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サイバーセキュリティが多くの企業にとって最重要課題となっている今、Google(グーグル)はセキュリティインテリジェンス企業Mandiant(マンディアント)を54億ドル(約6250億円)で買収すると発表した。この買収によりセキュリティデータ収集能力と数百人のセキュリティコンサルタントチームを獲得する。Mandiantは買収完了後、Google Cloud(グーグルクラウド)に加わる予定だ。

Google Cloudの責任者Thomas Kurian(トーマス・クリアン)氏は、特にウクライナでの戦争が激化する中で、企業はかつてないほどのセキュリティ脅威に直面しており、MandiantはGoogle Cloudのプラットフォームにセキュリティサービスをもたらす、と指摘した。

「買収はエンド・ツー・エンドのセキュリティ運用を提供し、世界最高のコンサルティング組織の1つを拡張する機会です。力を合わせることで、クラウドの安全性を確保し、クラウドコンピューティングの導入を加速させ、最終的には世界をより安全にすることに大きな影響を与えることができます」とクリアン氏は声明で述べた。

GoogleはMandiantに1株当たり23ドル(約2660円)を支払う予定で、これは10日間の加重平均株価に57%のプレミアムを上乗せした額だ。Mandiantの株価は、この1年間で約18%上昇し、買収に関する噂が浮上し始めたここ数日でかなり急騰した

Moor Insights & Strategyの創業者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、この買収によってGoogleの既存の強力なセキュリティ姿勢が改善・拡大されるはずだと話す。「Google Cloudは、自社クラウド内のセキュリティ提供において、常に高い評価を得てきました。Mandiantの買収は、あらゆるクラウドやオンプレミス構成への門戸を開くものです」と同氏は筆者に語った。

クラウドセキュリティ分野を注意深く観察しているGartnerのアナリスト、Neil MacDonald(ニール・マクドナルド)氏も、2022年初めのSiemplify(シンプリファイ)買収と合わせて、Googleが強力なセキュリティ事業を構築しつつあると指摘する。「Googleが最近Siemplify を買収してセキュリティ・オーケストレーション・オートメーション&レスポンス(SOAR)を実現したのに続き、Mandiantの買収もGoogleがGoogle Cloud事業の一部であるセキュリティ部門の収益拡大に真剣に取り組んでいるという明確なシグナルです」とマクドナルド氏は説明した。

特に、クラウド上のワークロードを保護することに不安を感じている潜在顧客にとっては、今回の買収によりGoogleのセキュリティに関する主張が強化されるはずだとマクドナルド氏は付け加えた。「セキュリティ・ベンダーとしての能力とブランド認知度を高めることで、Google Cloud Platform(GCP)導入の阻害要因であるセキュリティを取り除くことができるのです」と話した。

Crunchbaseのデータによると、Mandiantは2004年に創業され、これまでに7000万ドル(約81億円)を調達している。同社は2013年に10億ドル(約1156億円)でFireEyeに売却された。合併した会社は2021年に分離し、FireEyeはSymphony Technology Groupが率いるプライベートエクイティコンソーシアムに12億ドル(約1388億円)で売却された

当時、FireEyeのCEOに就任した創業者のKevin Mandiant(ケビン・マンディアント)氏は、この取引はMandiantの独立した事業としての価値を引き出すためのものだと述べていた。確かにFireEyeよりもはるかに高額の買収額だった。

今回買収される側になったMandiantは、買収によってGoogle Cloudの規模とリソースにアクセスできるようになると話す。「Google Cloudセキュリティポートフォリオの一部として、Mandiant Advantage SaaSプラットフォームを介して、大規模に我々の専門知識とインテリジェンスを提供します」と買収を発表した声明の中でマンディアント氏は述べている。

買収完了に向けては規制当局の調査をパスし、Mandiantの株主の承認を得なければならない。両社は、2022年後半に買収が完了すると予想している。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi