなのでフロントグリルが不要なこと、Cd値と風切り音対策のためのフロントフードに収納されたワイパー、リアウインドウ後端にある目立たないリアドアハンドルが挙げられる。

■気になるパワートレインと価格、発売時期は?

 ではBEVとしての最大の訴求点であるパワートレインはどうなるのだろうか。

 トヨタはバッテリーに関しては世界中のパートナーと協働すると2019年の説明会で述べており、実際中国のBYD社とは2019年11月に合弁会社を設立している。bZスモールクロスオーバーには、そのBYDのLFPブレードバッテリーが搭載されるのではないかと噂されている。

BEVの生産が増えるにつれ、自動車メーカーによるバッテリーメーカーへの依存度が高まっている

 2020年3月にBYDが発表したLFPブレードバッテリーの最大の特徴は、価格の安さと安全性だ。高価で、多くの問題を抱えたコンゴで主に生産されているコバルトは使われておらず、発火事故が多いリチウムイオン電池と異なり発熱が少なく安全性が高い。

 さらに多くの充電回数に耐えられ寿命が長いうえ、コンパクトで超薄型であるなどいいことづくめだ。LFPバッテリーはかつてはエネルギー密度と低温時の性能に問題があるとされたが、電池そのものを起動時に発熱させるなどの技術革新で克服してきた。

低価格で安全、薄型な、まさにコンパクトカーにぴったりのBYD製のLFPブレードバッテリー

 BEVは生産時のCO2排出量を考慮すると地産地消が望ましいため、欧州をメインターゲットの一つにしたbZスモールクロスオーバーそのものも、そのバッテリーも、欧州で生産されるのが理想的。bZスモールクロスオーバーもアイゴX同様、トヨタのチェコ工場で生産されると思われる。

 BYDの欧州バッテリー工場建設計画は1年前に発表されたが、詳細については聞こえてこない。ただBYD自身が開発した7シーターSUV、Tangは既にノルウェーで1000台以上売れていることを考えると、しばらくは中国からバッテリーを欧州へと輸送することになるのかもしれない。

 BYD自身が生産し、ブレードバッテリーが使われているコンパクトカー、ドルフィンのバッテリー容量が30.7kWhと44.9kWhであることを考えると、bZスモールクロスオーバーのバッテリー容量も同様の30〜45kWh程度、航続可能距離は240〜360km程度と予想する。

 気になるお値段だが、BYDのドルフィンのエントリーモデルの価格が補助金後で9万6800元程度、約177万円、アイゴXのエントリーモデルのイギリスでの価格が1万4795ポンド、約229万円であることを考えると、スーパーアグレッシブなプライシングで285万円ほどと予想する。日本では国からの補助金約25万〜42万円に加え、都道府県からの補助金もあり、200万円台半ばでトヨタのBEVが手に入るようになるかもしれない。

 発売時期は、bZ4Xが年央にも登場ということ、レクサスの新型BEV SUVのRZのデビューが今年秋から冬であること、12月にお披露目された実車の完成度を考えると、最速2022年中か。

■今後のbZシリーズの展開は?

 12月の説明会では、bZ4X、bZコンパクトSUV、bZスモールクロスオーバー、bZ SDN、bZラージSUVの順で豊田章男社長から紹介された。

発表済みのbZシリーズ5車種、手前からbZ4X、bZコンパクトSUV、bZスモールクロスオーバー、bZ SDN、bZラージSUV

 bZコンパクトSUVについてはスタイルについてしかコメントされなかったこと、展示車を見るとまだ充電リッドがないことなどから、市販されるまでにはしばらく時間がかかるとみられる。bZラージSUVも相当時間がかかりそうだ。だがbZ SDNの展示車はかなり完成度が高く見える。

 他のbZシリーズのクルマはイマドキのクロスオーバーやSUVなのに、なぜこれだけセダンなのか?そしてなぜ豊田章男社長は「お客様のファーストカーへのご期待に寄り添うミディアムサイズのセダン」とbZセダンを紹介したのか?

陰影が強調される絶妙なカラーリングと流麗なスタイリングで、非常に魅力的に見えるbZ SDN。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 これらの疑問の答えは、セダン人気が高く、セダンが初めて買うクルマになり得る中国市場を意識しているから、としか筆者には考えられない。

 実際、2021年12月には「BYDの電池技術を活かしたbZシリーズのセダンEVを中国に2022年後半にも投入」と一部で報じられてもいる。その報道のなかでは、トヨタ関係者から20万元、約366万円を切るような値段になるのでは、とリークされ、そしてそれを可能とするノウハウをトヨタはBVDとの合弁から学ぶ意向、と書かれている。

 筆者がどうしても気になるのが、BYDのセダンHan (漢)とのスタイルの類似性だ。ウルトラCかもしれないが、バッテリーメーカーでもあり自動車メーカーでもあるBYDから、トヨタの要求する品質水準でOEM供給を受け、bZ SDNの名でHanを発売する可能性も全くゼロではないかもしれない。

BYDのフラッグシップセダンであるHan (中国名「漢」)、エントリーグレードは400万円弱と驚異的なコスパを誇る

 というのも、経済安全保障的な問題でBYDが入っていかれない市場でも、トヨタのブランドがあれば入っていくことができ、BYDにとってもトヨタと組むメリットがある。

 トヨタの観点からすると、3割近く安いコストでBEVを生産することのできるBYDとそのプラットフォームe-platform 3.0から学ぶことが大きいうえ、今後のバッテリーの安定調達を考えるとBYDに貸しを作っておきたいと考えてもおかしくないからだ。

BYDのHanとデザインが極めて似ている気がするのは筆者だけだろうか。撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 バッテリーメーカーの生産能力が、自らの生産能力のボトルネックになる可能性があるBEV市場で、2030年に年間350万台のBEVを販売することを公約したトヨタ。

 最近の地政学リスク・経済安全保障リスクの高まりや、ガソリン価格上昇による消費者の嗜好の変化を受け、トヨタのバッテリーを含む資源の調達戦略や商品展開がどう変化するかなど、彼らの動向からしばらく目が離せない。

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