車両本体価格が100万円を切るダイハツミライースから、2000万円オーバーのトヨタセンチュリーまで。
最新の日本車であれば、価格帯を問わず輸入車と比較して圧倒的に故障に対する不安が少ない。それに加えて真夏の大渋滞のなかでもガンガンにエアコンが効くし、一昔前のモデルと比較しても格段に燃費が向上している。
相対的に一定以上の性能が確保されているので「安かろう悪かろう」があてはまらないのだ。これってかなりすごいことではないかと思う。
文/松村透
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、松村透
■確実に進化してきていると実感できる日本車。それゆえ、気になるところも
あまりによくできすぎている分、気になってしまうところが目立つのも事実。日本車と比較する際の定番ではあるのだが、欧州車に負けている装備と勝っている装備をピックアップしてみた。
■欧州車に負けている装備は許容範囲? それとも?
2画面の液晶ディスプレイが目を引くメーター&インパネ
バブル期を彷彿とさせるのか、当時の日本車はキーにも味わいと所有感を満たしてくれるものもあった。
メルセデスベンツやフォルクスワーゲンなど、メーターパネルとエアコンやオーディオなどの各種操作をつかさどるディスプレイまわりのデザインを持つクルマが増えてきた。それはまるで「2台のスマートフォン(あるいはタブレット)」が結合したように見せるモデルが増えてきたように思う。
そのおかげでメーターまわりの凹凸が減り、すっきりとしたデザインとなった感がある。反面、日本車は旧来のデザインを踏襲したものが多い。これはこれで見慣れた景色ではるのだが。
欧州車に匹敵する先進的なデザインなのはホンダeくらいだろうか・・・。
安っぽい音色が気になるチープなクラクション
普段の運転でクラクションを鳴らす行為はできるだけ避けたいものだが、どうしても使わざるを得ない場面もある。
そんな時「ピッ」という安っぽい音色のクラクションではさすがに鳴らすのがはばかられるという人もいるだろう(むしろ鳴らす回数を減らす効果を期待できるかもしれないが)。
そのあたりはメーカーも心得ているのか、純正オプション品としてホーンを設定しているケースもある。社外品でも多くは数千円で購入できるので手を出しやすいだろう。問題は取り付け位置だが・・・。
いまいち普及しない音声認識システム
MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)は、「ハイ、メルセデス」とクルマに話しかけた後「暑い」と話すだけでエアコンの温度調整をくれる便利な機能だ。
その他、音楽や目的地設定など、まさにクルマと会話する感覚で機能が動作してくれるという。
また、スマートフォンユーザーならSiriやGoogleアシスタントを使いこなしている人もいるだろう。
日本でも純正および社外品を問わずボイスナビの設定はあるが、精度はいまひとつの印象が拭えない。今後、Aiがさらに進化することで、高齢者ドライバーにも簡単で使いやすい音声認識システムが確立されることを願うばかりだ。
■欧州車に勝っている装備は日本車特有の美点なのか!?
