もっと詳しく

 関西の化学業界において高水準な投資が継続している。新型コロナウイルス感染症による世界経済への影響や原材料の高騰、物流遅延など、いぜん先行きの不透明な状況が続くなかでも、需要拡大が続く半導体やヘルスケア分野を中心に成長機会のチャンスを確実に捉えるのが狙いだ。

 大阪ソーダでは、医薬品原薬・中間体や医薬品精製材料といったヘルスケア事業をコアの一つと位置づけ、経営資源を積極的に投入している。なかでも医薬品原薬・中間体を製造販売するグループ会社のサンヨーファイン(大阪市西区)は成長市場に即した受託体制を整えるため、継続的に設備投資を実施中だ。既存品、新規上市品ともに受託案件が順調に増加していることから、松山工場(松山市)に新たな製造棟を建設する。5000~1万リットル規模の大型反応器を導入するほか、クリーンルームを複数系列設置する計画で、2023年4月の完工を目指している。製品の安定供給および高度化する顧客の要望に応えるため、大型投資に踏み切る。

 ArF(フッ化アルゴン)レジスト用モノマーをはじめとする電子材料に積極的に投資を行っているのが大阪有機化学工業。第5世代移動通信システム(5G)の普及やリモートワーク増加の影響などによって半導体市場は拡大しており、ArF露光用レジスト原料の需要が好調に推移している。また最先端のEUV(極紫外線)露光も実用化が進展しており、今後EUV用途での採用増も見込まれる。旺盛な需要を背景に、同社金沢工場(石川県白山市)で順次設備増強を行っているが、23年の完成を目指し、新たな半導体材料製造設備を新設することにした。レジスト用モノマーや半導体関連材料などの、さらなる供給能力アップを見込む。

 田岡化学工業も、ここ数年の間に淀川工場(大阪市淀川区)および播磨工場(兵庫県加古郡)の両拠点で積極的に設備投資を行ってきた。なかでも同社の成長を牽引してきた樹脂モノマーについては、安定供給体制の構築に向け、播磨工場での新多目的プラント「N-2」建設や三菱ガス化学との合弁プロジェクトが進行している。旺盛な需要から一転して今年度は販売数量が減少するなど苦戦を強いられているが、将来に備えた生産能力増強は予定通り進めていく方針だ。

 各社とも目先の利益を優先するだけでなく、進むべき成長分野を明確にし、確固たる基盤づくりを推進することで将来への布石を打つ。今後も予測が難しい経済環境が続くだろうが、経営努力なくしては成長戦略は描けない。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

The post 関西化学業界の設備投資なお高水準 first appeared on 化学工業日報.