筑波大学(長谷宗明教授)と北陸先端科学技術大学院大学(安東秀准教授)からなる研究グループは3月9日、ダイヤモンドの結晶に作られる格子欠陥を用い、非線形光学効果に基づいた、高空間分解能かつ高感度な温度センサーが実現可能であることを発見したと発表した。ナノメートルの超高速時間領域での量子センシングの実現につながるという。
非接触型の温度センサーには、おもに量子センサーが使われている。なかでもダイヤモンドの中に不純物として含まれる窒素(N)と、その隣にできる炭素原子の抜け穴(V)が対になった「NV中心」の、周辺の温度や磁場を敏感に検知して量子状態が変化する特性を活かした非接触型量子センサーは、高い空間分解能と感度が求められる細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーなどへの応用が期待されている。
研究グループは、NV中心を人工的に作りダイヤモンド結晶の対称性を壊すことで、2次の非線形効果であり、入射光に対して2倍の周波数の光を放出する第二高調波発生(SHG)が発現することを以前に突き止めていた。今回の研究では、それを踏まえ、NV中心を含むダイヤモンドに赤外域の超短パルスレーザーを照射し、SHGおよび、3倍の周波数の光を放出する第三高調波発生(THG)の発光強度の温度依存性を調べ、非線形光学効果に基づく温度センサーの可能性を探った。
その結果、NV中心を含むダイヤモンドのSHGから得られる温度センサーとしての感度は、高純度ダイヤモンドのTHGから得られるものの3倍以上も大きいことがわかり、新しい温度センシング技術開発の可能性が示された。
今後は、ここで得られた技術を深め、ナノスケールで超高速時間領域(時空間極限領域)での量子センシングの研究を進めるという。研究グループは、ダイヤモンドのNV中心から引き出される非線形光学効果が、電場や温度のセンシングに幅広く応用できることを示してゆくと話している。