革張りに見間違えそうになるダッシュボード
ヨーロッパの高級車を中心に革張りダッシュボードが採用されていることが多い。
高級感はあるものの、直射日光や紫外線によって劣化するし、爪などで引っ掻けば傷がつく。つまりコンディションを維持するには「気を遣う」のだ。
最近は日本車でもレザー調のダッシュボードを採用するクルマが増えてきた。現行ハリアーは「厚革を曲げてできる自然なシルエットをイメージし触り心地にもこだわったレザー調素材」がうたい文句である。
フェイクレザーといえばそれまでだが、そのこだわりはもはや執念の域にあるといえる。
日本の創作技術が創り出す「木目調」のパネル
なんだ木目「調」なのかと思うなかれ。たとえばこちらのアルファードエグゼクティブラウンジに設定されているオリーブ・アッシュバール木目調は「パネル下地の金属調反射層の光輝感と、3Dプリント技術による本物の立体の陰影で表現」しているという。
本木目パネルは経年劣化ともにひび割れたり、表面の傷が目立つようになる。維持が圧倒的にラクであり、経年劣化や傷にも強い。
あらゆるドリンク類をカバーする秀逸なカップホルダー
いまやポルシェ911ですらカップホルダーが標準装備される時代となった。方やスポーツモデルゆえに一概には比較できないが、500mlのペットボトルホルダーからスターバックスのトールサイズ、マクドナルドのドリンク類もカバー。
そのキャパシティーの広さや配置場所をはじめとする使い勝手にいたるまで。おおむね日本車の圧勝といえるのではないか。まさに「かゆいところに手が届く」配慮がなされている日本車の美点のひとつといえる。
あらゆる用途をカバーできる多彩なシートアレンジ
多彩なシートアレンジの恩恵を受けるのは主に子育て世代かもしれない。子どもの成長に伴い、載せるものが異なってくる。ベビーカーやチャイルドシートにはじまり、三輪車や補助輪付きの自転車などなど・・・。しかもその多くが予想外にスペースを食うのだ。
そして、自分や相手の両親が同乗することもあるだろう。フルフラットシートにしてマットを敷けば家族で車中泊もできそうだ。
あらゆる使い勝手を想定しつつ、女性が使うことも想定されたサードシートの格納のしやすさを含め、このあたりの配慮も日本車の美点といえるだろう。
■番外編:かゆいところに手が届くおもてなし装備
クラウンオーナーにはお馴染みの電動スウィングレジスター
1983年にデビューしたクラウンに採用されているので、オーナーにとってはお馴染みの装備かもしれない。しかし、初めて乗る人はおそらく感動したであろう「電動スウィングレジスター」。
家庭用エアコンのように、吹き出し口のスウィングが電動で動く機能だ。
ゆるゆるとオートでスウィングする光景は、まさに日本の伝統芸能に通じるわびさびすら感じさせるほどのなめらかな動きも美点といえる。スイッチをオンにすることで作動する機能なので、この種の装備や動作が好みでないユーザーへの配慮も完璧だ。
まさかそこまでおもてなし!? センチュリーの靴ベラ差し
数ある日本車のなかでも、靴ベラ差しが用意されているのはセンチュリーくらいだろう。左右センターピラー下部に設置されていて、思ったより見た目もスマートだ。
後席に座るVIPに「靴を脱いでリラックスしてください」という心憎い配慮ゆえの装備といえる。
それ自体は間違いなくかゆいところに手が届くおもてなし装備といえるが、靴を脱いだVIPの足の臭いが車内に充満することになるのだろうか・・・。ドライバーはやめてくれとは決していえないし、トヨタもなかなか罪な装備を作ったものだ。
雨の日は置き場に困るけれど、これなら安心のアンブレラホルダー
まさに知る人ぞ知る装備だが、ロールスロイスのリアドアには専用の傘が仕込まれており、ワンプッシュで引き出すことができる。世界に誇る名車ならではのかゆいところに手が届くおもてなし装備といえるだろう。
実はワゴンRにも・・・といいたいところだが、さすがにそこまでドアの厚みがない。その代わり(?)に左右ドアパネルに傘を固定できるスペースが用意されている。しかも水滴が車外に落ちる形状になっており、濡れたままの傘でも安心して置くことできる親切設計なのだ!
■まとめ:日本車特有の美点にも目を向けたい
年齢を重ねたベテランのユーザーであればあるほど合点がいくと思うが、欧州車と比較して日本車が劣っているかというと、決してそうではないと自信をもっていえるのではないかと思う。
冒頭でも記したように、真夏の大渋滞のなかでもエアコンは効くし、ほとんどの場合、水温計はびくりともしない。
造られた国の風土の違いもあると思うが、故障の頻度が少ない、多くのクルマがレギュラーガソリンで走り、しかも一昔前では考えられないような燃費で走る。不特定多数のあらゆるユーザーの使い勝手を想定して利便性を追求している。
今回の「欧州車に負けている装備と勝っている装備」でいうところのキーやチープなクラクションは、利便性や合理性を追求したすえの弊害なのかもしれない。
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