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 ゴールド免許とは、運転免許証の更新時点で、過去5年間無事故無違反を達成した優良ドライバーに与えられる有効期限記載欄が金色の帯で飾られたありがたい運転免許証である。

 その特典は多岐に及ぶ。ひとつ、有効期限が5年と長い。ふたつ、講習時間が30分と短い。3つ、更新手数料が300円安い。最後にこれがいちばんオトクの任意保険料が1割程度安くなる!! など、ほかにも探せばいろいろあるかもしれない。

 そんなゴールド免許だが、あとちょっとでゴールド達成なのに軽微な違反で泣かされることが多い。そこからの5年間はまた修行の始まりなのである。

 そこで、ゴールド運転免許を取るにはどうしたらいいのか!? トラック運転歴もうすぐ30年を迎える職業ドライバーの筆者が日頃心がけていることを伝授する。

文/長野潤一、写真/長野潤一、Adobe Stock

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■おいおい、千里眼かよ!?

 今年1月のある寒い日、地元自動車教習所で免許更新講習を受け、新しい免許証を受け取って帰路に着いたとたんに、ベストカーWeb編集部の渡邊氏から電話がかかってきた(もちろんハンズフリーで出た)。

 すると、「ゴールド免許に関する原稿を書いて欲しいのですが……。」何というタイミング‼ どこかで監視していたのか? 5年で一度しかないタイミングでかけてくるとは……。「おいおい、千里眼かよ!?」 と思ってしまった。

ゴールド免許とは、運転免許証の更新時点で過去5年間無事故無違反を達成した優良ドライバーに与えられる有効期限記載欄が金色で表示された運転免許証(umaruchan4678@AdobeStock)

 ゴールド免許というのは、過去5年間無事故無違反の人が運転免許を更新したり、新しい種類の免許を取得したりした際に交付される。更新のタイミングによっては、5年間無事故無違反が達成された日から後も、なかなかゴールド免許にならなかったりするので、ありがた~い免許だ。

 全運転免許証保有者に占めるゴールド免許の比率は約59%(2019年)だという。予想以上に多く見えるが、ペーパードライバーの数も含まれるため、実際に普段運転している人のゴールド率はもう少し低いのだろう。

 ゴールド免許のメリットは、更新時に警察署で手続きができ、講習時間も30分と短く(優良運転者30分、一般運転者60分、違反運転者&初回運転者120分)、自動車保険料が安くなるなど。なんと言っても、免許センターの視力検査(適性検査)の大行列に並ばなくていいメリットは大きい。僕はあの大行列は、昔のモンサンミッシェルや伊勢参りのような、現代の聖地巡礼だと思っている。

 では、ゴールド運転免許を取るにはどうしたらいいのか!? 無事故無違反のために僕が心がけていることの一端を紹介したい。

■違反をしないようにするには

1:スピード違反(速度超過) 

 交通違反で最初にイメージするのはスピード違反ではないだろうか? 人は若い時は、スピードを出したいものだ。新しいクルマに乗った時は、「このクルマは何km出るのか試したい」「カーブを速く曲がりたい」そういった衝動に駆られる。スキーなどのスポーツ競技でもそうだが、「もっと高く、もっと速く、もっと遠くへ」というのは人間の自然な向上心のひとつであろう。

1.スピード違反(最高速度超過)。制限速度を超えてもプラス10km/h以内に抑える(Brastock Images@AdobeStock)

 ところが、年齢を重ねるとともにスピードに対する好奇心は少なくなってくる。これは、嗜好の変化、経験によってスピードを出したらどんなものかもわかってきて、燃料のムダ、だいいち事故や取り締まりのリスクが高過ぎるというのが理由だろう。

 社会的責任も出てくるし、分別もつくようになる。30~50代の自動車保険(任意)の料率が安くなるのもうなずける。レース走行をしたいのなら、サーキットに行ってやるべきだ。

 スピードに関して僕が心がけていることは「制限速度を超えてもプラス10km/h以内に抑える」である(※速度超過を推奨するものではない。10km/h以内の超過でも捕まることはある。通学路などの「ゾーン30」では30km/hを厳守すべき)。 ただ、道路によっては、大半のクルマが制限速度をオーバーしており、キッチリ制限速度で走るとかえって迷惑になるという区間さえある。自動運転車を設計する技術者も頭を悩ます点だろう。

 各道路には「最高速度」とは別に、「実勢速度」というものがあり、その指標として「85パーセンタイル値」が使われる。速度分布において下から85%の「標準的だが、やや速めのクルマ」が出している速度である。

