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<p>「マウスの細胞を若返らせる実験」に成功して腎臓や皮膚の機能が若返ったことが示される</p><p>「マウスの細胞を若返らせる実験」に成功して腎臓や皮膚の機能が若返ったことが示される</p><p>人間を含む動物にとって老化は避けられないものですが、加齢と共に骨がもろくなったり筋肉が衰えたり、その他さまざまな病気のリスクが増加したりするため、多くの科学者らは「肉体を若返らせる方法」について研究してきました。新たにアメリカのソーク研究所などの研究チームは、京都大学iPS細胞研究所の所長を務める山中伸弥教授らが特定した遺伝子を用いて「マウスの細胞を若返らせる実験」に成功したと報告しました。</p><p>研究チームは体内の細胞へ長期的に山中因子を導入した際の効果を確かめるため、「生後15~22カ月(人間では50~70歳に相当)のマウスに定期的に処置する」「生後12~22カ月(人間では35~70歳に相当)のマウスに定期的に処置する」「生後25カ月(人間では約80歳に相当)のマウスに1カ月間処置する」の3グループに分けて実験を行いました。 実験の結果、長期間にわたり山中因子の導入を行ったマウスにおいて、がんやその他の健康上のリスクを増加させることなく、腎臓や皮膚といった組織が若返りの兆候を示しました。具体的には、処置を受けたマウスは「ケガをした際に皮膚細胞が増殖する能力」が処置されなかったマウスより高く、傷痕が残る可能性も低かったほか、血液中の代謝分子が正常に老化したマウスに見られる変化を伴わなかったとのこと。さらに、炎症や細胞死、ストレス反応を引き起こす遺伝子発現の減少や、老化の指標となるDNAメチル化パターンも年齢に逆らって巻き戻されたと研究チームは報告しています。 研究チームは、1カ月間のみ処置を受けたマウスでは若返りの兆候がみられなかったほか、長期的な処置を行っている途中のマウスを分析した場合は若返りの効果が明らかでなかったことから、山中因子による処置が単に老化を一時停止しているのではなく、細胞を若返らせていることが示唆されていると主張。しかし、この点についてはさらに多くの研究が必要だとのことです。 論文の共著者であるソーク研究所のPradeep Reddy氏は、「私たちが本当に確立したかったのは、このアプローチの長期間にわたる使用が安全だということです。確かに、これらの動物において健康・行動・体重に悪影響は見当たりませんでした」と述べています。 論文の上級著者を務めたソーク研究所のJuan Carlos Izpisua Belmonte氏は、「私たちは一般的な動物の老化を遅らせるため、このアプローチを生涯にわたって使用できると意気込んでいます。この技術はマウスにおいて安全で効果的でした」「このアプローチは加齢に伴う疾患への取り組みに加え、神経変性疾患などの異なる疾患においても細胞の機能や回復力を向上させて、組織や生体の健康を回復させる新しいツールを、医学会に提供する可能性も考えられます」とコメントしました。 今回の研究結果はあくまでマウスを対象にしたものであり、人間に適用するには長い時間がかかると考えられています。Reddy氏は、「私たちは最終的にストレスや傷害、病気に対してより抵抗力を持つように、古い細胞に弾力性と機能を持たせたいと考えています。今回の研究は少なくともマウスにおいて、それを達成するための道筋があることを示しています」と述べました。 この記事のタイトルとURLをコピーする</p>