ロシアで事業展開していた世界各国の名だたる企業が続々とサービスの停止に踏み切り、各国による制裁で経済危機に直面するロシア国民を一層苦境に立たさせている。
「フェイクニュース法」で撤退拍車
若者に人気の動画投稿サービス「TikTok」を運営する中国企業、バイトダンスは、ロシア国内でのサービス停止を明らかにした。TikTokの公式ツイッターアカウントは6日(日本時間7日未明)、次のようにツイートした。
In light of Russia’s new ‘fake news’ law, we have no choice but to suspend livestreaming and new content to our video service while we review the safety implications of this law. Our in-app messaging service will not be affected.(ロシアの新しい「フェイクニュース」法に照らして、この法律の安全性への影響を検討している間、私たちはビデオサービスへのライブストリーミングと新しいコンテンツを一時停止するしかありません。アプリ内メッセージングサービスは影響を受けません。)
2/ In light of Russia's new ‘fake news’ law, we have no choice but to suspend livestreaming and new content to our video service while we review the safety implications of this law. Our in-app messaging service will not be affected.
— TikTokComms (@TikTokComms) March 6, 2022
これに先立つ4日、ロシアのプーチン大統領はロシア当局が「フェイクニュース」とみなした情報を流したものに対して、最大で15年の禁固刑を科せる新たな法案に署名した。たとえ真実であっても、ロシア当局が「フェイクニュース」とみなせば、禁固刑を科すことができる法律だ。これを受けて、ユーザーの安全性を担保できないとしてTikTokはサービス停止に踏み切った。
また、4日には、ロシアのウクライナへの侵攻を受けて米マイクロソフトがすべての製品やサービスの新規販売を停止すると発表した。同日、同社のブラッド・スミス社長は公式ブログでロシアでのサービス停止の意図を明らかにしたが、中国企業のバイトダンスとは理由が異なる。
マイクロソフト「すべての新規販売を停止」
We are announcing today that we will suspend all new sales of Microsoft products and services in Russia. Our single most impactful area of work almost certainly is the protection of Ukraine’s cybersecurity. We continue to work proactively to help cybersecurity officials in Ukraine defend against Russian attacks, including most recently a cyberattack against a major Ukrainian broadcaster.(本日、ロシアでのマイクロソフト製品およびサービスのすべての新規販売を停止することを発表しました。私たちの最も影響力のある仕事の分野は、ほぼ間違いなく、ウクライナのサイバーセキュリティの保護です。私たちは、ウクライナのサイバーセキュリティ当局がロシアの攻撃から身を守るために積極的に取り組んでいます。)
マイクロソフトのパソコンOS「Windows」は世界シェアトップだが、ロシアでもシェアは1位だ。スミス社長は、「we will take additional steps as this situation continues to evolve(この状況が進展し続けるにつれて、追加の措置を講じます)」と明らかにしているため、戦争が長引けば長引くほど、ロシアのビジネスの至る所で影響が出てくるだろう。なお、Windowsのライバルである「Mac」のアップルも、ロシアでのサービスを停止ししている。理由はマイクロソフトと同様だ。
マイクロソフトやアップルのように、今回のロシアの一方的な戦争に反対する意味でサービスや商品の販売を停止した企業は少なくない。
ネトフリ、ビザ、ペイパル、ディズニーも…
動画配信プラットフォーム「ネットフリックス」、音楽ストリーミングサービス「スポティファイ」などのエンターテインメントサービスや、ビザやマスターカード、アメリカンエキスプレスといったクレジットカードの国際ブランドがロシアでのサービスを停止した。オンライン決済サービス「ペイパル」もロシアでのサービス停止に踏み切った。
また、グーグルはロシアでの広告販売を停止している。スウェーデン発祥の北欧家具ブランド、イケアもロシアとベラルーシでの事業を一時停止した。ディズニーは傘下のピクサーも含めて、すべての映画作品のロシアでの公開を見合わせている。
ロシア国民は、為政者の“暴走”によって、生活に大きな影響をきたすこととなってしまっている。そうした中、ベラルーシの反体制メディア「NEXTA」は「ロシアがグローバルインターネットからの切断に向けた積極的な準備を開始した」と報じた。
ウクライナ国民に甚大な被害を与え続けていることはもとより、自国民にさえ多大な迷惑をかけ、世界から完全に孤立してまで、プーチン氏が成し遂げたいこととは一体なんなのだろうか。