 つまり、上位1~2割といった、突出して速い速度で走らないよう心がければ捕まるリスクは減る。また、シグナルダッシュで粋がって先頭を切って走っていると、オービスや覆面パトカーの取り締まりに遭いやすい。

2:一時停止違反――「止まれ」は生きる本能との闘い 

 一時停止違反(指定場所一時不停止等)の取り締まりで思い出すのは目黒区大橋の山手通りから246号渋谷方面に入る立体交差である。ループの坂を上り切って246号に左折合流する箇所の見通しはそれほど悪くないが、停止線がある。横断歩道があるからである。そこで警察官がよく見張っている。

2.一時停止違反。「目的地に早く着きたい」というのは人間の生存本能、冷静に理性を保って法規に従う(Masaharu Shirosuna@AdobeStock)

 バイクの場合はいったん片足を着く必要がある。「止まれ」を「止まりたくない」のは、「目的地に早く着きたい」という人間の生存本能、生きる欲求、ごく自然な感情で、それゆえに皆が守りにくいのかも知れない。しかし、感情とは別に、交通システムは法規で運用されている。法規に従わなければ交通秩序は成り立たない。

 また、法律では歩道をクルマが横切る時にも一時停止の義務がある。最近気になるのは、コンビニの駐車場などからノンストップで車道に出てくるクルマが多いことだ。たとえ歩行者がいなくても、歩道のクルマと衝突する恐れがある。「このまま行けば衝突する」という2つの物体の動きを「コリジョンコース」という。

 田んぼの真ん中の見通しのいい十字路で謎の衝突事故が起こる現象で有名だが、コンビニから安全確認しないで出てくるクルマにも当てはまる。こうした場合は、積極的に速度を落とすなどしてタイミングをずらし、「危険回避」することだ。

3:都内は落とし穴がいっぱい

 以前に2トン車で都内の配送をやっていた時のことだ。その頃は数年に1回の割合で取り締まりに捕まっていた。法を守ろうという気がないのではない。都内の交通ルールは複雑で「落とし穴」が多かったからなのだ。

3.都内は落とし穴がいっぱい。右折禁止、Uターン禁止、一方通行、時間帯通行禁止など……ルールが多い。見えにくい標識や駐車監視員など細心の注意が必要(stockphoto-graf@AdobeStock)

 右折禁止、Uターン禁止、一方通行、時間帯通行禁止など……ルールが多い。今ならスマホやカーナビがあるから配達先のルート検索は簡単だが、昔は本の地図(規制地図)を見ながらパズルを解くようで大変だった。

 右折禁止の標識が樹木の枝で隠れて見えにくいなど、地元以外の人が初めて通ると違反に陥りやすい箇所にかぎって取り締まりをしている。交通法規はわかりやすく公平でなければならない。

 また、荷物の配達時は集配車をどこかに駐車しなければならない。コインパーキングがなければ路上駐車もやむを得ない。駐車監視員との攻防戦になる。ムダな小競り合いだ。これだけネット通販が発達して社会が変わったのだから、都内の道路利用のシステムをそれに適したものに変えていく必要があるだろう。

そのほかにも気を付けなければならない交通違反
飲酒運転(昨年、千葉県八街市の通学路で重大事故が起きた)、信号無視(変わり際のジレンマゾーン、変則パターンの信号などへの対応が難しい)、シートベルト(後席も)、携帯電話使用等、 あおり運転・車間距離不保持・追越車線連続走行、 大型貨物等の通行帯違反、イエローカット(進路変更禁止違反)、路線 バス等優先通行帯違反

■事故を起こさないようにするには

 次に、事故を起こさない、事故に遭わない心がけについて紹介したい。

1:運転は「理不尽との闘い」

 自分が安全運転で一本道を走っているとする。すると突然、わき道からクルマや自転車、歩行者の飛び出し、動物の飛び出し、異様に遅いクルマ、工事、冠水など、その進行を妨害しようとするものが現れる。

 なかには急ブレーキを踏まなければ事故に至るというタイミングもある。それはまさに教習所のドライブシミュレータさながらで、集中力や反射神経が試される。運転とはそもそも、そうした無理難題、理不尽との闘いである。

事故をしないようにするには、他人の運転や行動を信用せずに何があってもすぐに対応できるような「防衛運転」をする。ルートはなるべく大通りを選択する。高速道路では密集せず空いているところを走る。市街地での車間は2秒間隔(Panumas@AdobeStock)

 混合交通というのはクルマ、大型車、バイク、自転車、歩行者などの移動主体が各々自分の目的地に向かって突き進んでおり、動線が交錯する。運転のレベルや安全意識も人によりさまざま。

