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3DCGコンテンツの制作を手がけるプロダクションにインタビューを実施し、オートデスク製品の導入理由やその魅力を聞く本企画。「デザインビズ編」となる今回は、竹中工務店に制作現場の声を聞いた。時代の変化が著しい昨今、建築の最前線で3DCGはどのように使われているのだろうか。
TEXT&EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)
CASE:竹中工務店
「3ds Max」を共通言語とした有機的な繋がり
街を見渡すと実に様々な建物が目に入ってくる。商業施設、オフィス、学校、病院、ホテル、住宅……。これら建築物によって「街」が形成され、人々の暮らしがかたち作られている。そしてひとつひとつの建物に役割が与えられ、それぞれのドラマが生まれている。ランドマークとして人の目に留まる建物もあれば、集団から個へと戻り「心の拠りどころ」となる建物もある。人々は建物に集まり帰っていく。この当たり前の行動を「当たり前」にできるよう設計している人たちがいるわけだが、その事実を意識することはあまりないだろう。
竹中工務店は、そんな「建物」を生み出している企業だ。東京と大阪に本店を構え、全国各地に拠点を置く同社の経営理念が示す「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という文言からは、彼らが手がける建築物に関わる人々と、有機的なつながりを生み出そうとする思いが伝わってくる。大阪本店設計部 スペースデザイン部門 ビジュアライゼーショングループの山口大地氏は、「私が所属する設計部では、3ds Max を使って設計者が作成した図面などを “パース” として作っていく仕事をしているわけですが、単に図面を可視化するだけではないんですよね。その建物に入るとどのようにワクワクするのか、どのような気分になるのかといった、より抽象度の高い、感性に訴えかける未来予想図を作り出しています」と話す。
また同社では動画やVRを使った提案も行なっており、映画やミュージックビデオを作るかのように実写と3DCGを織り交ぜつつ建築物をビジュアライゼーションしていくという。「我々が手がける建築物の何を見せるのか。この “何を” の部分がとても深いんです。クライアントは様々な思いを抱いて相談に来られます。クライアントがずっと考えてきたものを的確にビジュアライゼーションして、想像力を掻き立てワクワクさせることができたら。その先にある結果だって、変わっていくのではないでしょうか」(山口氏)。
▲アイデアコンペで使用した海面に浮かぶ1kmの建築を表現したビジュアル。コンペ期間が非常にタイトなスケジュールで、2週間で7枚を制作しなければならなかった。この建築でどういう体験ができるかを設計者と共に考え、同時に制作するため、速さが求められたという
昨今では、設計・構造・設備等の専門家たちがそれぞれ異なる設計を起こす際、各セクションで起こした設計図や情報を統合し、1つのモデルとなって向かうべき方向が浮き彫りとる「BMI(※)」と呼ばれるフローが主流となっている。これにより「ノウハウを数値として蓄積し、共有できる」という3DCGの強みが発揮されているという。例えば、金属やガラスなどの「理想的な素材感や輝き」等を数値として作り貯めて共有することができるということだ。そしてこういった情報資産が増えれば増えるほど作業効率は上がり、仕上がりにも統一感が生まれるというわけだ。「クオリティにばらつきがあると苦情の原因にもなります。安定した品質を保つことは、実はとても重要なんですよ」(山口氏)。
※BIM:Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称。コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションであり、それにより変化する建築の新しいワークフローを指す(Autodesk 公式ページより)
一方で山口氏は、必ずしも「正確であること」が良いわけではないとも言う。「確かに頭の中で思い描いている建築物をモニタ上で表現すると、イメージが具体的になって次の工程へ進めやすいという利点はあります。スタディ(検討)を通して精度が上がるという点において3DCGは大変活躍してくれるのですが、一方で想像の余地がより多く残されているのは手描きパースなんですよ。つまり、正確さを排除した方が良い場合もあるということです」(山口氏)。アイデアの初期段階であまりに現実的なことを言われると、夢や理想が色あせてとたんに味気なく感じてしまうことがある。分かりやすいことは大切な要素だが、やはりときめきは大切にしたい。それが人間心理というものだろう。
