ロシアのウクライナ侵略で国際政治の専門家に注目が集まる中、国際政治学者の岩間陽子・政策研究大学院大学教授が9日午前、ツイッターで「今回の事態で、メディアの大切さが改めて実感されていると思います。日本のメディアが生き残りたければ、社員のレベルアップが必須です」などと投稿した内容が注目を集めている。
岩間氏のツイッターアカウントのフォロワー数は1万に満たないものの(同日15:30時点)、1万2000件を超える「いいね」を集める大反響となった。
岩間氏は京都大学大学院在学中、日本の国際政治学者として傑出した存在だった高坂正堯教授(当時)に師事し、2009年から現職。その間、ドイツへの留学や駐独日本大使館の勤務などの経験もあり、ドイツの政治外交史やヨーロッパの安全保障に詳しい論客だ。最近では、日経電子版のコメンテイターを務め、東京新聞が核シェアリングの問題を取り上げた際に有識者としてコメントしているが、この日午前、「一つの意見として聞いてください」と切り出した上で、合わせてツイートを4連投。
「今回の事態で、メディアの大切さが改めて実感されていると思います。日本のメディアが生き残りたければ、社員のレベルアップが必須です。今の日本の学卒レベルの政治・経済の知識で、現在の社会情勢に太刀打ちできるとは思えません」と問題提起した上で、「すでに理系では、大学院卒が採用の基準になっています。メディアもそうするか、何年か勤務させた後で、幹部候補社員は国内外の大学院へ行かせるくらいのことをしなければ、とてももたないと思います」と提言。
一つの意見として聞いてください。今回の事態で、メディアの大切さが改めて実感されていると思います。日本のメディアが生き残りたければ、社員のレベルアップが必須です。今の日本の学卒レベルの政治・経済の知識で、現在の社会情勢に太刀打ちできるとは思えません。すでに理系では、大学院卒が 1/4
— Yoko Iwama 岩間陽子 (@2000grips) March 9, 2022
その背景として、「現在、少数の信頼できる『専門家』は使い回され疲弊して行っており、その穴をいろんなもので取り敢えず埋めている印象です」との現状を訴え、
自前である程度のレベルの分析・情勢判断を提供できなければ、日本のメデイアの価値はなくなります。今後、日本を取り巻く情勢は、ますます厳しくなります。天然資源のない国が生き抜く鍵は「人」と「情報」です。規模を縮小してでもレベルアップを図らないと、とてももたないと思います。
と、人材や報道の質が低下する可能性へ危機感をあらわにした。
岩間氏のこれらのツイートに対して、ツイッターユーザーからは賛否を含めてリプライが続出。
ウクライナ危機の関連で英米の新聞記事を読んで記事の質の彼我の格差が圧倒的であることを痛感していたところです。おっしゃる通りだと思います。
ジャーナリストを目指す若い学生は知識など雑学には長けていると思いますが、純粋な正義感、政治経済への哲学といった基礎的な資質に欠けるのではないでしょうか。そのためには読書がとても重要だと思います。
などと同調する人もいたが、
文系の院卒は使いづらいから採用したくない、と言う日本企業には到底無理だと思います
喫緊なのは知識や教育の問題よりも、メディアが視聴率、売上を偏重する組織であることが先に改善されるべき課題と思います。
などの異論や注文も少なくたった。
現役記者「言いたいことはわかるけど…」
一方、岩間氏の問題提起に反応したメディア関係者も少なくない。
教育情報誌の編集長経験者という男性ジャーナリストは「メディアのレベルアップには、現場経験を含めた多彩な学びが不可欠です。でも、もはやその余裕がないメディア企業が多い」と岩間氏に賛同。これに対し、大手新聞の女性記者は「言いたいことはわかるけど、いかにも学者さんの意見って感じではある。そうではなくてもっと多様な背景の人がメディアには必要なのでは」と距離を置いた見方を示していた。
大事件が起きた時にメディアが頼る専門家の存在はこれまでも脚光を浴びてきた。古くは1991年の湾岸戦争で軍事評論家の存在が脚光を浴び、江畑謙介氏や小川和久氏らが「専門家」として引っ張りだこになった。
しかし、ネット時代になり、伝統メディアの取材力の衰退も指摘される中、多種多様な「論客」が登場した分、コメントを求めるメディア側のクオリティーにも厳しい視線が降り注ぐ。
近年はコロナ問題で医療従事者以外の発信も目立ち、ユニークな意見も多かったが、ある大手ネットニュースの編集者はサキシルの取材に対し、「コロナの問題ではメディア側に専門家をフィルタリングする能力があったかといえば、微妙だったのは事実」と指摘する。
メディア問題に詳しい社会学者の西田亮介・東工大准教授はツイッターで「「メディアに多様な人材必要」というのはそのとおりだが、現状、学位という専門性のある意味最低限の基準をクリアしているかどうかすらわからない多様すぎる人で日本のメディアは構成されている。「大学院に通うの大変」とかいうのは過程の問題であってアウトカムではないので専門性高めてほしい」との持論を述べていた。
「メディアに多様な人材必要」というのはそのとおりだが、現状、学位という専門性のある意味最低限の基準をクリアしているかどうかすらわからない多様すぎる人で日本のメディアは構成されている。「大学院に通うの大変」とかいうのは過程の問題であってアウトカムではないので専門性高めてほしい。。
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) March 9, 2022