クラウドファンディングで甦った歴史的路面電車!! 期間限定で定期運行されたモ161形に迫る!
全国のあちこちには路面電車が市民の大事な生活の移動手段として活躍している。路面電車は法規的には「軌道法」という法律によって規定されており、鉄道事業法によって規定されている「鉄道」とはその背景がちょっと異なっている。
現在、日本国内で軌道法によって規定されている路面電車は北海道札幌市、函館市、東京にも都電荒川線があるほか、中部地方には豊橋鉄道、関西圏には阪堺電気軌道や京都の嵐電、中国地方には岡山電軌、広島電鉄、四国、九州の都市にも多く存在する。
なかでも大阪には阪堺電軌に車歴94年という国内現役最古の路面電車が活躍しているのだ。今回は期間限定で運行していた様子や自動車での軌道敷内通行のルールもあわせてお伝えしよう。
文/有村拓真 写真/有村拓真、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】クラウドファンディングで華麗に復活。阪堺電軌の古豪、車齢90余年のモ161号車の写真を見る(19枚)画像ギャラリー阪堺電気軌道が誇る古参車両モ161号はどのようにして復活を成し遂げた?
今回ご紹介する路面電車、モ161形の161号車は1928年(昭和3年)に製造された。戦火やあらゆる時代を乗り越え現在に至る歴史の生き証人的な存在だ。時代の節目には修復行い、今なおバツグンの存在感で大御所の貫録タップリである。この車両は半鋼車(はんこうしゃ)という車体構造をしており、外装は鋼、内装に木材を使用している車両がこのような名称で呼ばれている。
細部までキレイにメンテナンスされており、いかに大事にされているのかわかる。車両の扉や窓枠を含め、広告枠や床に至るまで内装はあちこちに木材をふんだんに使用し、ニス塗りが施されている。車内に入るとタイムスリップしたかのような感覚になる。
さて、このモ161形の161号車は阪堺線開通100周年の2011年に記念行事の一環で改修を行い、内外装を昭和40年当時の姿に復元されたが、そこから10年が経ち、全体的に老朽化が進行、特に木材を用いた部分はかなりの腐食が進み、大規模修繕が必要になった。
折しもコロナ禍が始まり、阪堺線の利用客の低下が進んだため、経営状態が悪化。そこで、2021年3月にクラウドファンディングを開始したところ、なんとわずか16日で目標額の約750万円を大幅に超える、約1400万円が集まったのである。そのおかげで当初に予定していた部分よりも多くの場所の修繕が可能となったという。いかに鉄道ファンや地元の方々から愛されている存在なのがよくわかる。
ちなみに、この車両以外のモ161形は162号車、164号車、166号車が現役で活躍しており、普段は貸し切り運行のほか、稀に定期運行されており鉄道ファンらを歓喜させている。今回ご紹介している161号車は天王寺駅前~浜寺駅前を結ぶ上町線と、我孫子道~恵美須町を結ぶ阪堺線の2路線で運行され、住吉大社などの歴史的名所や通天閣周辺などを駆け巡った。
期間限定の復活!鉄道ファンのみならず地元民も魅了そして現代での使い勝手は?
クラウドファンディングを受けて大規模修繕を無事に終えた161号車は9月に復活し、阪堺電気軌道では、「一般の方々へも広く修復した姿をご覧いただくため」として2021年12月2日から2022年2月28日までの期間で定期運行を全線で実施した。同社では、公式インスタグラムで毎日運行情報を発信、今日は運行される、今日は静養しているなどを掲載し、少しでも多く161号車と接する機会を設けようと更新を行っていた。また、南海電鉄の公式アプリでは、列車の位置情報を把握できるページがあり、阪堺電車も確認できるため、161号車がどこを走行しているか一目でわかるように工夫が施されており、鉄道ファンなどはそれを確認しながら撮影場所の選定をしていた。
久々の定期運行に多くの鉄道ファンはこぞって歓喜し、沿線で写真や映像の撮影、また、乗車して楽しむ愛好家や、独特の吊り掛け式駆動の走行音などを収録する愛好家もいた。
地元の利用客からは「久々の電車やな」「すごい古い電車が走っててビックリした」などの声が聞かれた。一方、ご高齢の方にとって、バリアフリーの概念がなかった時代に製造されたモ161形は、車両の段差が高く乗降に苦労するため、一本やり過ごして別の電車に乗る方や、他の乗客の手助けを受けて乗降する姿を筆者は何度も見かけた。また、「古い電車は乗り降りし辛いから難儀する。もっと工夫するか、走らさんといてほしい」などの意見が乗務員や会社に寄せられることもあるという。
路面電車の走る街 自動車での軌道敷通行ルールはどうなっている?
自動車教習所で習ったものの、忘れてしまっているかもしれない、関係ない地域だからとおろそかになりがちな路面電車関連の交通ルール。ここではおさらいをしていこう。
軌道敷内は原則として通行できないが、右左折や転回、横断、道路が工事やその他障害、道路の幅員が狭い、危険回避などにおいては通行が可能である。また、軌道敷内通行可という標識があれば、軌道敷内を走行することができる。
走行するにあたっても、軌道敷内を通行しているときに後方から路面電車が近づいてきたら、すみやかに軌道敷外に出るか充分な距離を取り、路面電車の通行を妨げてはならないとある。路面電車の通行を妨げた場合、軌道敷内通行禁止という違反になり、違反点数1点、反則金4000円(普通車等)となっている。右折レーンのない交差点で信号待ち中、軌道敷内で停車している車両をしばしば見かけるが、立派な違反なので右折待ちは軌道敷外の道路上で行いたい。
次に、路面電車の電停(プラットホーム)に設置されている安全地帯という標識があるが、これは、車両は安全地帯への進入が禁止されている。また、安全地帯の左側と、その前後10m以内は駐停車禁止。歩行者のいる電停のそばを通行する際は徐行する、と規定される。標識以外にも白線と黄色線で囲まれたされた道路標示も存在する。これに違反すると、違反点数2点、反則金7000円(普通車等)と軌道敷内通行違反よりも重くなっている。
最後に、通常の信号機の下に黄色の矢印信号が表示されるタイプのものを見たことがある方はいるだろうか。この黄色の矢印は路面電車へ向けて表示しているもの。歩行者や自動車はそれに従って走行することはできない。これに違反すると信号無視の違反となり、違反点数2点、反則金9000円(普通車等)となっている。
2022年2月には広島で路面電車と自動車の事故が発生したが、路面電車が通る都市特有の事故も多い。大阪のような道路と線路が同居する併用軌道から線路だけの専用軌道に切り替わる場所は、進入禁止や点滅等などで注意喚起しているものの、併用軌道と同じように路面電車の後方を走行してそのまま専用軌道に入って走行不能になってしまった事故が特に夜間になると多い。また、渋滞時も線路側に寄りすぎてしまうと路面電車の進行の妨げや接触につながるケースもあるので注意して安全運転に努めたい。
モ161形の161号車は百寿を目指して今後もさまざまな方から大事にされて活躍を続ける。偶然見かけたらラッキーなこの車両をぜひ探してみてはいかがだろうか。また、併用軌道を走行する際も含めてどうかご安全に!
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