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 旅行でも日帰りの遠出でも、家族や親しい人と一緒に出かけるのはじつに楽しいものだ。これが愛犬家、愛猫家の場合、親しい人というのは人間だけに限らず、家族同然のペットだって含まれる。

 そしてちょっとした遠出をする時の移動手段としては、やはりクルマが理想的。そもそもクルマというものは人間工学を用いて設計が行われていて、人を乗せるために作られているが、ワンコやニャンコにとっては快適なのか、どうなのか。

 ペットにとってどのようなクルマ、どんなジャンルが快適だと考えられそうか、それぞれの特徴を踏まえて考察していこう。

文/フォッケウルフ
写真/トヨタ、ホンダ、スバル、日産、三菱、スズキ、フォッケウルフ

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■公共交通機関より愛車のほうが好ましい理由

 愛犬家、愛猫家にとってワンコとニャンコ(以下ペット)は、かけがえのない家族の一員である。だからこそ、出かける時は一緒に連れて行きたいと考えるのは自明と言える。そんなとき移動手段をどうするか? と考えると、「やっぱりクルマはあったほうがいいよね」となる。

 出かける目的がドライブ旅行でなくても、動物病院やトリミングへ行く時だってクルマがあればペットを乗せて気兼ねなく自由に移動できるし、雨が降ってきても荷物が増えても「クルマだから」と、さほど気にならない。

ペット自転車やバイクより広くてくつろげるクルマのほうが嬉しいに違いない

 もちろん、公共交通機関を利用するメリットはあるし、ペットとの移動は絶対にクルマが有利、と断ずるつもりもない。しかし、愛犬家(自称)である筆者の偏った意見で恐縮だが、公共交通機関を利用する際、それが決まりであるとはいえ家族である愛犬を「手回り品」として扱われることには違和感を覚える。

 さらに、飼い主が「超カワイイ!」と思っていても周囲の人々もそう思っていると決めつけられない。生理的に動物を受け入れないとか、体質的に犬や猫を避けねばならない人もいる。そういった観点からもペットとの移動にはクルマが必須だと思うわけだ。

■道交法に基づいて考える重視すべき要素とは?

 ペットをクルマに乗せるうえでの大前提として、なによりも道路交通法を守ることが挙げられる。道路交通法第55条(第2項)には、

「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない」

 とある。つまりペットをクルマに乗せる時は、クレートやケージ、またはドライブボックスなどを用いて、安全に運転操作ができる環境を整えておくべきなのだ。

 そして、乗せる場所は基本的に後席がいい。小型犬や猫なら助手席でも乗せられるが、運転の妨げになりかねないし、万が一事故が起きた時にエアバッグが展開して危険が伴うからできれば避けたほうが賢明だ。

 ここまでの前提を踏まえていただいたところで、ペット愛好家にオススメのクルマについて考えてみよう。必要とされるクルマの能力については、基本的に人を乗せるときと同様だと思っていい。特に重視するべき要素を挙げるとするなら、次のようになる。

●乗り降りがしやすい

 フロアが低く設定されており、なおかつドアの開口部が広いクルマなら車内に乗せるのも、ペットが自ら乗り込むのもスムーズに行える。

開口部下端が低いクルマなら、子どもと同じようにペットだって乗りやすい

●積載性が優れている

 ペットと出かける時にはなにかと荷物が多い。トイレシーツ、お手入れグッズやお水を飲む容器、タオルなどそれらを収納できるスペースがほしい。

●静粛性と乗り心地が良好

 聴覚が優れているので、エンジン音やロードノイズが抑えられたクルマがいい。また、振動が少ないのも心地よさをもたらす。

●フロアはフラットがいい

 小型犬や猫ならシートに乗せられるが、中型犬以上だと荷室や後席の足もとに乗せるケースもある。床がフラットならゆったりと寛げる。

 もちろん厳密にクルマを選ぶ時には、使用目的とか、お住まいの地域、生活環境、駐車場事情、家族構成、購入予算などを考慮すべきだが、ここからは「ペットを乗せる」ことを第一の条件にどんなクルマが最適なのかをジャンル別に解説していこう。

■軽自動車

少人数・小型/中型と用途は限定されるが経済性は優秀

 ボディサイズや排気量に制限があるので、小型・中型以上のペットを乗せるという利用には不向きだが、ホンダ N-BOX、スズキ スペーシア、ダイハツ タント、三菱 eKスペースといった、スライドドアを備えたスーパーハイトワゴンならペットを乗せるための条件はクリアできる。いずれの車種もスライドドア部分のフロアの地上高は360~390mmと低く設定されており、後席の足もとがフラットなのでスムーズに乗り込むことができる。

 車内のスペースに制限がありながらもシートは適度なサイズで、とくに座面長は普通車をしのぐほどの大きさ。しかも形状がフラットだからケージやキャリーバックを安定して乗せられる。さらに後席を格納すればラゲッジが広く、フラットなスペースになり、天井の高さも相まって大型犬が入るクレートも乗せられる。

 ただし、660ccの排気量はパワー不足が否めず、人とペットを乗せて遠出するのは不得手。日常的な用途だけでなく、ペットとドライブ旅行を想定しているならNAモデルよりも動力性能に余裕があるターボモデルを選ぶといいだろう。