 なかには、はなから交通ルールを守る気がない人もいる。交通マナーのレベルアップを論ずることはいいことなのだが、全員に守らせようと思っても不可能だ。

 だから、他人の運転や行動を信用してはいけない。例えば、夜中の交差点で信号に従ったクルマと信号無視のクルマが衝突するという事故が時々起こる。従って、信号が青でも、交差点に入る時は横からクルマが来ていないか、確認してから入る。

 いつも自分のクルマのまわり中にレーダー網のように注意を張り巡らし、何があってもすぐに対応できるような「防衛運転」をする。

 あとは、飛び出しなどの異変をいち早く察知できるように、窓ガラスやミラーはキレイに保つ。お守りなどのフラフラ動く物や窓ガラスに映り込む物は置かないことだ。

2:譲り合いの難しさ

 次に、交差点などでの譲り合いの話。「対向車にパッシングで右折を譲られて右折したら、対向車の脇からバイクがすり抜けて来て衝突した」という「右直事故」がある。いわゆる「サンキュー事故」だ。道路での譲り合いはなかなか難しい。いろいろなスキル、性格のドライバーがいるからだ。

 非情に思われるかも知れないが、僕は相手がプロドライバーでない場合は基本的に譲らないようにしている。理由は、相手がこちらを見ていない場合もあるし、こちらがよかれと思ってしたことでも誤解や思わぬ事故を生む可能性もあるからだ。

 基本は、法規どおりに運転する。反対に譲られた場合は、手を上げるなど「わかった」の意思表示をし、あわてずに、しっかり安全確認してから先に行かせてもらう。

3:ルート選び=なるべく大通りを行く

 同じ目的地に行くにも、大通りを行く人と、抜け道ばかり好きな人がいる。性格にもよる。抜け道のほうが数分早かったとしても、僕は大通りのほうを行く。抜け道は一般的に塀や生垣など視界を遮るものが道路に近く、飛び出しなどの発見が遅れる可能性が高いからだ。長年のうちには差が出てくる。

4:高速道路では密集しない

 高速道路を走行していると、似通った速度のクルマが密集してくる現象がある。人間には、ほかのクルマを見てスピードを合わせてしまうクセのようなものがある。よく多重事故のニュースがあるが、密集した状態で落下物や事故車両などがあると、皆が避け切れない。他人の運転につられず自らの速度調節をして、なるべく空いているところを走れば、事故の確率は減る。

5:市街地での車間距離は短めがいい?

 反対に、市街地やロードサイド店舗の多い道路を乗用車で走る場合は車間距離を短めにする。意外に思われるかも知れないが、横から道路に入ろうとするクルマに、迷いを生じさせないためである。

 市街地の道の両側には、道路に入ろうとするクルマが多数、車列が切れるのを手ぐすね引いて待っている。「入ろうか、入るまいか」という迷いを生じさせることのほうが危険なのである。

 前車との車間距離を秒数で計る方法がある。40km/hで前車との差が2秒間隔だと車間距離は22mである。間隔を3秒にして33m離れると、せっかちなドライバーは間に割り込もうとする。運転には「相手のクルマとの間合い」も必要だ。

■まとめ――急がない運転

 ここまで「ゴールド免許になる運転とは?」について述べてきたが、そこにはいくつかの法則性があると思う。

 まずひとつは「急がない運転」。早く目的地に行きたいというのは人間の生きるための欲求だが、交通法規はそれを抑制する方向に向いている。だから、欲求に抗って法規を守ることは、どちらかといえば難しい。待てない運転はダメな運転だ。速い運転も、ゆっくりめな運転も両方できて、しかもクルマや感情を完全に制御できる人が「運転の上手い人」ではないだろうか。

「ゴールド免許になる運転とは?」の法則。「急がない運転」、「相手の性格を見極める」、最後に、こういう場合が危ないという「知識」を身につける(umashika@AdobeStock)

 次に「相手の性格を見極める」こと。人は歩いていても、すれ違う人の性質や性格を一瞬で読み解こうとするだろう。道路交通も同じで、「相手との間合い」が大切である。相手がどういう運転をするのか予測できてこそ、対処ができる。

 最後に「注意力と知識」。人間には見落としもあれば、ミスもある。プロドライバーでもそうだ。だからいつも自重しなければならない。車間距離は高速道路では長いほうがいいが、市街地では短めのほうがいいと言った。この時はこう、この時はこうという風に、一見自明のようなことでも、状況によって答えが違ってくる。だから、クルマの運転は奥が深い。難しいからこそ、安全運転に挑戦する甲斐があるともいえる。

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投稿 免許は汚したくない! 教習所では教えない奥義とは? 経歴30年のトラックドライバーが伝授する「ゴールド免許取得への道」自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。