山口氏は、「ビジュアライゼーションでは『この建物を建ててみたい』、『この建物で何ができるのかな』といった、”人間としての行為の美しさ” を描き出すことが求められています。正確さや作業効率といった3DCGのメリット以上に、”ツールとして3DCGをいかに使うか” が重要なのではないでしょうか」と話している。3DCGをツールとしていかに使うか。それは技術的な問題ではなく、扱う側である人間の感受性や洞察力の問題である。3DCGに限ったことではないが、技術の発展により様々なことが実現できるようになったからこそ、「人々が求めているものは何か」を見失わないようにしたいものだ。
▲上記アイデアコンペのビジュアル制作画面。3ds Maxにてリアルタイムでレンダリングしながら、設計者と様々なアングルを検討し、提案書で伝えたい内容を盛り込む。3ds Maxでレンダリングした結果は質感が良いので、設計者と最終イメージを共有しやすい
さて、そんな同社が3DCGを導入して早20年。2000年前後から3DCGでのパース制作へと移行を始め、現在は3ds Maxを中心に必要に応じて手描きを織り交ぜて制作している。ちなみに、建築業界で3ds Maxが愛され続けている大きな理由は「フォトリアルな表現に強いから」。
しかし、3ds Maxはアニメや映画などの制作でも使われる表現の幅が広いソフトだ。山口氏は、自分次第・アイデア次第でどこまでも挑戦できる 「可能性が閉じないソフト」と評している。「建築の世界においても、見てる人にとってもっとワクワクできる感覚を加えると面白くなるんじゃないかと考えています。最近では映像クリエイターに協力してもらい、3ds Maxで制作したものに実写映像合成するなど、プロモーションビデオのような感じで制作しているところです」と山口氏。
山口氏が話すように、静止画だけではなく実写やアニメーションといった様々な業界に展開できる点は、3ds Maxの強みの1つとして挙げられる。「エンタメ業界やアニメ業界をはじめ、様々な業界で活躍するプロフェッショナルたちとの接点ができていく、という不思議なことが起きるんですよ。業種や国籍が違っても3ds Maxを使っているというだけで会話が成立し、そういった繋がりを通して表現の幅が広がり、個人の可能性が広がっていくんですよね。3ds Maxを使っていて良かったと思う瞬間です」(山口氏)。3ds Maxという共通言語を駆使し、業界を越えたコラボレーションに挑む山口氏の姿は軽やかで力強い。
▲プレゼンテーションで使用した動画のキャプチャ画像。【上】ドローンで撮影しているかのような演出を取り入れている。【下】最近は3DCGの人物の表現も自然になってきたので、建築の中で繰り広げられる活動や体験をストーリーにして演出出来るようになった
アナログなものがデジタルへと置き換わり、どの職場にもデジタルネイティブ世代の割合が増え、日々「前提」が変わっていく。しかし、デジタル&テクノロジーにただ順応していけば良いかというとそうではない。「3DCGは良くも悪くも安定したクオリティが出せるため、均質化されてしまってどれも似通った結果になりがちです。他の作品と比較するのが難しく、埋没してしまう恐れがあります。3DCGを駆使したクリエイターの間では、個性をいかに発揮するかが問われるようになるはずです。ただ、ここで言う個性というのは “自分らしさ” といった類のものではなく、いかに3DCGをコミュニケーションツールとして使いこなし、クライアントの想像力を掻き立てて社会に貢献できるかということです」(山口氏)。
山口氏は現在、「建築CGをやっているからこそできること」を模索しているという。自分の強みを活かして何ができるのか。どのような人々と繋がり、どのような可能性を見出すことができるのか。3DCGが「コミュニケーションツール」と呼ばれる今、「3ds Max」を共通言語とした有機的な繋がりに価値が見出され始めている。
- 竹中工務店
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オートデスクが運営する「AREA JAPAN」で山口氏がコラムを掲載中
建築ビジュアライゼーションのニューノーマル
https://area.autodesk.jp/column/trend_tech/new-normal-viz/