■SUV

どこへでも行けるオールマイティな能力はペットとのドライブでも有効

 SUVの利点は、目的地が悪路の先にあっても雪道でも不安なくたどり着けるタフさにある。日常的な用途よりもレジャー志向の強いユーザーにオススメの選択と言えるだろう。

 しかしSUVは悪路走破性を考慮したクルマゆえに、最低地上高が高く、フロアもシートも高めに設定されている車種がほとんどだ。キャリーバックやケージに入れて車内に乗せるには問題ないが、後席にもラゲッジにも自身で乗り込むのはやや難があると言わざるを得ない。SUV選びでは、リアのサイドシルが低めで後席フロアとの段差が小さく、後席フロアから後席までの高さがなるべく低いクルマがベターとなる。

 いったん乗せてしまえば、ボディサイズの大きさを生かして室内(ラゲッジも)が広いので、人もペットもゆったりと乗車できる。悪路走行を想定した足まわりは、凹凸をしなやかにいなす設定になっているので乗り心地がいい。さらに動力性能にも余裕があるから、エンジンが高回転まで回らないので振動が抑えられることも相まって快適にドライブできる。

■コンパクトカー&ハッチバック

小型でもしっかりと乗せられてスマートに運転できる実力派揃い

 ミニバンやSUVみたいな大きなクルマは不要で、ワゴンほど実用性に長けている必要もないならコンパクトカーとハッチバックがオススメだ。

 小型犬や猫はもちろん、中型犬までなら苦もなく乗せられる。ただし一般的なコンパクトカー、ハッチバックは、他の普通車に比べると全長が短いため後席ドアの開口部がやや狭く、後席足もとのスペースも広くない。フィットのように後席座面をチップアップできる車種でなければ、大型犬を飼っている人には適さないかもしれない。

 しかし、このジャンルには背が高くて、スライドドアを備えた車種が存在する。スズキ ソリオやトヨタ ルーミーなら、3列シートがない以外はミニバン的に使うことができる。フロアが低くフラットで、乗り降りがしやすい。大人3名以上で多頭飼い、大荷物のドライブ旅行という場面では窮屈な思いを強いられるかもしれない。しかしコンパクトカーなら、ペットを乗せて遠出しても燃料消費量が抑えられるなど、経済面においてはメリットが享受できる。

■ステーションワゴン

車種数が少ないジャンルだがペットを乗せるうえでの機能性は文句なし

 ワゴンはもともと実用志向のクルマで、特に積載性については高い能力を持つ。後席に人が乗った状態でも、ラゲッジ部分にペットを乗せることができるし、後席を格納してフラットフロアにすれば大型犬を2頭乗せることも可能だ。

 乗車に関してはフロア地上高が、前後席部分でおよそ360~400mm程度で問題はない。ただし、便利に使える荷室部分についてはおおむね600~650mm程度となり、決して低いとは言えない。小型犬や猫はさておき、中・大型犬の場合は、若いうちは自ら乗り込めるかもしれないが、高齢になったときには手助けが必要になるだろう。

 ラゲッジ部分は居住スペースに比べると振動やノイズが多く快適とは言い難い。ケージやクレートに入れて乗せるときには、揺れや振動を吸収するために厚めのクッション材を敷いてあげるなどの配慮が必要だ。

■ミニバン

家族もペットもみんなでゆったり快適に乗れる最強の実用車

 家族の最良は、ペットを乗せるうえでも最善と言っていい。乗降性、実用性、快適度など数多くのメリットがあり、先述した条件をほぼすべて満たしている。しかもスライドドアを備え、フロアが低く設定されているので乗り降りがスムーズに行える。

 ミニバンのセールスポイントである、多彩なシートアレンジもペットを乗せるには有効な機能で、2列目のロングスライドや3列目の格納を利用すれば、フロアや荷室には広大なスペースが生まれるので、中・大型犬でもゆったり乗車できる。人とペットの数、荷物の大小など、さまざまな条件に対して抜群の対応力を見せてくれる。

 また、後席乗員の心地よさを重視したミニバンは、後席専用エアコン/クーラーを備えている車種が多い。後席に乗せたり、ケージごとラゲッジに乗せた場合でも、冷風がしっかりと届くから暑がりのペットもすこぶる快適に過ごせるはずだ。

■最愛の家族と一緒にドライブを楽しむための心得

 クルマに乗ってペットと出かけるうえで最も重要なのは「ペット中心」の計画を立てること。長距離、長時間のドライブになるなら、早く目的地に到着したい気持ちはわかるが、最低でも2時間に1回は休憩をとるようにしたい。目的地までの間にペットが休憩できる場所の情報を事前にチェックしておけばロスなくドライブできるはずだ。

 今どきは、ワンコ用施設を備えたサービスエリアや道の駅が増えているので、カーナビがあるならそうした場所を経由地に設定しておくといい。また、大切な家族を乗せているのだから穏やかな運転をするのは当然。人間が不快に感じる運転は、走行状況に応じて予測して準備ができないペットにとってはもっと不快(なはず)なので、スマートドライブを心がけるべきだ。

 さらに、ケージやクレートのような密閉された空間を嫌がるペットもいるので、その場合はペット用のシートカバーを利用するといい。なかでも後席全面を覆えて、前後のヘッドレストに固定してサイドのジッパーを閉めればハンモック状になるタイプが快適性や安全性という点からオススメだ。

大切なペットのためにドライブの前にはしっかり計画を立てておこう

 言わずもがなペットは、暑いとか寒い、疲れた、運転が雑、トイレに行きたいなどなど、不満があっても言葉にできない。だからこそ愛犬家、愛猫家を自称するなら、ワンコやニャンコが喜ぶ(だろう)クルマを選び、出かけるときは彼、彼女らの体調や気持ちを敏感に察して「ドライブって楽しいでしょ」と思わせてあげる配慮を忘れないことが重要だ。

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