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ポルシェの異端児

今回はポルシェを採り上げたいと思う。今さら私ごときがポルシェの説明をすることは不必要な程、読者の方々は充分な知識をお持ちであろうから、今回はポルシェの中でも多少切り口を変えて各モデルを紹介したいと思う。

ポルシェ356Aスピードスター ハセガワ製 1/32

1994年9月発売 発売時価格2,500円

私事ではあるが、プラモデルを購入後に、気に入っているにも拘らず、直ちに製作を着手出来ないキットがある。このポルシェ356スピードスターがまさしくそれであり、購入後、数年してから製作開始出来たキットである。入手時に箱を開けると、なんとなく大人の雰囲気が感じられて、「今は作るべきではない」と思ってしまったのである。

今般、ようやく完成させられたが、やはりキット内容は素晴らしい出来の良さである。ポルシェ356の、可愛らしくも、美しいフォルムを見事に再現している。

元々は1982年に「トミー」(現在のタカラトミー)が発売したが、当時はまだ珍しいメタルパーツを一部に使用した先進的なキット内容となっている。メタルパーツは主にエンジンルーム内部の再現に使用されているが、正直言ってあまり良い出来ではない。メタル製とせずにプラ製とすれば、もっと精密なパーツとなったと思われる。しかしトミーの担当者は敢えて“今後のプラモデルの発展の為に”、メタル製を選択したのだと思われる。

ご婦人のフィギュアが付属し、大人向けのキットの雰囲気を醸し出す一助となっている。通常のスケールカーに付属するフィギュアとなれば、ドライバー姿が一般的であるが、この選択も素晴らしいと思う。
サイドモールの再現にはピアノ線が使用され、実感が増すと同時に塗装も楽にしている。

キットの入手については現在絶版中であるが、ネット上では流通しているようである。それほど苦労なく入手可能と思われる。現在のカープラモデルは1/24が主流であるが、それ以外のスケールについても挑戦したいと考えさせられた名キットであった。

小スケールモデルながら、メタルパーツによりエンジンルーム内が再現されている。

「ポルシェ911スピードスター」 タミヤ製 1/24

1988年5月発売 発売時価格1,200円

ポルシェ911系の3台を紹介したい。ただし、いわゆる911クーペとはイメージが異なるフラットノーズ、スピードスター(ストリートタイプ、クラブスポーツタイプ)である。

これが「クラブスポーツタイプ」だ。

356スピードスターと同様のシルバー塗装としてみた。独特のフォルムであり、なんとなく深海魚を思わせる仕上りとなった。いかにも空力特性に優れて、速そうなスタイリングである。

エンジンは省略されているが、シャーシ裏面から伺える部分は一体パーツながら再現されている。

1964年にデビューした911は、これまで基本的なフォルムは変えずに60年近くファンを魅了し続けている名車である。その長い歴史の中には受注生産で1台ずつ手作りされた911フラットノーズがあり、またポルシェ356スピードスター以来2代目となった911スピードスターは1988年に誕生したのである。

プラモデルについては3台ともタミヤから発売されたが、「スケールスナップキット(接着剤不要)」としてパーツ数も抑えられてプラモデル入門者向けの内容である。(通常のスケールカーキット化のパーツ数を想定すると、約4分の1程度のパーツ数と思われる。)

しかし完成後のフォルムの素晴らしさは、さすがにタミヤ製である。確かにパーツ数を抑えたことで塗装の塗り分けが困難になった面はあるものの、短時間で気軽に製作を楽しめるメリットの方が大きい。

残念ながら現在では絶版品となっているが、前述したようにスケールモデル入門者にはうってつけである。勿論、ベテランモデラーにも充分楽しめる出来の良さである。

コロナ禍による巣ごもり期間が長引いている現在、プラモデル業界が活況との話題も聞こえている。プラモデルファンを増やす為にも、このようなスケールスナップキットの発売を期待したい。

これはストリートタイプ。

ストリートタイプの塗装はさすがにシルバー色とはせずに、メタリックブルーとしてみた。メタリックブルー塗装の実車が存在するとは考えにくいが、各自の自由なカラーリングを楽しめるのもプラモデルの特長だと思う。

ポルシェ911ターボ・クーペ・フラットノーズ タミヤ製 1/24

フラットノーズはポルシェ本社のカスタマイジング部門で1台1台手作りされた特別なワークスモデルである。
1987年11月発売 発売時価格900円

これもスケールスナップキットであり、接着剤が不要で組み上がるのだ。接着剤を使用する場合は特にクリヤーパーツが曇ってしまう事があるが、そのリスクが無くなるのは嬉しい。

ドイツ重戦車 ティーガー(P) アミュージングホビー製 1/35

2018年12月発売 発売時価格6,050円

今回はポルシェを紹介しているが、多少(?)の拡大解釈を許して頂き「ドイツ重戦車ティーガー」を取り上げたい。

タミヤ製の「タイガーⅠ型」戦車を見た経験のある方はこのティーガーの外観に違和感を覚えるかもしれない。また呼称名についても“タイガー”ではないのか?と疑問を持たれるかもしれない。しかし最近は独語の発音にならい、“ティーガー”と呼ばれるのである。

外観について話を戻すと、見慣れたタイガーと違う理由は、このティーガーは試作車なのだ。第二次大戦中の独兵器局は新たな重戦車の開発の為に、ポルシェ社とヘンシェル社からそれぞれの試作戦車の提案を受けた。ポルシェ社の試作戦車はエンジンで発電機を廻して、モーターを駆動する電気駆動車としたものであった。しかし結局は安定した性能を発揮するヘンシェル社の試作車が採用されたのである。

この試作戦車であるティーガーをキット化した模型メーカーが「アミュージングホビー」という企業である。失礼ながら聞きなれないメーカーであるが、その情報量が少ないのだ。ユナイトジャパン㈱という企業の模型事業部で、日本・香港の模型スペシャリストが企画・開発を手掛け中国工場で製造しているとのことである。

フィギュアはタミヤ製である。

肝心のキット内容であるが、非常に凝ったものである。その割には低価格で良心的と言える。(他メーカーが同様のキットを発売すると、10,000円近くなると想像される。)それにポルシェ・ティーガーのプラモデル化が少なかったことを考えると、このキットの存在自体が有難い。

ただし、製作に関しては多少手強いと言わざるを得ない。パーツ自体の成型は良いのであるが、組み立てる際には仮組みが必要である。(仮組み:パーツを接着する以前に、パーツ同士の合いが良いか接着剤を使わずに組んでみること。)
また履帯は連結式とベルト式を選択するが、連結式を製作する場合には数百個のパーツを組み立てる必要があるのだ。

しかし完成後の達成感は高いものがある。また、なかなか目にすることの無いポルシェ・ティーガーを目の前にすると、その格好の良さに魅せられてしまう。

これがヘンシェル・ティーガー。(タミヤ製 1/35)

私の戦車モデル製作方法は、まず組立を完了させてから塗装を開始する。ラッカー系塗料で車体を塗装した後にウェザリング(汚し塗装)を行う。エナメル系塗料(艶消しブラックと艶消しブラウンを混合)をうすめ液で非常に薄めた塗料を車体全体に塗装する(凹部に塗料が残る程度)。

完全にウェザリング塗装が乾いたら、ドライブラシを行う。車体色にホワイト系塗料を混ぜたエナメル系塗料(これは薄めない)を筆に含ませたら、紙などでその塗料を拭ってしまう。その筆に多少残った塗料で車体の凸部をかすらせるのである。そうすることで凸部が浮き上がって見える効果がある。その後、泥汚れや錆びなどを塗装して仕上げるのである。

最後に

今回は戦車の紹介までさせて頂いたが、私にとって戦車プラモデルの製作はカーモデル製作で発生するストレスの解消に役立っている。(理解不能な表現?)
カーモデル製作について、特に塗装は艶を出して綺麗に仕上げたい。組み立てる際には接着剤がはみ出したりしたら、それまでの苦労は水の泡である。(私はカーモデル製作の際には殆どのパーツを塗装してから組立を開始する。)
しかし戦車プラモデル製作は、それらの課題をほぼ考えずに済むのだ。(あくまでも私見である。)戦車プラモデルを製作中に考える事は、“この辺のフェンダーは曲がっているだろう。”あるいは“ここは錆びているはず、下部は泥汚れしているはず。”などを想像しながら組立て塗装する時は実に面白い。是非、皆さんもお試しあれ。

右側がポルシェ・ティーガー、左側がヘンシェル・ティーガー。ポルシェ・ティーガーの砲塔は車体前部に位置していることが、外観上の大きな違いである。

Text & photo: 桐生 呂目男